さらば屈辱の城
しばらくは
近くを通る事さえ 嫌な気分だった
3ヶ月かそこらで 逃げるように辞めた職場
色々あって 耐えきれなくなっても
俺は悪くないと いつもそう言い聞かせてきた
職場仲間の視線や叱責
親からの過大な期待にうんざりしていたから
新しい仕事の途中で 通りかかった昔の職場は
客の送迎で 駐車場に職員総出の真っ最中
表向き
安全運転を理由にスピードを落としながら
職員の顔をそれとなく眺めた
ひとりも残っていなかった
昔の職場仲間は
ひとりも残っていなかった
ああ良かった 安心したよ
散々俺をコケにした奴らも
結局 耐えきれない職場だったんだ
この職場の 本当に悪い所がどこなのか
はっきりしたんだ
お前たち 安心しろよ
お前たちの仕事を辞めたい その気持ちは
何も間違っちゃいないんだ
ぶっ壊れちまうその前に 逃げちまえよ
さらば屈辱の城 さらば屈辱の刻
俺は逃げるぜこんな所
でも 分かっているんだ
このまま
逃げたままではいられないとね
もっとマシな 新しい城に住んでみせる
明日から城探しだ
それが俺の責任
俺が生きていく条件
みんな そこだけは忘れないでくれ
自分を守る口実に 多くのものを失い過ぎると
生きていても虚しいと気づく