第16話 森のクマさん
「ウワ〜クマさんだ〜?!」
こちらを見据える熊。二本足で立ち体長は7、8mはあろうかという巨大さ。
いくらテンプレとはいえ早い早すぎる。新鮮な食料は周りにたくさんあるのに見向きもしない。
「五歳児だぞ。食べるところも少ないぞ!」
必死に訴えてみるが、まるで親の仇を見るような目でこちらを見てくる。
所詮魔物。そこに合理的な理由がなくても人間を襲うように宿命付けられているのか。
ニヒルな笑みを浮かべて熊を見つめる。
限りなく黒に近いコゲ茶色の毛皮のせいで分からなかったが、左肩から血を流している。かなりの大怪我だ。
「あっ、さっきの攻撃に巻きこまれたのか」
必然でした。そりゃこちらを憎憎しげに見る訳ですよ。敵ですから。
そんな事を考えてると熊は右前足を振り下ろしてくる。
「早いけど懐ガラ空きだ!」
潜り込んで右後ろ足の付根部分を殴りつける!殴りつけた瞬間魔力が放出されるが、
「あれ?!効いてない?」
熊は怪我をしている左前足を繰り出してくる。もう一度懐に潜り込みさっきより強めに左後ろ足を殴りつける。
『グルッ!!』熊が呻き声をあげ動きが止まる。
「魔力がほとんど通っていない?この熊の毛、魔力を通しづらいのか?!」
そう言って先ほどウサギ狩りに使った槍を生成。魔力1万を込めて熊の左後ろ足を刺す。そうすると簡単に熊を貫通する。
「込めた魔力の問題かな?」
この熊の毛は殴りつけた時放出される魔力量には耐えることができるが魔力1万の槍には耐えきれない。
「槍なら殺れるか!」
熊との距離をとり今度は槍を五本創り出す。
熊は四足の態勢をとり此方に駆け出そうとしている。
「貫け!!!」
勢いよく熊の顔を指差すと同時に槍が勢いよく飛び出す。五本の槍は一本に収束し熊の顔上半分を吹き飛ばす。駆け出そうとしていた熊はその場に倒れ伏す。
「死んだか?!」
顔半分を失い血を流している熊に近付く。念の為二、三回蹴飛ばし死んだのを確認する。完全に死んでいる。
「さて後片付けはどうしようかな?」
熊の死体と周りに転がる数百のウサギの惨殺死体をみながら溜息をついた。
アルは五歳児なので身長110センチほどです。熊がデカすぎて懐に潜り込んでも後ろ足しか殴れません。