学院編⑪
夜の訓練場。
ほとんどの学生は寮へ戻っていて、月明かりと灯された訓練用の魔灯だけが砂地を照らしていた。
中央に立つのは――三人。
アルマが大剣を構える
「まだまだ!」
息は荒いが目は燃えている。
ノエルが額の汗を拭う
「本当に体力バカなんだから……」
そう言いながらも、両手を掲げと冷気が集まる。
レオナが一歩下がり、位置を整える
「いきますよ」
ノエルの氷弾が一直線に放たれると、アルマは踏み込み剣の腹で弾く。
ぱきん、と砕ける。
次は二発で左右から来る。
アルマは横へ跳ぶ。
回転、弾き、受け流し、勢いを殺す。
レオナの紫電が走り、弱いが鋭い。
アルマは瞬時に判断し、剣を地面に突き立てて導くと電流が砂へ逃げる。
「遅い!」
アルマが笑い、ノエルが悔しそうに叫ぶ
「今のはわざと加減したの!」
レオナが静かに指示する
「右、アルマ」
視線だけで伝わる。
次の氷は、アルマの動線を読んだ位置に飛ぶ。
アルマは身体をひねり、背後で弾く。
一連の動きに無駄がない。
山の斜面で昔からやっていた。
温泉の帰り道でも同じことをしていた。
「避けられたら負け」という遊びの延長。
本人たちは遊びの感覚だが、氷の軌道、電流の角度、受け流す剣の面。
どれも精度が高い。
観察していた剣士科の教師が、遠くで腕を組む
「……あれは」
隣にいた魔法科教師も目を細める
「実戦想定の連携に近いですね」
合図は最小限。声は短い。動きは止まらない。
アルマが叫ぶ
「もっと速く!」
ノエルが歯を食いしばる
「いくよ!」
氷が三連射。
レオナが後方から微調整。
アルマは舞い、跳び、回り、弾く。
受ける。
月明かりの下で、三人の影が交差する。
やがて、アルマが膝に手をつく
「……はぁ……」
ノエルも肩で息をしてレオナが近づく
「今日はここまでにしましょう」
アルマは笑う
「明日もやるぞ」
ノエルが呆れた顔をする
「分かってる」
この“遊び”が、学院内でも上位に入るほど高度な訓練であることに本人たちは気づいていない。
ただ三人は昔と同じように、並んで笑っているだけだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~
学院の模擬戦訓練場。
観覧席には各科の生徒たちが集まっている。
今日はパーティー戦の模擬戦。
基本編成は3~5人。
今回の対戦は――
アルマ・ノエル・レオナの3人組
対
別の3人パーティー
開始の合図が鳴る
「前出るぞ!」
相手パーティーの前衛がアルマへ突っ込んできた。
重い踏み込み、王都式の構えだが――
アルマは動かない。
ほんの一瞬、体が沈み次の瞬間、横へ跳ぶ。
くるりと回転し舞うような動きで剣が弧を描く。
ガンッ!!
相手の剣が弾かれる。
「う、受けきれない!」
衝撃が腕に伝わり、剣の軌道が流される。
防いだはずなのに、体勢が崩れ反撃の間がない。
アルマの剣は止まらない。
回転し踏み込み追撃の一撃。
前衛の剣が空中へ弾き飛ばされ、観覧席がざわめく。
「早すぎる…」
「重いのに速い…」
前衛が崩れた瞬間、相手後衛が動く
「今だ!」
アルマへ一直線に炎弾が飛ぶがーーー
アルマは踊るように横へ跳ぶ。
炎は空を焼くだった
続けて風刃が斜めから迫る。
アルマはくるり回転しながらかわすと砂が舞う
「当たらない…!」
最後の魔法使いが歯を食いしばる
「これなら!」
氷弾が一直線にアルマに向かって飛ぶ。
踏み込むと、ガンッ!!
と剣で叩き落とし氷が砕け散る。
観覧席から声が漏れる
「嘘だろ……」
アルマは剣を肩に担ぎにやりと笑う
「俺の特訓相手、誰だと思ってんだー?」
親指で後ろを指す
「ノエル以上の出力と!」
さらに指を振る
「レオナ以上の制御ないと当たらねーよ!」
ノエルが後方で苦笑する
「……あんなことされると自信なくしちゃうよね」
レオナは静かに頷く
「避け慣れていますね」
アルマが魔法をすべて叩き落とし、すたすた歩いて近づいていく。
相手後衛の顔が引きつり、距離が縮まる。
剣士が魔法使いへ、静かな足音。
逃げ場はない。
観覧席から誰かが呟く
「……あれ、もう勝負ついてない?」
砂埃の中、アルマが相手の魔法使いの前まで歩いていき、アルマはすっと剣を前に出した。
その瞬間――
「そこまで!」
教師の声が響き試合終了。
静まり返った訓練場のあと、ざわめきが広がる
「強すぎんか…?」
「早すぎる」
前衛は剣を弾き飛ばされ、後衛の魔法は通らず、最後は接近されて終わった。
結果は明白だった。
圧倒。
ノエルが息を吐く
「…私の出番は?」
レオナがくすりと笑い
「今回はアルマが主役でしたね」
三人は決して万能ではない。
アルマは魔力がほぼない。
ノエルは制御が荒い。
レオナは出力が低い。
だが――
その偏りが、綺麗に噛み合っている。
前に出る者、高出力の魔法、安定した支援。
バランスが極めて良い。
教師たちが腕を組む
「幼い頃から山で実践のようなことをしていたのが実になってきているのだな」
別の教師が頷く
「互いの欠点を互いで補っている」
アルマの背後にノエルとレオナが立つ。
「一人一人は弱点があるが……」
少し間があき、低く言う
「化けるぞ、このパーティーは」
ざわめきが広がる。
魔法科の生徒、剣士科の生徒、治療科の生徒。
誰もが、三人を見る。
当の三人は――
アルマが振り向き、剣を肩に担ぐ
「どうだった!?」
ノエルが笑う
「かっこよかったよ!」
レオナも頷く
「無駄のない動きでした」
アルマは満足そうに笑う
「だろ!」
三人の距離は近いことは昔から変わらない。
ただ――
学院の中で、その強さがはっきりと見え始めていた。




