第44話 北の大砦
本日2話目です。
厄介者を押し付けられる形になったが、レオも宮廷魔導師。きっと役にたってくれるだろう。
「さて、そろそろ行くか。待たせて悪かったな」
メイにそう語りかけると
「アルフレッド様は悪くない。あれが悪い」
最後に色々エマにいい含められているレオを指差す。
「あれ呼ばわりはしてもいいけど、一応レオと呼んで上げてね。あと俺の事もアルでいいよ。姫様」
「分かったアル様。姫様は止めて、メイと呼んで欲しい」
「分かったよメイ。そしたらこっちも様は外して欲しいな」
「それは無理。命の恩人に敬意を表すのは当然の事。エルフの誇りに関わる」
そんな事を話しているとレオが
「お待たせしました。そんなに言われなくても大丈夫なのに……」
愚痴を言いながら戻ってきた。それを確認してこれからも向かう西に向かい手をかざす
「ホーリーレーザー!!」
その瞬間手から一筋の光線が発せられる。真っ直ぐ一直線に全てを薙ぎ払い道が出来る。結果幅10mの道が地平線の彼方に伸びる。
見送りに来ていた。奴隷たちはみんな口を開けてポカ〜んとしている。
エマとベルナルドは平然として
「いってらっしゃいませ」
「坊ちゃん、バカ息子によろしく言っといてくだせぇ」
見送りの言葉を掛けてくれる。
見送りに手を振り歩きやすくなった道を歩いていく。
「アル様スゴイ!来た時は魔物を怖がりながら…歩いたのに……!」
メイは戸惑いながらも褒めてくれる。
「こんなの見たの初めて!父にも教えてあげたい!」
喜んでくれて何よりだ。
「お父さんの所に一緒に行くんだから見せてあげられるよ」
「ホント?!一緒に来てくれる?」
本当だよ。と言うと嬉しそうに腕に手を回して来てくれた。まだ自分と同じ年なので胸はないが、好意を寄せられるのは嬉しいものだ。それにしてもメイは北の砦から一人で戻るつもりだったのだろうか?一緒にエルフ達の所まで送り届けるのは当然だろうに……。
約三時間後、大渓谷に辿りついた。メイはさすが北の砦から離宮にまで来ただけあって健脚だ。息ひとつ切らしていない。真っ直ぐの道とはいえ大したものだ。一方レオは足がガクガクで休憩を求めていた。真っ直ぐの道なのにダラシのない。メイも冷たい目で見ていた。
レオの言葉でと言うわけではないが、最大の難所である大渓谷の前で少し休憩する事にした。
「さっきのまた見せてくれる?」
目をキラキラさせて聞いてくるメイ。
「今度は別の事試したいから、さっきのじゃないかな。けどきっと喜んで貰えると思うよ」
そういうと嬉しそうに頷いてくれた。
「それじゃ、行くよ!」
休憩が終わり二人に声をかける。
「二人とも空を飛ぶからシッカリ掴まって」
「え?!そんなん出来るんですか?」
驚くレオ。こっそり練習したからね。二人とも身体強化して貰いしっかりと掴まって貰う。
「我に力を与えよ。フライ!」
そう言って、体の周りに結界魔法のサンクチュアリを楕円状に展開。魔力を放出する。体がゆっくりと宙に浮く。ある程度浮いた所で
「舌を噛むなよ!」
警告してから一気に加速していく。
結界魔法のおかげで息も苦しくない。
結局最大の難所は30分も掛からずに抜ける事ができた。大渓谷を抜け、北の大砦側の魔境に入る。
「最初から使えば歩かなくて良かったんじゃないですか?!」
レオが恨み節をぶつけてくる。
「そうはいかない。魔力の消費量が多過ぎる。一分で30万は消費する。結構ギリギリなんだ」
実際出発時に放った魔法と飛行魔法で1000万近くの魔力を使ってしまった。それでも残り400万以上は残っているけど……。
知らない土地で魔力切れとか避けたい。
メイは楽しかったのか顔を赤らめて興奮状態だ。
「またやってくれる?!」
「明日また飛ぶよ」と教えてあげると抱きついてきた。エルフはスキンシップが大好きなんだな。
さすがに北の砦の冒険者がいるかもしれない所で先程のホーリーレーザーを撃つわけにもいかず、深い森の中を進んで行くことにした。
途中魔境部分で深い森の場所だったせいか魔物が出るわ出るわ。イノシシみたいな生き物だか全長3m近いビックボア。集団で襲ってくるフォレストウルフ。ウルフは体長2mはある。北の大砦で最も価値があるとされるサーベルタイガーこちらは全長5mはある。魔力耐性が強く通常の魔導師では倒せないように思えた。
ビッグボア 26匹
フォレストウルフ106匹
サーベルタイガー5匹
こちらから手を出すことはしないが近寄って来た瞬間全てをホーリーランスの餌食にした。これで大砦での資金には困らないはずだ。
大渓谷を渡った所から更に20kmほど進んだ所でテントを立てた。結界魔法のサンクチュアリを張ったので魔物が寄ることはないはずだ。
不寝番の必要もなくゆっくり寝れる筈だが、メイは逃亡生活のせいか、夜に不寝番がない事に不安がっていた。仕方がないので一緒の毛布で寝てやる。すると安心したのか寝てくれた。もちろんレオは一人だ。
次の日の朝は目が覚めるとメイは、
「ありがとう」
と顔を赤らめて言ってくれた。よく眠れたようで何よりだ。
軽く朝食を取り、フライで一気に北の大砦が見える所まで行く。30分程飛ぶと要塞の様なでかい建物だったので直ぐに分かった。
それから更に10km、二時間ほど歩いていく段々と通りに人が増えてきた。デカイ武器を持った冒険者。荷馬車を引いている商人の集団、護衛もついている。目の前に15mは超えるだろう壁が見えてくる。レオの話では約15km四方で作られ中には人口20万人が生活しているらしい。
どうしても気が急いて早足になってしまう。
門はでかくて高さ10mはあるだろう。道幅も馬車がすれ違える大きさは十分ある。門番も立っている。
門の所では入場料を払う必要もなく通れた。入場料がかかるのは荷馬車だけらしい。
よほど怪しい人間以外取り調べを受けることはないらしい。
初めて本当の意味で人の領域に足を踏み入れた。テンションが上がる。
「俺達の冒険は始まったばかりだ!」
「ア、アル君。急にどうしたんですか?!」
レオに突っ込ませてしまった。
最終回ではありません。
フライは150km前後で飛んでいます。