学院編⑩
学院の依頼窓口。
三人は袋いっぱいの薬草をカウンターへ置いた。
「薬草とってきたぞー」
アルマが胸を張り、担当教師が中身を確認する。
根を傷めていないか。
量は足りているか。
品質は保たれているか。
静かに頷いた。
「うむ。初任務はどうだった?」
アルマは即答する。
「野うさぎがでた」
教師がわずかに眉を上げる。
ノエルが補足する
「それ以外は平和でした」
レオナも小さく頷く
「予定通りの採集です」
教師は腕を組む
「それはそうだ。林と言っても王都のすぐ側だからな」
淡々と説明する
「異常があれば騎士団が動くことになっている」
王都周辺は常に管理されている。
危険があればすぐに対処される区域だ。
アルマが口を尖らせる
「ってことは、しばらくは魔獣ドカーンとかなし……?」
ノエルが肘でつつく
「ドカーンはやめなさい」
教師はわずかに笑った
「それはお前たち次第だ」
三人が顔を上げる。
「学院内での評価会議で、お前たちの力が十分だと認められれば――」
少し間を置いて
「危険な依頼も増えてくるぞ?」
アルマの目が燃える
「ほんとか!」
「無論。だが“危険”は文字通り危険だ」
軽く諭すような声。
ノエルはぱっと笑う
「私の魔法が輝く!!」
拳を握る。
アルマも負けじと胸を叩く
「俺の剣もな!」
レオナは静かに言う
「怪我をさせないことが前提です」
教師が頷く
「焦るな。段階を踏め」
書類に合格印が押され
「初任務、完了だ」
その言葉に、三人の胸が少しだけ高鳴る。
決して派手ではないが確実な一歩。
アルマは依頼書を握りしめる
「次だな」
ノエルが笑う
「次も三人でね」
レオナも穏やかに
「はい。三人で」
学院生活は、着実に前へ進んでいた。
外に出ると被が落ち始めていた。
依頼完了の印をもらった三人は、石段に腰を下ろしている。
空は橙色に染まり、塔の影が長く伸びる。
アルマは両手を後ろについて、空を見上げた
「ただの散歩がてらの草むしりだったな!」
豪快に笑い、ノエルも苦笑する
「ちょっとワクワクしてた自分が恥ずかしい」
レオナは静かに言う
「実際、危険はありませんでした」
少し間があき、アルマがぽつりと続ける
「正直さ」
視線を遠くへ向ける
「山の村の方が危険まである」
冬の斜面・崩れる岩場・突然の獣。
ノエルも頷く
「うん。川の増水とか、あっちの方が怖いよね」
レオナは思い出すように目を細める
「吹雪の夜もありました」
学院の周囲は管理され、守られている。
騎士団が巡回し、異常があればすぐ対応する。
ここは安全だ。
だからこそ――
初任務は“課外授業の延長”に感じられた。
アルマは立ち上がる
「まぁでも」
拳を握り
「俺たち、正式に依頼こなしたんだよな」
ノエルがにやっと笑う
「うん。報酬も出るし」
「報酬っていっても少額だけどな」
「最初だから!」
レオナが静かにまとめる
「基礎を積み重ねることが大切です」
アルマは肩を回す
「次はもうちょい動きたいな」
ノエルが冗談めかして言う
「野うさぎ強化版とか?」
「それは嫌だ」
三人の笑い声が夕暮れに溶ける。
三人で依頼を受け、三人で終えたことがが何より大きい。
アルマは小さく呟く
「三人で、ちゃんとやれてるな」
ノエルが頷き
「うん」
レオナも微笑む
「順調です」
冒険者という言葉は、まだ少し遠い。
けれど、確実に一歩ずつ近づいていた。
そうこうしていると学院内で、三人の名前は少しずつ知られるようになっていた。
中庭の片隅にて
「なぁ、あの三人組知ってるか?」
「ああ、尖ったやつらだろ?」
囁き声が広がる
「魔法科のピンク髪、無詠唱で高出力出すって噂だぞ」
「治療科の銀髪も安定してるらしい」
「で、剣士科のドワーフ……あれは別枠だろ」
訓練場の見学で見せた舞うような剣。
あれは強烈だった
「正直、バランスいいよな」
「前衛・高火力・安定回復」
「さすが幼なじみってやつか」
別の生徒が腕を組む
「あそこまで連携ってやれるもんなの?」
模擬戦の練習で三人が組んだとき、アルマは無理をせずに前に出るが踏み込みすぎない。
ノエルはアルマの視線を邪魔しないように魔法を撃つ。
レオナは下がり、危険な位置には立たず司令塔として動く。
それが自然に出来ている。
「合図出してるわけでもないのに」
「目線だけで分かってる感じだった」
「長年一緒ってのは強いな」
当の三人は――
いつもの木陰で昼食中だった。
アルマがパンをかじる
「なんか視線感じね?」
ノエルが振り向く
「あ、また見られてる」
レオナは穏やかに言う
「噂になっているようです」
「え、なんで?」
「尖っているからでしょう」
ノエルが笑う
「尖ってるのはアルマじゃない?」
「なんで俺だ!」
けれど、どこか誇らしい。
アルマは腕を組む
「まぁ、悪い気はしねぇなぁ」
ノエルが頷く
「うん」
レオナは静かに続ける
「ですが、浮きすぎないように」
「分かってる」
アルマは真面目な顔になる
「俺たちは俺たちだ」
派手さがあるが、安定している。
それが三人の強み。
学院内で、確かに存在感を持ち始めていた。
“組めば強い”
その評価は、少しずつ固まりつつあった。




