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能力者的な奴

久し振りに書きました。

評価等、お願いします。


 △△は炎を砕く。

 比喩でもなんでもなく、その右手で轟々と燃え盛った火炎を掴み、硝子のように割ったのだ。割られた炎は地面に降り注ぐ最中に霧散し、炎は煙さえ残さずに消える。

 その光景に、〇〇は目を疑った。

 己が作り出した渾身の業を片手で、しかも、火を割るという不可解な現象で消し去ったのだ。

 見た目は何処にでもいる小学生。身長も140cmを越えているか怪しい。

 本来なら守られていいはずの存在が、〇〇が保有する炎を操る能力のような単純明快な力ではない、背筋を指でなぞられるようなゾクッとした底知れなさを感じさせる能力を保有しているのだ。

 しかし―――やるしかない。

 ○○は腕を前方に伸ばし、両手の平を広げて、野球ボール程の火球(ひのたま)を精製。そして、それを単純に△△に放つ。

 だが、直進する炎は小さな手に、バリンッと心地よい音色で砕かれた。

 「僕には通じないよ」

 「……分かってるつーの」

 △△はニヤリ、とその容姿とは不釣り合いな笑みを浮かべた。

 「じゃあ、これは分かってるのかな?」

 △△が腰を屈めた瞬間。

 バコンッとコンクリートが砕ける音。

 ――――刹那に、〇〇と△△との距離は詰まっていた。

 ○○の眼前には右手。

 「――――ッ」

 咄嗟にしゃがみ、その一撃を、

 「引っ掛かった」

 バリンッと背後で硝子が弾ける音が発生する。しかし、この建物には硝子はない。

 ならば――――○○は前方に飛ぶ。前転をして、なんとか受け身をとり、素早く振り返ると。

 △△は剣を携えていた。

 色は灰色。いや、建物の内壁と同色。目に見える質感からして、コンクリート製だろう。丁度、石像の騎士が持つ剣を考えてもらえればいい。長さはグレードソードと呼ばれる部類に含まれるだろう。

 「……凄いね。まるで、予想してたみたいに避けたよ」

 「そりゃあ、避けるだろ。普通は、よ」

 △△は長大な剣の先を〇〇に指差すように向ける。

 「炎を使う一般的な能力持ちに避けられるなんて、ちょっとショック」

 「……能力者の時点で一般的じゃないだろう」

 〇〇は、隠すように背後で右手の平を開く。

 彼の能力は、『炎創造(FlamePlayer)』。

 端的に言えば、炎を発生させて形を与える者。ゲームの魔法使いのようなものである。

 しかも、火、水、風、熱、空間――五大元素と呼ばれる能力者の中でも、一、二を争うポピュラーな能力。ポピュラーであるが故に、畏怖の対象には成り辛く、能力者差別の影響を受け難い。

 今や戦闘にはあまりいない人種でもある。

 片や△△は空間系能力者。不可解な現象を起す化け物である。

 その△△が口を開く。

 「能力者が一般的ではない? そうかな?」

 「そうだ」

 適当に言葉を返し、右手に力をためる。脳から右手に向かって水が流れるような感覚が走り、○○は野球ボール程の炎を手の平に作り出す。

 その炎により、暗がりの部屋は照される。

 「ん? 隠しても意味ないと思うけどなぁ?」

 △△により灰色の剣は捨てられる。剣が床に衝突した瞬間に、硝子細工のように砕け散った。

 「死ね前に僕の能力を教えてあげる。僕の力は『切り抜き(Cliping)』。勿論、空間系の能力者だよ」

 「そうかよ」

 「君の能力は?」

 彼の能力は『炎創造者』。

 しかし、能力者学科生徒用学生証にはこう記されている。


 『黒の放火魔(flamedark)』と。


 「俺の能力は矛盾してるんだよ」

 炎が棒状へと形を成す。

 「炎は光を放つだろ? だけどな」

 そして、

 「俺の炎は暗い」

 漆黒の炎の剣が、彼の手に収まった。




 

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