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五日目の朝

 あくる朝、目を覚ましたすすむは布団の外を窺って柱時計を確認した。幼くて時間を数字に換算できないが、針の角度を見ることは出来る。耳を澄ませて居間から流れてくるテレビの音に耳を澄ますと、おばあちゃんが居間でくつろぐ時の番組の音声が聞こえる。時計の針の角度とテレビの音声は、おじいちゃんはもう仕事で姿を消した後だと言うことを示していた。もちろん、寂しさは無い。

 すすむはおばあちゃんを遊び相手にした。まず、すすむは朝御の後の皿洗いを手伝って、お皿は1枚しか割らなかった。それから掃除を手伝ったが、玄関の花瓶を倒しかけただけだ。洗濯も手伝ったが、すすむが洗濯機に台所用の磨き砂を入れかけたのに、おばあちゃんが素早く気が付いて事無きを得た。おばあちゃんは迷惑な顔もせず、孫が生活に戻ってきたことを喜んだ。


 すすむはおばあちゃんがテレビを見るときも側にいて、登場人物が手を握ったりキスをしたりする度にまじめくさって騒いだのでドラマの雰囲気は台無しだった。すすむはそうやって、おばあちゃんにまとわりついて過ごした。もしも、おばあちゃんが画用紙を買って来たことを思い出さなければ、もっと多くの損害が出たに違いない。おばあちゃんは、

すすむに画用紙とクレヨンを与えた。昨日、買物の折りに、孫のために買い求めたものだが、与えるより先に孫は眠ってしまったのである。


すすむは夢中で絵を描いた。今日のすすむの絵には色がついていた。おばあちゃんにはようやく、耳の長さでうさぎの判別は出来たものの、後は、孫が動物を描いているらしいということは理解したものの、犬だかライオンだかパンダだか熊だかの区別がつかない。

 動物の絵に交じって、画用紙の3枚目の中央に2人の人間の絵があった。左の人物は髪が長くて女性だと分かる。その女性に寄り添う人物は小さくて子供に違いない。二人は仲良く手を繋いでいる。おばあちゃんはその女性を母親かと推定したが、片手に提げた四角い箱には気に止めなかった。おばあちゃんは、なにやら少し元気になったすすむを不思議に感じながらも、深い詮索はしなかった。

(この子は何かいい夢でも見ているらしい)

 そう考えて、孫の夢を覚ますことを恐れたのである。すすむの方は嬉しさや期待で一杯だった。また同時に、秘密のある嬉しさと、秘密を話したい誘惑とで、じっとしてはいられないのである。すすむはおばあちゃんのスカートの裾をひいた。

「あのね、あのね」

 何度も何かを話しかけたが、その都度、

「ううん」と、首を横に振った。

 すすむが昼のおやつを食べ終わる頃、おばあちゃんも忙しくなる頃。おばあちゃんはすすむに水色のジャンパーを着せ、首にはマフラーまで巻いて言った。

「さあ、元気よくお外で遊んでらっしゃい」

 おばあちゃんは午後のお皿や花瓶や洗濯物の運命を考えたのだ。また、女性の敏感さで、すすむが外で遊ぶ事と、すすむが元気になった事を関連付けて考えたのかも知れない。


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