第48話 軍団(レギオン)結成!
「お待たせしたした。ギルドマスター代理を任されておりますリュイです」
息も絶え絶えに表れたのはまだ20代後半に見える腰の低い若者(?)だった。
さすがに本物のギルドマスターは来ないか。この街の執政官様だしな。
「始めましてアルです。失礼ですがお若いんですね。ギルドマスターっておじいちゃんのイメージがありました」
今更だが冒険者登録はアルで行っている。アル•クロイワだ。本名をほとんど隠してないような気もするが気にしない。メイも登録の時にメイ•クロイワにしていた。メイも本名を名乗る訳にはいかないからな。
「貴方に若いって言われると流石に違和感がありますね。こう見えてもそこのグレンと同じ年の35ですよ。グレンは老けて見えますけどね」
なんかいい人だそうだ。グレンは一言多いって怒鳴ってたが本気では怒っていない。
「本題の魔物の件なのですが、買い取って貰えますか?Aランク以上だと思うのでランクアップもお願いしたいのですが」
「勿論買取りさせて頂きますよ。キングバッファローは最新の買取り価格で金貨300枚。状態がいいので一頭350枚で買取りしましょう。此方はグレイトグリズリーですね。買取り価格は……」
リュイが買取りの担当職員の顔を見る。職員の女性は顔を横に振るばかりだ。
「残念ながら買取り価格は不明ですね。人間で倒せる人がいると思わなかったもので買取表にも乗ってませんね」
「うちの親父は倒したじゃねぇか!」
「そう!ベルナルド様が人ではない証ですね。英雄とはそうでなくてはなりません!グレンも早く人を卒業してください」
なんか人を食ったような人だな。そしてグレンと仲良しか。
「しかし値段はギルドマスター権限で決めさせて貰います。金貨2000枚でいかがでしょうか?」
ギルドマスター権限か。代理だろ?とは言わない。頷いて了承した旨を伝える。
「それは良かった。では金貨5500枚になります。それとアル様、メイ様、レオ様の三名は本日を持ってA級冒険者とさせて頂きます!」
メイが何か言おうとしていたが止めさせた。貰える物は貰うに限る。それとご相談ですがとリュイは続ける。
「街に寄付を頂きますと皆さんS級になれますがどうしますか?一人金貨1000枚です」
確かS級になれば確かレギオンが結成できるんだったな。
「街に寄付は孤児院でもいいのか?」
「はい、私個人としてはギルドへの寄付がオススメですが孤児院も大切な施設です。寄付の対象になってます」
「では金貨3000枚をフォシーユの館に寄付する。手続きを頼む」
そうすると「かしこまりました」と胸に手をあて綺麗な御辞儀をする。
リュイはギルドマスターではなくて商人みたいだ。
そのあとギルドマスターの部屋に通されしばし待つ。その間に
「レギオンを作るなら親父と母親もメンバーに入れて置いてくれ。これが委任状だ」
さっきグレンに渡した手紙の中に入っていたのだろう。二通の紙を見せてくれる。その紙には確かに自分がレギオンを立ち上げる事になったらメンバーになる旨が書いてあった。
「これはすごい!では是非私もお願いします」
ホープも乗って来た。目的も決まってないのにいいのか。
「もちろん俺も入るぞ」
グレンも言ってくる。貴方は自分のレギオンがあるでしょ?!
「わ、私も……」
メイも参加を表明してくれる。もちろん仲間外れにはしない。
「私は自分のレギオンを立ち上げようと思いましたが、まぁどうしてもと言うなら入ってあげましょう」
まぁ折角だからレオも仲間に入れてあげるか。そこにリュイが金貨を携えて戻ってきた。
「では此方がS級ライセンスと金貨です。とは言っても5500枚の金貨を数えるのは大変なので金貨200枚と白金貨53枚です。ギルドに来ていただければ手数料なしでいつでも白金貨1枚と金貨100枚を交換させて頂きます」
白金貨30枚をホープに手渡し。残りを無限倉庫にしまう。
「それでレギオンのメンバーはお決まりですか?」
「ここにいる5名と委任状のこの2名の計7名で!」
リュイの笑顔が凍りつく
「グレン本気ですか?彼のレギオンに所属すると言う事は貴方の傘下のレギオン5つがその子供の傘下に入るのと同意義ですよ」
モチロンだぜ!とサムズアップで答えるグレン。
この人は5つもレギオン纏めてるのか。
「それにホープ殿も。蛇に戻るのですか?」
ホープは必要があればと静かに答える。
「守護者、死神、それに麒麟児レオ。行方不明の王子様。グラディウス家をどうする気ですか?」
リュイが尋ねてくる。やっぱり気づいていたか。隠す気もあまりないが
「べつにメイの姉を助けたいだけだ。酷いようだと潰してしまうかもしれないが」
「ここまで御膳立てしてしまった自分の言う事ではないですが一応グラディウス家は私の上司でして……私腹を肥やしたり、気に入らない人間を左遷したり、金に困っている人間に高利で貸し付けして奴隷に落としたりするぐらいでいい人逹なんですよ〜?」
コイツ絶対グラディウス家を庇う気ないだろ。
「私腹を肥やしていたり、気に入らないとだけで人を左遷させたり、ましてや金に困っている人に高利で貸し付けて奴隷に落としたりしている事が発覚したらグラディウス家はなくなるかもしれない」
そう言うとヤレヤレと頭をかいて
「そんな事が発覚したらお家が取り潰されても文句は言えないでしょう。私も仲間にいれて下さい!」
こうして歴史上最強のレギオンが誕生した。
リュイは、一目みてアルが行方不明の王子である事、メイがエルフの姫である事を見抜いています。
最初グラディウス家にエルフの件で少しお灸を据えるつもりで主人公に協力的でしたが、グレンとホープが完璧にグラディウス家を潰しに掛かってるのを見て鞍替えしました。