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青春!探偵!ひとだすけ部!  作者: 北極鳥ユキ
第Ⅱ話「少女の秘密」
18/23

Part16「ロッテの依頼」

 廊下にロッテの姿はなかった。


 探しながら廊下を歩いていると、向かいから女の子が歩いてくるのが見える。

 もしかしたらロッテを見かけたかもしれない。正多はそう淡い期待を抱いて声を掛けてみることにした。


「ちょっとごめん。この辺でロッテ……えと、ブロンドの二年生を見なかった?」

「見てない」


 少女は素っ気なく返すと正多の横を通り過ぎる。


「そっか……ありがとう」


 振り返って背中に礼を言うが返事はない。少女はそのまま二年生の教室に入っていく。ぜんぜん覚えていなかったが、同級生だったらしい。


 正多はその後も廊下を進んで捜索を続けたが、ロッテは見つからなかった。


 教室戻り少しの間待っていると、昼休みが終わる事には戻ってきていた。

 正多は声を掛けようか迷ったものの、ロッテの周りには心配する彩里たちが集まってきていて、その機会を失ってしまった。


 正多の心配をよそに授業は続いていく。やがて放課後になりいつも通り史家と一緒に部室に向かうと、ほぼ同じタイミングでシュミットも部室にやってきた。


「ロクタチ、少しいいかい」

「あ、先生じゃないですか。はい、腕なら治りましたよ」

「それは良かった。ペンが持てないと困るところだったよ」

「へ?」

「キミ、昨日の英語でまた0点取ったろう。これから補習だ」

「い、いや、なんか腕が痛くなってきたかもぉ……」


 史家はそれ以上、何か言う間もなくシュミットに連行されていく。


「補習っていつ終わるんですか?」


 正多が尋ねると、シュミットは首を横に振る。


「ロクタチ次第さ」


 正多はすぐには終わら無さそうだな、という感想を持ちつつ史家を見送った。


 史家がいないと部室で独りぼっちだが、他に行くアテもない。仕方ないので帰ってくるまでは授業の復習でもしようかな、と正多は鞄に手を伸ばす。


「セータ君。ちょっといいかな」


 そんなタイミングで部室に声が響く。

 視線を向けてみるとドアの隙間から綺麗な碧い瞳が覗き込んでいた。


「ロッテ? どうしたの」

「実はひとだすけ部に依頼したいことがあって」


 がららっと扉が開き、ロッテが入ってくる。

 もしかしたら体調を崩したのかも、なんて心配していたが、ぱっと見る感じはいつもと変わらず元気そうだった。


「あれ、シカ君は?」

「シュミット先生のところ。英語の補習だってさ」


 正多は昼のことを尋ねるべきか一瞬だけ逡巡したが、今はロッテの相談に集中しようと決めて、その内容について訊ねた。


「実はね、人を探して欲しいの」

「それなら俺たちじゃなくて伏見さんの方が適任だと思うけど……」

「ううん。そんなに大それたことじゃなくって、学校に居る子なの。わたしね、その子にお礼を言いたいんだけど、名前が分からなくって困っていて。名前だけでもいいから知りたいんだ」

「なるほど。その子が何年生かとかは分かる?」

「うん。二年生だよ」


 ロッテは正多の予想以上に明瞭な返答をした。

 教室の廊下側の席に座っている女の子で、普段は一人でいることの多い子だそうだ。外見的特徴は、小柄で黒髪のショートボブ。ブレザーの下に着た黒カーディガンとか、厚手の黒タイツとか、黒っぽい色合いの服を好むらしい。


 そこまで聞いて、昼休み中に廊下ですれ違ったあの不愛想な少女が頭をよぎった。どうにも影が薄いというか、あまり印象に残るタイプではなかったが、ロッテの話す特徴とほとんど一致している。


「放課後に声をかけるつもりだったんだけど、タイミングを失っちゃって。だからせめて、名前ぐらいは知っておこうと思ったんだけど、上手くいなくて」

「上手くいかない?」


 正多は言葉の意味が掴めなかった。

 言葉からして、相手については既にある程度は分かっている様だし、お礼を言いに行くだけなのに名前を知る必要があるとは思えない。

 タイミングを失って……というのも、正直言ってよく分からない。同級生なのだから、タイミングなんていくらでもあるはずだ。


「とにかく、名前だけ調べてもらえればいいから、お願いできる?」

「もちろんいいけど」


 内容に戸惑いを覚えたものの、正多は依頼を受けることにした。


 用事があるというロッテが去り、再び一人になる。


「どうやって調査しようかな……」


 安請け合いしたは良いが、調査方法までは考えておらず、正多は頭を捻らせる。

 一番手っ取り早いのは誰かから聞くことだが、知り合いの同級生といえば、ロッテ、史家、大山、彩里……と、片手で数えてまだ指が一本余る数しかいない。


 同じ転校生同士だが、ロッテとは友達の数で天と地との差があるのだ──ん?

 そこで、正多はある違和感に気が付いた。


 ロッテはなぜ頼って来たのだろうか?


 こういう話題はどう考えたって交友関係の狭い転校生ではなく、彩里とかあのグループの誰かしらに「あの子は誰?」と聞けばいいだけのはずだ。


 正多はそこが引っかかったものの、考えても答えは出てこなかった。

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