第11話 離宮の場所
「エマ、この離宮は結局どこにあるの」
離宮での生活が落ち着いてきたある日にエマに尋ねました。
「人類の最前線の北の大砦より東に200キロ東に位置してると聞いております」
事もなげにそう伝えてくるエマ。
「北の大砦って公都から200キロ以上はなれてたよね」
内心の動揺を抑えながら確認すると
「はい、この離宮は公都から400キロ以上離れております」
やはり冷静に回答してくるエマ。
「けど御披露目会の次の日だよね。どうやって移動したの?」
そう尋ねる。詳しく説明を始めるエマ。
曰く王宮の隠し通路の中に離宮への転移陣がありそこから転移した。
初代様が万が一に備えて絶対に追ってがこない場所に作ったのがこの離宮。転移は一度に四人まで可能。転移陣に王族の血を流せば発動する。当面必要な食糧、資材などは持ち込んでいるので生活の心配はない。ただ今後王宮側の転移陣は自分たちが転移した後破壊されたはずなので今後は自給自足をしていく必要がある。
「リリィ様は最後まで反対されておりました」
そう付け加えるエマ。その一言で少し救われた気がする。
正直腹立たしいし。ただ命まで取られなかった事と、一緒来てくれた人達がいる事実が自分を冷静にさせる。きっと来るに当たってかなりの葛藤があったはずだ。
レオにも感謝しないといけないな。
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「聞いてないですよぉ〜〜〜!」
レオにこんな所まで来てくれた事に御礼をいい、自給自足になるから自分も出来る限りの事をする旨を伝えたところ涙目で語り出した。
レオが言うには、転移の前日、筆頭魔導師に呼び出され今度五歳になる王子の教育係にならないかと要請があった。
王子の教育係とはエリートコース。三男とはいえ自分のような若手に回ってくる仕事ではない。正直飛び付いたと。
王子は魔力が強力であるため公都から離れなければいけないこと。住み込みになること。可能であれば今日すぐに移動して欲しい事。すべての条件を飲んだ。
さすがに転移する時にぐっすり眠った王子がエマに渡されるのをみて少し訝しんだが、帰って来れなくはないが母親と離れると知ると駄々をこねたら困ると王自ら説明され納得した。
同行するのがエマベルナルド夫婦だった事も安心の材料だったようだ。
エマな後宮において雑事を一手に担うメイド長。王や女王の絶対の信頼がなければ就くことはできない。ベルナルドに至っては一線は退いたものの元SS冒険者にして前線の双子砦において長年大将軍として指揮を取り続け公国の守護者と言われた人。そんな重要人物が同行する場所が危険な場所の訳がないと。
涙ながらに語るレオ。長くなりそうだったので
「明日からもよろしくお願いします。レオ先生!」
と言ってフェードアウトした。先生と呼ばれて少し嬉しそうだった。薄々気付いてはいたが彼は被害者だ。明日からも先生と呼んであげよう。
レオが段々ヘタレになっていく(汗)