プロローグ
二人の少年の不思議な出会いと成長の物語です。
(その出会いが私の人生を変えたんです)
モザイクがかかった二十代の女性が自分を地獄から救ってくれたのが恩師だと言っている。
「……覚醒剤で捕まって社会復帰したって?ダサっ」
彼女が自分自身で這い出せない事が健月には不思議だった。人に頼ってばかりは嫌じゃないのかとイラついてテレビを消す。
(人生は出会いだ……なんて言うけれど出会いなんて言葉今時使うか?)
SNSで知り合って知らない相手と遊ぶ時代に出会いなんてないと十四の彼は思っていた。
毎日ただ学校に通い、友人と話し塾にも行かない帰宅部の彼は帰るか、カラオケに行くか、コンビニで立ち読みするか、ゲームか。つまらない日々だと感じていた――その日まで。
創立記念日で学校は休み。
行くとこもない彼は五月にしては蒸し暑いその日、家の一番涼しいリビングでソファに腹ばいになりスマホで漫画を読んでいた。そこに母親からのLINE。『健月くーん、スーパーでマカロニ買っといて』『いやだ。面倒臭い』『アイス買っていいから』
「……マジでイヤなんだけどけど仕方ないか」 と、リビングボードの引き出しに入っている財布を持って外に出た。
(どうせまたマカロニサラダ作る気だ。僕はポテトサラダの方が好きなんだけどな)
彼の家は昔から表参道と交わる交差点の裏、北青山にあって、喧騒からそう遠くない。友人はほとんど地元の中学に通い、彼は電車で私立の中高大一貫校に通っていた。