すすむの夢
台所のおばあちゃんは、帰宅した孫が黙ったまま自分を見つめているのに気づいた。
「何か欲しいの? ミルク? お菓子はご飯の後まで待ちなさい」
おばあちゃんは鈍い。も・の・す・ご・く・鈍い。すすむは一生懸命に心の中で呼びかけ続けたのだった。
「こんにちわ」
それなのに、おばあちゃんはちっとも感じてくれないのだ。おじいちゃんが帰って来ると、すすむはおじいちゃんにも試した。
「はぁーん。すすむ」
おじいちゃんは何かを察する口ぶりだ。さすがはおじいちゃんだ。
「何かいたずらしたろ。怒らないから話してごらん」
すすむは慌てて首を横に振った。やっぱりおじいちゃんも鈍いんだ。すすむは少しがっかりしたが、考えようによっては、春香との秘密の価値が高まろうというものだ。心で話せるのは、春香と、すすむだけなのだ。
すすむは眠くなった自分に気づいて、パジャマに着替えた。ちょっと苦労したが、自分でパジャマのズボンをはいて、上着のボタンをとめた。今まで着ていた物はちゃんと、たたんだつもりだ。これらは全て良い子でいるための作業だ。祖父と祖母はそんな孫の姿を見て、孫が元気になったのを確認し合った。この孫が、今は父母の事を忘れているに違いないとささやき合った。
そしてなるだけ孫の明るさを維持するために、父母の事は忘れたままに、決して触れないようにしようと結論した。しかし、おばあちゃんは、孫が元気になった秘密を知りたいとも考えた。
寝床に入ったすすむは、お父さんとお母さんに魔法を使ってみ
せる夢を見た。お父さんは笑っている。お母さんは拍手しながらすすむを見つめ
ている




