第25話 離宮に来て半年
「さて皆様にご相談があります」
離宮に来て半年。ようやく畑や田んぼを囲む壁が完成した日。夕食の後エマが話始めた。
「アル様のおかげで食料に関してはたっぷりありますし、水に関しても初代様が残してくださった井戸のおかけで問題ありません」
食料の下りは皮肉だろうなと思いながらエマの話を聞き続ける。
「問題は調味料です。特に塩が足りなくなる可能性があります」
意外と大問題だった。話によると後半年は十分に保つ。節約すれば一年保つだろうとのこと。
最寄りの街は200㎞以上先だ。もう少し成長した僕とベルナルド2人ならたぶん往復できるだろう。まだ五歳児の体では長期間の野宿は持たない。お昼寝も必要だしね。
「そこで昨日、アル様のベッドの下から見つかったコレです」
一冊の本が置かれる。一瞬ベッドの下と聞いてビクッとするが前世じゃあるまいし他人見られて困る本など持ってるわけがない。そもそも僕は押入れ派だ。などと考えながら本を見る。
『るる□ 辺境ガイドブック』
その本にはそう書かれてあった。僕は屋敷の中で一番いい部屋を使っている。ベッドも初代様が使っていたのだろう。
「この本には離宮に周辺の地形に魔物や植物の情報、さらにオススメの観光スポットなどが書いてあります」
さすがる□ぶ。抜かりない。初代様遊び過ぎだと思いページをめくる。その中には確かに角うさぎやキングバッファロー、グレイトグリズリーの絵が描いてある。
それぞれ吹き出しがついておりキングバッファローのところには『集団でいる所を攻撃すると群れで襲ってきます!注意!』とかグレイトグリズリーのところは『魔法はほとんど効かない。魔法使いの貴方!一目散に逃げて!』などと書かれている。
「気になる情報はこれです!」
観光情報のページを捲りエマは指を指す。
『インテリジェンスゴブリンの村』
吹き出しで注目と書かれた説明を読む。
『世にも珍しいインテリジェンスゴブリンの村。厳しい環境に耐え抜くための強靭な身体。村を作り、高い知能を持ち、文化的な社会を営んでいる姿は必見!仲良くなると魔物の毛皮や肉を岩塩と交換してくれるよ。岩塩はゴブリンの村の貨幣。離宮より北に約30㎞、健脚の方2日。』
「明日からみんなでお出かけしましょう!」
エマは高らかに宣言した。
相談という名の決定事項通達