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誰かが見てくれている

「また、佐々木が契約取れなかったよ」

「そっかぁ、佐々木さん大変だね」

「俺も怒りたくないんだけど、ついつい声を荒げちゃったよ」

「でも、佐々木さんのためなんでしょ?」

「うん、今年中に契約を取れないと佐々木をクビにするって上から言われてて、どうしてもそれは避けたくてさ」

「そうよね」

「佐々木は、不器用だけどいいやつだからさ」

「それは、昂さんが支えてあげなきゃね」


同窓会で久しぶりに再会して結婚

よく聞く話だが、私にとっては思いも寄らない幸運だった。

「ずっと好きでした。」

学生時代から全くモテてこなかった私にとっては、全く信用できない言葉だった。

高校一年生の時同じクラスだった立川昂さんとは、数回話したことがある程度だった。

「高校の時に理科の先生が黒板を消さない人で、毎回授業後に横山さんが消しているのを見ていた。なんて、親切な人なんだと思った。」

「掃除の後に濡れた雑巾が干してあって、床に水が垂れているのを拭いていたところを見ていた。それを誰にも言わずにやるところが好きだ。」

「でも、学生時代にそんなことを言える勇気はなかった。今なら、言える。横山さんのことが好きだ。」

お互いにクラスで目立つ方ではなく、存在は認識している程度だった。

そんな私たちの関係は、彼の告白で一変した。


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『自殺願望』


3年1組30番 横山美加


死にたい。

私は、ブスだ。

何をしても絵にならない。

同じクラスの高山さんは、端正な顔立ちと長くて細い脚。

何をしても絵になる。

ズルいと思ってしまう。

本当は、羨ましいなのに。

私はパスタサラダで我慢してるのに、高木さんはマックとミルクティー。

それなのに私よりもスタイルがいい。

せめて、性格だけは良くしようと思って、

後ろから3番目も席なのに足りないプリントを取りに行った。

誰も見ていない。

高木さんは、宿題を忘れて「誰か写させて〜」と甘い声で言えばクラス中の人が注目する。

真面目に生きるのが馬鹿馬鹿しくなる。

死にたい。


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「美加ー!シャンプー詰め替えてくれたのー?ありがとー」

お風呂場から大声が響く

「うーん!」

昂さんは、人をよく見ている。

昔は、冴えなかった私を。今は、仕事のできない部下を。

彼みたいな人がいるから真面目に生きていこうと思える。

きっと誰かが見てくれている。


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『変わりたい』


3年1組17番 立川昂


僕は、感情表現が苦手だ。

「ありがとう」や「ごめんなさい」が言えない。

恥ずかしいというよりも怖い。

僕の言動で人を傷つけてしまうんではないかと思い躊躇してしまう。

そんな自分を変えたい。

感謝や謝罪だけじゃなく、叱咤激励もできるようになりたい。

僕の前の席の横川さんが足りないプリントを取りに行ってくれたことがある。

僕は、それに「ありがとう」と言えなかった。

僕の「ありがとう」が気持ち悪いと思われるのではないかと思ってしまった。

気にしすぎだということはわかってる。

でも、変えられない。

少しずつ変わりたい。

多分、「好き」という感情を伝えられないまま高校を卒業すると思う。

でもいつか、横川さんに気持ちを伝えたい。


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