第43話 北の大砦に向かって
「さぁ行きますよ!」
急かすレオに問いかける。
「なぜ行きたい?この子を届けたら直ぐに戻ってくる予定だぞ?」
「戻ってくる予定ですと?ホワイ?!人間の国に戻って世界征服するなり、ハーレムを作るなりしましょうよ!」
「世界征服をするつもりもないし。ハーレムも今のところは必要ない!八歳だぞ!」
「そのうち作るんだったらいいじゃないですか!それに無限倉庫に唸るほどある金をどうするつもりですか?!パ〜〜ッと使いましょうよ!」
酒池肉林をやりたいんですよ!と続けるレオ。酒池肉林なんて悪趣味な!レオ王国でやってくれ。やった国は滅んだけどな。
まぁつまり折角の金を使いたいという事か。気持ちも分からなくもない。それに希望して来てくれたエマと、なんやかんや好きな事をやっているベルナルドに比べて騙されて送られたレオ。少しはガス抜きは必要か。
「分かったレオ。約束を守れるならついて来ていい」
「この際なんでも約束しますよ!」
条件を出す。
その1 邪魔をしない。
その2 邪魔をしない。
その3 邪魔をしない。
その4 邪魔をしない。
その5 離宮にもどる。
「どんだけ邪魔に思ってるんですか!!いままで私がどんな邪魔をしたというのですか?!」
普段感情を表に出さないエマも目を見開き手で口元を押さえ驚いている。自分も目をこれ以上ないくらい開いている。
じ、自覚が無いだと?!!
「それは目を閉じて自分の胸に手を当てて考えればいいんじゃないかな?」
レオは言われた通り目を閉じ胸に手を当てる。難しい顔をした後、ハッとした顔になり
「私の活躍が邪魔でしたか?!それは申し訳ありません!自重致しますのでどうかご勘弁の程をアルフレッド様」
慇懃な態度をとるレオ。
そこじゃない。活躍もしたかも知れないがそこじゃない。認識の壁は言葉の壁よりもこんなに高く分厚いのか。
やっぱり辞めようかなと思っていると、
「レオが行くと言うなら私は離宮にて待機をしておきましょう。今回の目的はエルフの姫君をエルフ自治領に返すことが第一の目標です。北の大砦にいる息子には私とベルから手紙を書いて居りますのでご安心を」
ベルの事も心配ですからと続けるエマ。さっきの話のどこを聞いてレオに譲る事になるのだ?
あらかじめ用意してあった手紙を二通手渡しながらエマは、
「ギルドに行けば息子グレンに会えるとは思えますが、会えない場合は南地区にある孤児院フォシーユの館を訪ねてください。院長のセルバンとは昔からの馴染みですので橋渡しをしてくれます。情報通ですので先に訪ねてもいいかもしれません」
と話してくれる。その後小声で
「若いうちの苦労は買っておいてください。役に立つ事もあるでしょう」
苦労を売りつけられた?!!