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学院編⑳

魔法科訓練場の端。


騒がしかった空気は、ゆっくりといつもの訓練の音へ戻っていった。

生徒たちは再び魔法を撃ち始め、教師たちも指導に戻っている。

だが――

三人だけは、まだ少しその場に立ち止まっていた。

ノエルの手の中では、透明な氷のバラが静かに光っている。

くるくると回すたび、花びらが光を反射してきらきらと輝いた。

ノエルがレオナを覗き込む

「どうしたの? レオナ?」


レオナはまだ、さっきニールが立っていた場所を見ていた。

少しだけ眉を寄せる

「……先程のニールさん……」


言葉を選ぶように呟く

「計り知れない魔力を感じました……」


アルマが腕を組んで首をかしげる

「上級研究員だからそんなもんなんじゃ?」


軽く言う。

レオナは小さく首を振る

「……そうなのでしょうか……」


目を閉じ、さっきの感覚を思い出す。

胸の奥に残る、あの圧倒的な気配

「まるで……」


ゆっくり言う

「湖のような……」


言葉を探す

「全く揺らぎのない魔力……」


普通の魔法使いの魔力は波のように揺れる。

強弱がある、流れがあるが…ニールの魔力は違った。


深く、静かで底が見えない。

まるで巨大な湖の水面のように――

動かない。

アルマはあまりピンと来ていない顔をする

「へぇー」


ノエルは氷のバラをくるくる回しながら笑った

「でもさ」


花びらを指でつつく

「すごい人だったね」


バラが光る

「一瞬で私とレオナの魔法が強くなっちゃった」


レオナも頷く

「確かに……そうですね」


今までの魔法が、まるで違うもののように感じる。

ほんの少し術式を変えただけ、たったそれだけで魔法の形が変わった。

アルマが空を見上げゆっくり言う

「世界って広いんだなー……」


拳を軽く握る

「剣でもすごい人とかいるだろうしなぁ」


その言葉に、ノエルが笑う

「絶対いるでしょ」


レオナも小さく微笑む

「ええ」


三人は並んで訓練場を見渡す。

学院の塔、訓練場、行き交う生徒たち。

だがその外には――まだ見ぬ世界が広がっている。

ノエルが氷のバラを空へ掲げと光が透ける。


そしてぽつりと呟いた

「なんか……」


少し楽しそうに

「ワクワクしてきた」


世界は、思っているよりずっと広かった


~~~~~~~~~~~~~~~


数日後。


学院の依頼掲示板に、新しい依頼が貼り出されていた。

紙には、ギルドの印章。

教師が三人にその依頼書を渡す

「ギルドから、学生向けの依頼が届いた」


アルマが紙を覗き込む

「どれどれ……」


内容は短い。


【王都から半日ほどの場所にある古い遺構】

【そこから魔力の異常反応が観測された】

【任務内容:状況調査】


アルマが首を傾げる

「見てくるだけ?」


教師は頷く

「そうだ」


指で一行を指す

「何があるかわからん」


そして少し強い声で言う

「戦闘に発展しそうになったら、すぐに引き返せ」


アルマは拍子抜けした顔になる

「それだけ?」


ノエルも依頼書を見ながら言う

「なんか簡単だね」


レオナは紙をじっと読んでいた。

細かい文字・注意事項・地図。

そして静かに言う

「魔力異常の原因次第だとは思いますが……」


顔を上げる

「油断せずに行きましょう」


教師が小さく頷く

「レオナの言う通りだ」


腕を組む

「原因が特定されていない。だから何が起こるかわからん」


三人を見る

「保身を最優先に行動するんだ」


アルマは少し真面目な顔で頷いた

「了解」


―――――


その夜・寮の部屋。


窓の外には月が出ている。

机の上には地図が広げられていた。

アルマは椅子の背にもたれながら言う

「調査目的ならさ、調査団とか出したらいいのにな」


ノエルはベッドの上で地図を覗き込む

「戦闘なし、って言ってたじゃん」


指で遺構の場所をなぞる

「だから学生向けなんじゃない?」


王都から半日。

そこまで危険な場所ではないからこそ、最初の調査を学院に回した。

そういうことだろう。

レオナは机の横で資料を読んでいる。

古い遺構、過去の記録、わずかな文献

「この遺構……」


静かに呟く

「かなり古いもののようですね」


アルマが顔を向ける

「宝とかある?」


ノエルが即座に言う

「ない」


アルマが肩を落としレオナは小さく笑う

「ただの調査です」


そして地図を見る。

遺構の位置は森の奥、昔の街道跡

「ですが……」


少しだけ眉を寄せる

「魔力異常というのは気になります」


ノエルも頷く

「うん。何もなかったらいいけど」


アルマは立ち上がり、大きく伸びをした

「まぁ見て帰るだけなら楽勝だろ」


レオナが静かに言う

「油断禁止です」


ノエルも頷く

「うん」


三人は窓の外を見る。

月が静かに夜空に浮かんでいた。

明日は―

古い遺構の調査任務。

何があるのか。

それは、まだ誰も知らなかった。

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