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青春!探偵!ひとだすけ部!  作者: 北極鳥ユキ
第Ⅱ話「少女の秘密」
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Part19「あの子を追え」

 翌日、部室には大山と彩里の姿があった。


「実はひとだすけ部に用事があってね、今も大丈夫かな」


 大山はいつも通りの柔和な笑みを浮かべながら告げる。

 ひとたすけ部の部長であるはずの史家といえば相変わらず補習中なので、部室に居る正多が対応することになった。


「彩里から聞いたよ。ひとだすけ部が迷子の猫を探し出したって。これってあれだよね、お悩み相談とか、困りごととかを依頼すると解決してくれるシステム」

「そういう感じでやってるかな。まだ探り探りって感じだけど」

「じゃあ早速だけど、依頼を一ついいかな。千崎ミソラさんについてなんだ」


 依頼の内容は『悪い噂』について、真偽を確かめてほしいという物だった。


「俺たちは一期生で、しかも人数だって多くないから、やっぱりみんな仲良くして欲しいんだ。そのうえで、あの噂は放っては置けない。それが誤解ならば、正さなければならない。もし仮に本当であるならば、それは止めなくてはならない。そうだろう?」

「生徒会は何もしないの?」

「本当ならそうしたいんだけどね、生徒会二人しかいないし、漫画みたいに強い権限は持ってないのに、仕事は有ると来た。一応、できることとして先生方に報告はしたんだけどね、プライバシーとか、個人情報を盾にそっちから情報が下りて来ることは無くって」

「それで、動きやすいひとだすけ部に真偽を確かめてもらおうと」

「そういうこと。頼めるかい?」

「史家に相談してみるけど、たぶん大丈夫だと思う」

「それは良かった」


 安心した顔で言うと、大山は彩里を連れ立って部室を後にした。その姿を見送っていると、背中越しに二人の声が聞こえてくる。


「界人がそういうことするの珍しいじゃん。丸一年も放っておいたのに」

「タイミングが無かっただけだよ」


 ***


 こうして、ひとだすけ部は『噂の調査』という依頼を受けることになった。

 正多が大山界人が依頼人という史家が嫌がりそうな事実を隠したこともあって彼も乗り気で、補習の合間を縫いながら二人で調査をすることに。


 史家と話し合い、探偵である伏見に頼るという案も出たが、クラスメイトを調査して欲しいと頼んだところで断られそうだという結論に至っていた。


 とはいえ事態は中々動かないまま数日が経ち、転機が訪れることになった。その日はシュミット先生が休みであり、史家の補習が無く放課後を全て調査に使える日だった。


 きっかけは「ちょっとコンビニまで飲み物を買いに行ってくる」と言って外出したきり一時間以上に帰ってこなかった史家が部室に駆け込んできたこと。


「たっ、たっ、た、大変だ! 正多! 大変だ!」

「なんだ、どうした?」

「さっき大事件を目撃しちゃったんだ! 今から過去回想風に説明するから聞いてくれ!」


 ……あれは一時間前。飲み物を買いに行くと言って部室を出たときのこと。


「まてまてまて」


 部室に入ってくるなり過去回想を始めた史家を止める。


「どうした?」

「いや、どうしたじゃないけど。なんだその語り方は」

「いやだから過去回想だって」


 ……喉が渇いた俺はコンビニで飲み物を買おうとした。しかし! 俺の好きなスーパージンジャーガラナが売り切れていたのだ! めちゃくちゃそれを飲みたい気分だった俺は、少し遠いがアパートにある自販機までバスで行くことに……。


「背景描写が無駄に長いな! いつ事件が起こるんだ」

「これから本題なのに」

「じゃあさっさと要件を伝えてくれ」


 史家は少し考えるような動作を取り、息を整えてから真剣な表情で話し始める。


「えーっと要件だけ纏めると、ぐうぜん千崎ミソラを発見した。調査の件もあったから少し尾行したんだけど、怪しいスーツ姿の成人男性と一緒に路地裏に消えていった」

「なんだ、そうなこ……は?」


 さらりと言った内容を正多は必死に頭の中で整理してみるが、それかなりやばい事なのでは、と驚愕してしまう。それはつまり……噂は本当だったのか。


「だから大事件っていっただろ! 俺は気になって、あ、木に擬態した訳じゃなくてな?」

「いいから!」


 冗談を交えようとする史家に怒るように強く言うと、今度は真面目に話す。


「聞き耳を立てた訳なんだが、ミソラは相手のことを『……さん』って呼んでたんだ。つまり家族、父親や兄じゃない。噂からして、これはまずいんじゃないか?」

「いや、まだ親戚とか、あるいは単に年上の彼氏って可能性も……」

「可能性はある。でももし違ったらどうする? 物事は悪い方に考えるべきじゃないか?」


 史家の一言で冷静になる。噂がクラスに広まっている現状を考えれば、怪しいことは疑ってみるしかない。それに事実関係を調べるなら絶好のチャンスだ。


「駅まで行って、千崎さんを探しに行かないと」

「あ、いや、待て。もう十分以上経ってるから、同じ場所に居るかどうかはびみょいぞ」

「うーん。まぁ、どちらにせよ、向かう以外にできることはないし、急いでその場所に行くべきじゃないか?」


 史家は頷いて同意を示す。

 そのまま二人は焦るようにして部室を後にした。最寄りのバス停で琴似駅行きのバスに乗り、ミソラを見かけたという駅前の繁華街に向かった。


「……あれ? そういえば史家は家の近くの自販機に行ったんだよね? そこからなんで繁華街で千崎さんを見かけることになるんだ?」


 繁華街とは琴似駅の南口付近に広がるある商業エリアを指しているが、そこは駅は正多住むのアパートや、史家の住むアパートからは遠く、ふらっと行けるような距離ではない。


「話は最後まで聞くもんだぜ。どこまで話したっけ」

「家の近くの自販機に行くところだ」

「あぁ、そこか……」


 ……ごほん。実は運の悪いことに、アパートに設置されてた自販機は壊れてたんだ! 管理人さんに聞いたらなんでもちょうど今日壊れたらしく、修理業者が来るのは明日だという……。


「相変わらず背景描写が長い」

「っだから、話は最後まで聞けって言ってるだろ! あと少し、あと少しだから!」


 ……ここで問題なのは、スーパージンジャーガラナは売っている場所が限られている点だ。どうやら世間一般での評価は芳しくないらしい。そこで俺は数少ない販売店の一つである琴似駅の売店に向かったのであった……。


「それでわざわざ駅まで行ったと」

「駅のバス停は本数が多いからな。そのまんまバスに乗って学校に戻ろうと考えたわけだ」


 俺だってちゃんと考えてるだ、と史家は自慢げな様子で語る。

 どう考えても費用対効果が悪すぎると思うんだが……と、正多からすればバス代の方がジュース代よりも高いところが気になって仕方なかった。本当に天才なのか疑いたくなってくる。


 そうこうしているうちに、バスは琴似駅に着いた。

 バスを降りた二人は繁華街の一角にある歩行者専用道路を歩いていく。道の両端には商店街のようにコンビニ、大型スーパー、ファミレス、ショッピングモールなどが軒を連ねており、人通りも多い。


「ここでミソラを見かけたんだ」


 史家はショッピングモールの入り口で足を止める。彼が指を指している方向はそこから歩道を挟んで反対側にある大型食品スーパーの隅だった。

 この辺りは繁華街の中でも特に賑わっており昼夜問わず人がいるような場所だ。道の端には幾多もの街灯と監視カメラが並んでおり、怪しい事を行うには向いていないという感想を正多は抱く。


「それで、あっちに移動した」


 進んだ場所は枝分かれした小道の先にあるスーパーの裏手だった。表と同じように歩道があったが、こちらは駅から伸びる高架線路と表に建つ背の高いビルの影も相まって、全体的に薄暗い印象を受ける。


「こっちは怪しい感じがするな。店挟んだだけでこんなに雰囲気変わるなんて」

「来た事ないのか。ここは『高架街』だ」


 正多は興味深そうに辺りの『高架街』を見渡してみる。


 そこは駅から延びる高架線路を天井にして広がったアーケード商店街のような場所で、影を照らすように明るい看板を掲げた店が連なっていた。


 軒を連ねる店は個人経営の小さな店が目立つが、中には馴染み深いコンビニや、ファストフードの店もある。

 時折、開いた自動ドアの向こうから《カーネル・チキンは今年で百周年!》と宣伝する音が聞こえており、思ったよりもアングラという感じはないようだ。


「史家は何の用があってここに来るんだ?」

「故郷の味旭川ラーメンの店があるんだ。で、消えたのは高架街の道を通って、あっちだ」


 史家は店と店に挟まれた位置にある無機質なコンクリートの壁を指さす。その壁はどうやら建物の裏面らしく、室外機や小窓などが並んでいるのが見える。


「この路地、すっごく怪しい感じが漂ってるだろ?」


 路地というのは、壁と隣の店の間にある人が一人やっと通れる程度の細道のことだった。明るい高架街の中にあって、その一点だけはやけに薄暗く、なんとも怪し気な雰囲気を出している。


「確かに怪しい感じがするな……。で、これからどうする。進んでみるのか?」

「進むしかないだろ……怖いけど」


 正多と史家は一度を見合わせた後、路地に足を踏み入れた。

 外から見ても分かるが、路地は建物と建物の影になっているのでジメジメとしている。電灯なども無かったので、二人はそれぞれが持つデバイスのライトで足元を照らしながら進んで行った。

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