何かの戦い
ネタが無くなった。
誰かネタを下さい。 何でも……
水の弾丸が彼の頬を掠める。 己の赤い液体が宙を舞った。
「どうかしら？ 水の魔術って、強いでしょ？ 聖女の騎士さん？」
前方、１０ｍも満たない位置に青の魔術師が妖艶な唇を歪ませながら、立っていた。
「ッ！！」
聞きもせず、彼は地面を蹴り上げ、一気に数ｍの間合いを詰める。 長い片刃剣の切っ先は地面を這い、青の魔術師の下顎を砕かんとするが、
「質問は返さないと！！」
彼の腹部に革靴の先端がめり込み、
「ダメよ！！」
落葉が風に吹き飛ばされるように廃城の寂れた壁に叩きつけられた。
続け様に水で構成された濁りなき鞭が彼女の右手に構成され、真横に振られる。
腐敗した木柱を諸共せず、風を切る音が彼の眼前に迫った。
「…………、」
息を吐き、前へ。
空気を押し退けながら水の鞭は唸りを上げ、彼を分かつ為、襲いかかる
が、
波紋が走る得物が縦の銀線を成す。
剣の軌跡は水を割り、迷いなき太刀筋は直線的に彼女の首元へ向かう。
「何回、やったって無駄よ！！」
飛び散った水分が魔術師の左手に集中。
風切り音が彼女に近付き、剣の頂点が縦の一閃。
ガチンッと鋭い金属音が廃城に響く。
「ッ……」
彼の額に皺がよる。
水の刃と鍔競り合いをしている己の刃を見て。
「真似てみたわ。 どう、凄いでしょ？」
水の剣は片刃、鍔に柄、そして、丸みを帯びた切っ先。 それは、極東の剣であった。 そう、彼の得物同様に。
「うっせぇ！！」
彼は身を乗り出し、全体重を魔術師にかける。 背の高さから上から下に圧力をかけるような形になった。
女の魔術師には力では勝てる筈もなく、
「チッ！！」
唇を噛み、
名の如き蒼の長髪を操る。 一つ一つが螺旋状に形成され、まるで蛇のように彼の喉に先端を飛ばす。
彼は後ろに飛び、
金の突撃は着地地点に寸分の狂いなく襲いかかった。
しかし、
瞬時に髪先は燃え上がる。
彼が瞬間的に炎の魔術を発動したのだ。
「私の髪燃やして、……殺す」
「やってみろよ。 青の魔術師」
彼は刀を強く握り締め、重心を下げた。
むせ返る程の殺気が古城に充満する。
「死ねよ、」
死の宣告が彼に降り懸かる。
石畳に滴る水分が青の魔術師を中心に巨大な一振りの剣になる。 この城ごと破壊せんとする巨大さ。 石で出来た壁は破壊され、夜風が廃城に忍び込む。
「騎士さんッ！！」
横に振られたそれは、階諸共消滅させるかの如く、壁、柱、を喰い千切り、獲物を殺す為、空気を切り裂く。
金属音が響く。
「ッ！！」
彼は半円を描く水の剣を受け止めたのだ。 あまりにも心許無い刃で、筋肉質ではない彼の体で。 滝の勢いを全て、受け止めるようなものだった。
左足が石畳を割る。
左指の爪が水の勢いに捲り上がる。 皮膚に幾も赤い直線が入る。
「くっそ！！」
唇を噛み、今にも折れそうな足に力を入れ、激流に立ち向かう。
決して、策がなかった訳ではない。
「死ねよ！！」
ギチギチと横に構えられた刀が縦に揺れ始める。 剣が限界だと彼は悟るが、
しかし、
――聖女様が来るまで、死ねないんだよ！！
策とは彼女が来るまで、生きるという事だ。
賢い者ならバカにするだろう。
しかし、彼は好都合に馬鹿なのだ。 頭が悪い訳ではない。 ただ、馬鹿なのだ。
彼は力を全て注ぎ、押し返す。
が、
己の運命は嘲笑するかのように武器が真っ二つに分かれた。
形を持った水流は彼を、城を砕く。
そして、聖女の騎士はノーバウンドで壁にめり込み、そのまま、地面に落下した。
「死んだ。 これで、聖女面した悪魔も泣くかしら？」
青の魔術師の勝ち誇った笑い声が月下に響いた。
