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楽園のリベラシオ  作者: あぎつ
鉄パイプと銃弾
2/2

アクロス・エスケープ

「…はぁ…はぁ…くそっ…まだ追って来やがる…。」

腕を振る度に腕に付けられた手枷に付いた鎖が音を立てる。

「待て‼︎無駄な抵抗は辞めて止まれ‼︎」

後ろからそんな声がさっきからしばらく聞こえている。

「…待てと言われて、止まる、馬鹿がどこに、いるのさ?」

息を切らしながら悪態をつくようにそう呟く。

路地裏の曲がり角を使い、連中の目を眩ましたが、すぐに見つかってしまう。

今逃げているだけでも十三回は眩ましては見つかっている。

このまま逃げ続けても埒が明かない。どうする?いや、考えるだけ無駄だな。逃げて駄目なら倒せばいい。

相手は五人、それぞれがサーベルを所持している。

それに引き換えて、こっちは…先端にL字型の接続部が付いた鉄パイプのみ…。

「…あー、ったく、ツイてねえな…

。」

この状況で真っ向から突っ込むのは絶望的だった。

こうなったが最後、連中を油断させて少しでも追っ手を減らすしかないのだろう。

おそらく次の角を使えばもう次の角にたどり着くことはおそらく無いだろう。体力も限界が近い。

「…もう少しだけ、持ってくれよ…。」

半ば祈るようにほとんど聞こえない声で呟き、 これが最後と決めた角を曲がり、壁の出っ張りに手を掛け、ありったけの力で上へ上へと登って行く。

「どこだ⁉︎」

曲がり角を曲がってすぐの兵の第一声がそれだった。

どうやら、上手く行ったらしく、兵達は少し上にいるこちらを捉えていないようだった。

しかし、それが見つかるのも時間の問題だった

「…もう腹は括ってんだ、やるだけだ…」

気づかない兵達へ斬り込むようにその場から飛び、鉄パイプを振りかぶって着地地点の一人に向かって振り下ろす。

「ここだよ‼︎」

「なっ‼︎しまっ…がアッ‼︎」

鉄パイプから頭蓋骨を砕く感触が伝わり、目の前の人物の活動を停止させたことを感知させた。

すぐさま他の兵達が腰のサーベルを引き抜く。

「させっかよ‼︎」

狭い路地裏で鉄パイプを横薙ぎに払う。

横薙ぎに振るわれた鉄パイプは一人のガラ空きになった脇腹を捉え、鈍い感触に戸惑うことなく振り切り、反対方向へ身を捻り、もう一人を捉える。

しかし、その一振りはサーベルで防がれ、火花を散らした。

「っ‼︎くそっ‼︎」

空いている二人がサーベルを構える。

もう無理だ…ここで、終わるのか…。

そう自分の人生が終わろうとすることへの抵抗を一切放棄しようとしたその時

乾いた銃声が三回響いた。

「…⁉︎」

すると、さっきまでサーベルを構えていたはずの兵達がゆっくりと崩れるように倒れて行った。

「…何が…?」

「いやぁ〜危ない所だったな〜」

目の前の光景を作り出した張本人が誰なのか、おちゃらけたような感じで俺に話しかけたそいつは、俺より少し上か、それくらいの風貌に、ダークグレーのスーツのボタンを留めずに着た、金髪の男が、銃口から硝煙を放つ銃を片手に立っていた。

「誰だ?」

「おー、名乗ってなかったな、てか、助けたのに突然誰だ?って…ま、この街だしな、しゃーないしゃーない。」

悪かったな、生憎と、助けを頼んだ覚えはない。

「俺は、クロード・フリーシューター。通りすがりのギャングだ。」

「俺は、沙上英司だ。…元学生とでも言っておくか。」

「おー、学生たぁ感心感心。」

「元、だって言っただろ?」

目の前のギャングは持っていた銃を懐のホルスターに収め、こちらを見た。

「で?助けてもらったら言うことがあるんじゃなぁ〜い?」

ニヤニヤと憎たらしく笑いながらそう言った。

「無い。少なくとも見返りばかり求める奴に礼を言う気はない。」

「おー、怖い怖い、ま、別にいいんだけどさ、それはそうと、この後はどうするんだ?」

「…後で考える。」

「おいおい、無計画にそこら辺ほっつき回ったってさっきの繰り返しだぜ?」

確かにこいつの言う通りだ、こんなことを繰り返しても、何の解決にもならない。だが、他に何があるだろうか?

「他に手が無くてどうしようもねえって顔だな?なら、いい手があるぜ?」

「は?」

「なあ、お前さ、ギャングにならねえか?」

「…は?」

唐突に放たれたその問いかけの内容を理解するのに数秒の時間を要した。

ギャング?俺が?犯罪組織に?冗談じゃない。

「いいぜ?別に無理に入らなくても…ただし、これからもずっと逃げ続けることになるだろうけどな。」

その言葉に、俺は迷った。

ギャングに入るならば、俺はこの兵隊連中から追い回される今のこの状況から抜け出せるのか?いや、仮にそうだとしても…

「…入ると、どうなる…?」

クロードはその言葉を待っていたかのようにニヤリと笑った。

「そりゃもちろん兵隊連中に追いかけ回されそうになってもお前一人で逃げ続ける必要はなくなるぜ。」

「…その対価は…?」

クロードは少し間をおいて答えた。

「今のお前にはもう戻れなくなる。」

「…戻れない…か…。」

「どうした?怖くなったか?」

「いや…寧ろ戻れなくて結構だ。」

どうせ追われるだけの今に戻る必要なんてない…。この際どうなろうと構わない。

答えはもう、出ている。

「あぁ、あんたの提案に乗らせてもらうよ。」

クロードは憎たらしい笑みを浮かべた。

「よし、それなら話が早い、来な。」

そう言って踵を返すクロードの後を追う。

「それで?どうするっていうんだ?」

「あぁ、ちょいとおねんねしててくれ。」

そう言ってクロードは拳銃を抜き、その銃口をこちらへ向けた。

「なっ‼︎」

その直後、額に衝撃が走り、辺りが真っ暗になった。

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