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理由

 今日は、春香の学校で一人の少女が階段で足を滑らせるというトラブルが起きた。慌てて走っていた時にバランスを崩したためであり、春香には関係がない。しかし、その少女が春香に嫌がらせをしているグループ一人だと言うことが妙な憶測を生んだ。

「春香。アナタが祟ったんじゃないの? 」

 露骨に問う同級生がおり、その傍らでその生徒を制止する仲間も春香をかばってのことではない。春香に祟られると言うことを露骨に恐れる気配が流れてくるのである。

(馬鹿馬鹿しい……)

 春香は冷笑を浮かべるしかないのだが、その表情が周囲の同級生の不安を煽るのである。春香は職員室に呼び出されて教師から事故の顛末を問われた。むろん、事故の場に居合わせていない春香は答えるすべがない。彼女は無表情で教師の言葉を聞き流した。表すべき感情がない。彼女は誰かを呪うという能力など持ち合わせては居ないし、相手の意識を察する事についても、流れてくる意識を受け止めて居るのみで彼女が意図して相手の心の底を探っているわけではなかった。

 第一、人の心の流れを受け止めて感じ取ることが出来るという自分の能力が気味悪がられることは気付いていて、彼女はその気配を絶っている。ただ、勘が良すぎるという点を隠しようがない

 目の前の教師の感情が彼女に流れ込んでいる。

(扱いにくい生徒……)

 そういう正直な評価であるが、この生徒が原因でトラブルが起きたときの責任問題に対する不安が絡んでいて、春香を苦笑いさせた。

「もう、帰っても良いですか? 」

「ああっ、気をつけてな」

 時計を見上げて尋ねる春香に教師は肯いた。時間は4時に近づいていて、春香にとって公園ですすむが待っている時間だった。これが、今日、春香が公園に来るのが遅れた理由である。


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