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学院編⑭

学院訓練場。


今日は剣士科 vs 魔法科の模擬戦。

観覧席はかなり埋まっている。

剣士と魔法使い。


古くから言われる関係【剣は魔法に勝てない】


理由は単純だ。

近づく前に撃たれる。

だが――

近づけば剣の勝ち。

訓練場では、その差がはっきり出ていた。


炎弾・風刃・氷槍。

魔法が飛び交う。

剣士科の生徒たちは距離を詰められず、悪戦苦闘している

「くそっ!」


「近づけねぇ!」


教師が名簿を確認する

「次――」


一瞬の間。


「アルマ! ノエル!」


ざわっと観覧席が揺れる。

アルマが木剣を肩に担ぐ

「ノエルとか!」


ノエルはにっと笑う

「負けないからね!」


開始の合図と同時にアルマが地面を蹴り、一気に距離を詰める。


ノエルの手が動く。

詠唱なしで拳大の氷塊が飛ぶ。

アルマは回転して弾く。


ガンッ!


砕け散るがさらに氷。さらに氷。

アルマは笑う

「そんなんじゃ俺は止まらねーぞ!」


踏み込みを加速し距離が縮む。

観覧席がざわめく

「速い!」


「もう届くぞ!」


その時。

ノエルがにやっと笑った。

反対の手を――

くいっと動かすとアルマの走る地面が凍りついた。


足が止まる

「おっ?」


アルマはそのまま力任せに踏み込む。


バキッ!


氷を筋力で砕いて引き剥がす。

観覧席から声が上がる

「力で割った!?」


だが、その瞬間。

ノエルが小さく詠唱する

「火よ」


小さな炎が氷の上で弾ける。


ジュッ。


表面が溶け――


ツルッ


アルマが豪快にすっ転ぶ。

観覧席から笑いが起きる

「うわっ!」


「転んだ!」


アルマが起き上がろうとした瞬間、ヒュッ!

拳大の氷が一直線。


ゴッ!!


アルマの顔面に直撃した。

教師が手を上げる

「勝者、ノエル」


観覧席がどっと湧く。

ノエルが少し息を切らしながら笑いアルマは起き上がる。

鼻から血が出ている

「いてぇ……」


鼻を押さえ空を見上げて呟く

「そっか……」


ぽつり

「氷って滑るもんな……」


観覧席から笑いが起きる。

ノエルが肩をすくめる

「常識だよ」


レオナが小さく微笑む

「良い実戦でしたね」


教師たちも頷いていた。


剣と魔法。そして互いを知ること。

それもまた、学院で学ぶ大事なことだった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

模擬戦が終わり、生徒たちはまだざわざわと話している。

アルマは地面に座り込み、鼻にティッシュを詰めていた

「いやー……」


笑いながら頭をかく

「さすがだわ」


ノエルが腕を組む

「私は氷得意なだけであって」


少し胸を張る

「少しは火も使えるのよ」


アルマが鼻声で言う

「いやそれが強えんだって」


ティッシュを指差す

「氷で滑らせて火で溶かすとかさ!」


ノエルは得意げに笑う

「作戦勝ちだね」


その横で、レオナがしゃがむ

「はい、治しますよ」


アルマが顔を向ける

「お、頼む」


レオナがそっと手を触れ、掌に魔力が集まる。


ぱちり。


小さな紫電が走るが刺激はほとんどない。

血流が整い、細胞が活性化し鼻血がすっと止まる。


レオナが手を離す

「これで大丈夫です」


アルマが鼻を触る

「え?」


指に血がつかない

「止まってる!」


ティッシュを抜き取る

「いやいや」


笑いながら言う

「レオナもすげーな!」


ティッシュをひらひらさせる

「ティッシュいらねーじゃん」


ノエルが笑う

「便利すぎるよね」


レオナは少しだけ照れる

「簡単な傷だけです」


アルマが立ち上がり木剣を肩に担ぐ

「いいなぁ…俺の後ろ、安心すぎる」


ノエルが肩をすくめる

「だから前で無茶するんでしょ」


アルマは即答する

「当然!」


レオナが小さくため息をつく

「ほどほどに」


教師が名簿を確認し、次の名前を呼ぶ

「次、カイル、レオナ!」


ざわっと観覧席が揺れる。

カイルは剣士科の中堅で王都式の型が安定していることで知られている。

レオナはゆっくり前へ出る。


静かな目

(私は私なりの戦い方がありますからね……)


一方、カイルは剣を構える

(レオナは確か……)


記憶を辿る

(電気と回復だったな……)


深く息を吐く

(電気にだけ気をつければ……いける)


開始の合図でカイルが踏み込み、迷いのない突進で一気に距離を詰める。

レオナが手を上げると紫電が走る。

迎撃の電撃だが――


カイルは止まらない

「なんのこれしき!!」


歯を食いしばり、電撃を受けながら突っ込む。

観覧席がざわつく

「押し切る気だ!」


距離が詰まり、剣の間合いになった。


その瞬間。


バチィ!!


空気が裂けるような音。

カイルの体が跳ねた

「ぐああ!?」


剣が手から落ち、砂の上に転がる。

観覧席が静まり返り教師の目が細くなる。


カイルの腕が震えている。

レオナは動いていないがその周囲。

ほんのわずかに空気が揺れている。


レオナは――

見えない電気の結界を張っていた。


カイルが剣を振り下ろした瞬間に、剣を伝って電流が腕へ流れたのだ。

筋肉が痺れ、握力が消える。

レオナは静かに歩み寄り、ぽん、とカイルの肩に手を置く

「私の勝ち、ですね?」


穏やかな声。

同時に、指先から微弱電流。

筋肉の痙攣を整えると、カイルの痺れがすっと引いていく。

カイルは息を整えながら呟く

「……電気……そう使うのか」


レオナは軽く頭を下げ、訓練場がざわめく。

観覧席でアルマが目を丸くしている

「すっげ……」


ぽつり

「あれやられたら俺も止まっちゃうじゃん……」


ノエルが腕を組む

「制御が飛び抜けてるよねー」


感心したように言う

「いいなぁ」


レオナは静かに戻ってきて、アルマとノエルの前に立つ。

アルマが笑う

「後ろ安心すぎるわ」


レオナは小さく微笑んだ。

三人の役割は、やはり綺麗に噛み合っていた。

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