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学院編⑯

翌朝。


学院の門の前で出発の準備を整えた三人の前に、剣士科の教師が立っていた。

手に持っているのは、掌に収まるくらいの大きさの金属製の魔道具。


教師がそれを差し出す

「これを持っていけ」


レオナが受け取る。

淡く魔力が流れているのが分かる

「通信用の魔道具だ」


教師が説明する

「万が一、危険な目にあいそうになったら迷わず押せ」


魔道具の中央には小さな石がはめ込まれている

「学院に救難信号が飛ぶ」


教師の目は真剣だ

「それを確認したら直ぐに向かう」


ノエルが少し息をのむ。

アルマもいつもの笑顔ではない。

レオナが頷き

「私が持っていたほうがいいですね」


教師も頷く

「そうだな」


そして三人を順に見る

「いいか」


声が少し低くなる

「まずいと思ったら躊躇わず押すんだ。評価を急いで犬死にはだめだからな」


静かで重い言葉。

学院の任務は訓練だ。

それでも――


魔獣は本物。

そしてこの世界では、想定外の魔獣の出現。

突然の崖崩れ、天候の急変、自然の驚異。

そういった事故で命を落とす生徒もごく稀にいる。


教師はそれを知っているからこそ、軽く送り出さない。

アルマが拳を握り、にやっと笑う

「大丈夫、俺が前に立って二人を守る」


ノエルは頷き

「無茶しないでね」


レオナは魔道具を袋にしまう

「状況は常に見ています」


教師は小さく息を吐いた

「よし、行ってこい」


学院の門が開き三人は並んで歩き出す。

初めての――

本物の討伐任務へ。

~~~~~~~~~~~~~

街外れの山。


王都の畑地帯を抜け、木々が濃くなるあたりで三人は足を止めた。


レオナが周囲を見渡す

「そろそろ目的地周辺ですね」


地図と地形を照らし合わせる

「警戒を強めましょう」


アルマは木剣ではなく、実戦用の剣を握る

「どっからでもかかってきやがれ……!」


声は低い。


だが――


風が葉を揺らすだけで何も起こらない

「……」


アルマが少し眉をひそめる。

ノエルも周囲を見る

「……」


レオナも耳を澄ます

「……」


時間だけが過ぎる。


鳥の声。


風の音。


魔獣の気配はない。

アルマが小声で

「……奥に行ってみるか?」


レオナは少し考えて言う

「……日没までに戻れなくなる危険が――」


その時、ガサッ!


草が揺れた。

三人の視線が一斉に向く。

茂みから現れたのは――


狼型の魔獣。


灰色の毛、鋭い牙。

普通の狼より明らかに大きい。

アルマの表情が締まり

「でやがったな!」


ノエルが周囲を素早く確認する

「……周りにいそうな感じしないわね」


レオナは耳を澄ませ、地形を確認する

「単独の可能性、速攻でケリをつけましょう!」


狼型がこちらを睨み空気を震わせる声で遠吠えをした。


アルマの目が鋭くなる

「呼ばせるか!」


地面を蹴り一直線に距離を詰める。

狼型の喉がさらに声を上げようとする――

その前に、アルマの剣が振り下ろされる。


ガンッ!


毛皮の下の筋肉が思ったより厚いのか、硬い感触。

アルマが目を見開く

「思ったより硬い!」


森の中は木々が密集しているため、大剣ではなくショートソードを持ってきていた。

一撃で沈めるつもりだった。


だが――


狼型は牙をむいて跳びかかるその瞬間

「アルマ、右!」


レオナの声でアルマが身体をひねると狼の爪が空を切る。

ノエルが手を振る

「止まって!」


拳大の氷が飛び狼の脚に直撃し動きが鈍る。

その隙にアルマが踏み込み、回転し遠心力を乗せた斬撃。


ズンッ。


狼型の首を裂き地面に倒れる。

アルマが息を整える

「よし、1匹!」


その瞬間――


ガサガサガサガサ!


森の奥の茂みが大きく揺れる。

さらに2匹の狼型が飛び出してきた。

牙を剥き、低く唸る。


レオナが即座に叫ぶ

「アルマ!追加で2匹!!」


アルマがにやりと

「おうよ!!」


アルマが剣を構え、踏み込む。

狼型の魔獣が横へ跳ぶ

「左!」


レオナの声でアルマが身体をひねると、牙が頬をかすめる。

その瞬間、ノエルの拳大の氷塊が狼の肩に直撃する。


ドッ!


バランスが崩れ、アルマはその瞬間を逃さない。

地面を蹴り回転し遠心力を乗せた横薙ぎ。


ズンッ!


斬撃が首元に入り狼型が転がり崩れ落ちた。

「よし、2匹目!」


ノエルが周囲を見る

「あと1匹!」


その狼は――

距離を取っていた。

そして、踵を返し森の奥へ逃げる。


アルマが舌打ちする

「逃がしたか……」


その瞬間ーー


ドサァッ!!


逃げたはずの狼が、こちらへ吹き飛んできて地面を転がる。


アルマの目が見開く

「なぁぁぁ!?」


森の奥で木が揺れ、重い足音が聞こえてくる。


ドン。


ドン。


ドン。


現れたのは――

熊のような巨大な魔獣。

二本足で立ち上がる。


体毛は黒く、胸には赤く脈打つ核が埋め込まれている。


アルマが思わず呟く

「……でっか……」


レオナの目が鋭くなる

「……っ!」


一瞬で状況を理解する

「余計なのも呼んでしまったようですね……」


狼の遠吠えは仲間だけではなく――

より強い魔獣も引き寄せていた。

レオナはすぐに腰の袋を開け、教師から渡された魔道具のスイッチを押すと

小さな光が点滅する。


これで教師たちが向かってくるはずだが…

到着まで時間がかかる。


その間、三人は生き残らなければならない。


ノエルが息をのむ

「……逃がしてくれそうにないよね……」


熊型の魔獣がゆっくり頭を下げ、赤い目で敵意をむき出しにしている。


アルマが前に出て剣を握り直す

「ここで引いたら街に被害がでそうだ!」


一歩踏み出す

「ここでなんとか食い止めるぞ!」


熊型が森が震えるほどの咆哮をあげる。


グォォォォォ!!


巨大な腕が振り上がる。


アルマは唾を飲み込み冷や汗がでるが、剣を下ろさない。

ノエルが氷を構え、レオナが電気を走らせる。


三人対巨大な魔獣。

応援が来るまでの、生存戦闘が始まった。

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