第17話 Stage 1:決戦、分断の策
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◆ 前回のあらすじ
十八日目、石韜が頭領の正体を掴んだ。
名は裴牛。八尺の巨体に大斧を振るう、
黄忠に匹敵する武力の猛将。三百を率いて迫る。
軍師・徐庶は敵の強さすら策に組み込んだ。
「猛将は先頭に立つ。最も深い罠へ誘い込み、頭領を討つ」
裴牛の討伐は、黄忠が引き受けた。
決戦前夜、徐庶は不安な主人公・李明に告げた。
「お主には、仲間がいる。一人で抱え込むな」
そしてついに——その日が来る。
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十九日目。
早朝。
まだ薄暗い、空の下。
けたたましい、警報が、俺の頭に響いた。
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[!!!]警告
黄巾本隊、襄陽北方に、到達!
規模:約三百
頭領:裴牛
距離:約三キロ
[!]本隊の進軍が、予測より大幅に早まりました
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「……来た」
俺はベッドから跳ね起きた。
予定より、早い。
だが、準備は、昨夜のうちに、整えてある。
一週目で何もできずに、死んだ、あの日とは、違う。
仲間も、いる。
「全員、起きてくれ! 賊が来た!」
俺は屋敷中に声を響かせた。
配下たちは、すでに、動き始めていた。
黄忠は弓を、手に。
霍峻も、矢筒を、背負って。
文聘は剣を。
趙累は、自衛組織の、点呼を。
徐庶と、石韜は最終確認を。
全員の顔に、緊張があった。
だが、恐怖は、なかった。
「李明殿」
徐庶が俺の前に、立った。
「策の、確認だ」
「お願いします」
徐庶が地図を、広げた。
「賊は大路を、来る。
だが、封鎖で、進めん。
必ず、二つの、間道に、分かれる」
「はい」
「東の、間道は、黄忠殿と、霍峻殿。
西の、間道は、文聘殿と、趙累殿。
林からの、狙撃と、出口での、待ち伏せ」
徐庶の目が鋭く、光った。
「儂と、石韜は全体を、見て指示を、出す。
お主は、自衛組織と、最終防衛線」
「分かりました」
「そして」
徐庶が声を低くした。
「頭領・裴牛は、必ず本隊の、中心にいる。
奴を、東の、間道の、最奥へ、誘い込む。
そこで、黄忠殿が、討つ」
「黄忠殿、頼みます」
「任せろ」
黄忠が力強く頷いた。
そして。
賊が現れた。
北の、街道を、埋め尽くす、黄色い、布。
三百。
その圧倒的な数に、自衛組織の男たちが息を呑んだ。
「す、すげえ数だ……」
「ほ、本当に勝てるのか……」
動揺が広がりかけた。
その時。
「狼狽えるな!」
趙累の、怒声が響いた。
「数は、関係ない! 我らには、策がある!
信じて、戦え!」
趙累の堂々とした姿に、男たちが落ち着きを取り戻した。
……さすが組織化の、名手。
人をまとめる力が、本物だ。
賊が大路を、進んできた。
そして封鎖に、ぶつかった。
「なんだ、これは!」
「道が、塞がってやがる!」
賊が混乱した。
倒木と岩で固められた封鎖。
簡単には、どかせない。
そしてその、後方から。
巨大な影が現れた。
裴牛。
八尺の巨体。
手には大斧。
「どけぇ! 儂がぶち破る!」
裴牛が大斧を振り下ろした。
ドガッ!
倒木の一部が砕けた。
……マジか。
力で封鎖を破ろうとしている。
「だが、無駄だ」
徐庶が冷静に、呟いた。
「封鎖は、一人では壊せん。
時間が、かかる。
その間に、賊は苛立ち、間道へ、向かう」
徐庶の読み通りだった。
「ちっ、時間の、無駄だ!」
裴牛が苛立った。
「お前ら、間道から、回り込め!
あの、絹屋を、襲うぞ!」
賊が二つの、間道に、分かれ始めた。
……策の、通りだ。
三百が、二つに割れる。
東の、間道。
百五十ほどの、賊が狭い道に、入ってきた。
道は細く、両脇は林。
賊は列に、ならざるを、得ない。
そして。
「今だ」
黄忠の声。
ヒュンッ! ヒュンッ! ヒュンッ!
林の中から、矢が降り注いだ。
「ぎゃあっ!」
「て、敵だ! どこからだ!?」
賊が混乱した。
どこから矢が来るのか、分からない。
黄忠と霍峻の弓が、次々と賊を射抜く。
黄忠の一射一殺。
霍峻の、戦場制圧。
狭い、間道で、賊はなすすべも、なかった。
「く、くそっ! 退け! 退けぇ!」
だが、後ろからは味方が押してくる。
前にも後ろにも、進めない。
賊は林からの、矢に、一方的に、討たれていった。
西の、間道でも。
文聘と、趙累が、出口で待ち構えていた。
「来たぞ! 構えろ!」
趙累の号令。
自衛組織の男たちが、槍を構えた。
間道から、出てきた、賊を。
「はあっ!」
文聘が斬り込んだ。
武人の太刀筋。
賊が次々と、倒れる。
「お前たちは、出てきた、賊の、足を、止めろ!
とどめは、儂が刺す!」
文聘の指揮の、もと。
自衛組織の男たちも、必死に戦った。
一人ひとりは、素人。
だが、文聘と趙累の指揮で、組織として機能していた。
俺は李家の、前で、最終防衛線を、守っていた。
自衛組織の一部と共に。
そして兄の李澄も。
「明、来るぞ!」
兄が叫んだ。
間道を抜けた数人の賊がこちらに、向かってきた。
「……来い」
俺は弓を、構えた。
黄忠に教わった通りに。
肘を上げ、肩の力を抜き、的を見据える。
放った。
ヒュッ!
矢は、先頭の賊の足に突き刺さった。
「ぐあっ!」
賊が転んだ。
一週目では、何も、できなかった、俺が。
今は、戦えている。
「兄さん!」
「おう!」
兄が剣で別の、賊を、受け止めた。
黄忠に鍛えられた剣技。
兄は確実に、賊を、退けていった。
二人で力を合わせて、最終防衛線を守る。
……守れている。
一週目とは、違う。
戦況は、徐庶の策の、通りに、進んでいた。
分断された、賊は各所で、討たれていく。
三百の、大軍は、もはや、烏合の衆。
統率を失い、混乱していた。
「李明殿!」
石韜が駆けてきた。
「策は、機能している!
賊は、半数以上、討ち取った!」
「本当ですか!」
「うむ! このまま、いけば——」
だが。
その時。
東の間道の方から。
凄まじい怒号が響いた。
「うおおおおっ!」
裴牛。
頭領・裴牛が、間道の封鎖を力ずくで突破し。
東の間道の最奥へ、突進してきたのだ。
黄忠の待つ、その、場所へ。
「来たか……」
黄忠が弓を、構えた。
決戦の刻。
黄忠 対 裴牛。
だが——その、勝負の、行方は。
次回予告
Stage 1:黄忠、裴牛と対峙す
頭領・裴牛が、ついに、最奥へ。
待ち構えるは、老いてなお、最強の、弓の名手・黄忠。
だが、裴牛の、武力は、凄まじい。
黄忠の矢は、届くのか。
[!]決戦、クライマックス
「儂の弓を、受けてみよ」
二週目、最大の、激突が、迫る。
[次話に続く]




