第31話 事前交渉
「…つまり、街に入る許可を与えるには、屋敷の南の壁の中を見せて欲しいと」
いまゴブリンの代表食糧長官のボグールと前回の野宿スポットで街に入るための事前交渉を行っている。
ゴブリンの代表もインテリジェンスゴブリンの例に漏れず2mを超える体躯のため、机で向かい合うように座る体格が違い過ぎるため自分の椅子はファミレスにある幼児用の椅子の形をしている。
どうも締まらないが仕方がない。態々用意してくれた物なのだから使わないのも失礼だろう。
ゴブリンからの要求は3つだ。
1. ゴブリンへの力の行使は厳禁
2. 魔物の肉を相場でなるべく沢山売却して欲しい
3. 屋敷の南の施設の視察許可
1は当然だろう。すべて問題ないが3が特に気にかかる。壁の中はただの畑や、田んぼ予定地なのだ。そして屋敷の南の壁に言及してくると言うのはエマが懸念していた通りずっと、ゴブリン達の監視下にあったのだろう。見られて困るものはないが気分がいいものではない。
「壁の中はただの畑で面白いものは何もないぞ。それでもいいならいつでも見に来てくれ。なんなら畑の手伝いもしてくれたら助かる。私達を見ているだけも暇だろう」
一応見られてるの気付いてますアピールを少し不機嫌そうに言っておく。大した効果はないだろうがと思っていると、
「監視の者達は、屋敷の南部分を見せていただければ直ぐに引かせます。中が畑で人手が必要という事でしたら手配させていただきます」
食糧長官のボグールは、汗をダラダラ流しながらそう提案してくる。あれ?!効果は抜群ですか?なんか怯えられている?ベルナルドのせいか?きっとそうだなと納得しておく。こんな可愛らしい五歳児がこんなデカイ身体のゴブリンに怯えられる訳がないのだ。
「人手の件は追い追いお願いする事もあるかもしれないが、どうせなら屋敷の南だけでなく屋敷内も見てもいいぞ」
全部見てって下さいアピールをしておこう。隠し事はないのだ。
「魔物除けの結界がありますので我々は入れません。南の部分だけで結構です。」
そうでした!普通に話してるので忘れてました!彼等には魔物ですよ!魔物のクセに魔物の肉を売ってくれって冷静に考えれば変な話ですよ。
「そうか、魔物の肉はどのくらい必要なんだ?」
気まずいので次の話へ行く。
「売って頂ける分は全て買う用意がありますが。キングバッファロー100頭、角ウサギ1000匹程あれば嬉しいですな。最近は獲物がめっきり減っておりまして……」
食糧難一歩手前ですと言われて黙ってしまう。自分のせいですよね〜?
ちなみに無限倉庫にはここ半年で狩ったキングバッファロー756頭、グレイトグリズリー38頭、角ウサギ4820匹入っている。
「分かった売ろう!ただ全て塩で貰っても使い道がない。塩以外で用意できるものはあるか?」
「こちらで用意できるものでしたら出来る限りの事は致しますが、塩さえあれば街中で買い物できますので好きな物を購入されてはいかがですか?」
そう言って机の上に一枚の紙が置かれる。紙には塩1000g交換券の文字とインテリジェンスゴブリンの肖像が描かれている。
「紙幣?!」
驚きの声をあげてしまう。まさかゴブリンが紙幣を使うとは
「あなた様のご先祖にあたるクロノア様より教えて伝わったものでございます。毎日の買い物に塩を持ち歩く訳にはいきませんからな。その交換券は取引所にて塩との交換が保証されておりゴブリンの街では皆その交換券にて支払いを行っております」
塩の代金は交換券にて受け取ることにし好きな物を街で買う事にする。
「それでは今日はこのまま、屋敷の南部分を見て貰い明日からゴブリンの街に行くと言うことで宜しいですか?」
話をまとめに入る。ボグールも異存はありません。と頷いてくれた。
コブリンの街の入場権利ゲットだぜ!!