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1章 不死の男 1−0 発端 1−1 謁見の間控室

僕、ホロは成人となった16歳の歳、故郷に呼び戻される。

そこで急に王位の継承と臣下への挨拶をすることになったが。


 そもそもが、不運だった。

 この大陸でも血統による君主制より共和制が広く浸透して久しい、半分以上の国が共和制にとって代わっている。この国は代々ヒューマレース(現代人に最も近い種族)と呼ばれる種族を大事にし、血統によって王位を継承してきた。生まれたのは三人の子。それも全員が男。これは後々の内乱の種になると、次兄と、末っ子であるホロは素性を周りに隠したまま地方の有力者の手伝いに出された。それも、読み書きと計算ができるようになった7歳の頃である。その後長兄が戦争で負傷し病気で死に、次兄が首都に呼び戻された。次兄も病気で死に、王も病気にかかり、末っ子であるホロが呼び戻されたのは僅か二日前のことであった。

 ホロは南の都市の有力な豪商に手伝いとして出されていた。手伝いと言っても、給金も一切出ない、屋根と食事と衣服が与えられる、住み込みの使用人の立場だ。豪商は元々王家に出入りの商人でもあったが、ホロは自分が取り次いでは、兄に目を付けられるだろうと、交渉の場には出なかった。

 ダアトは豪商が中原の教会にある孤児院から引き取った養子で、素性を隠していたホロよりも上の立場だ。ダアトが商才を示したのは15歳で、豪商はそれを大変喜び、王都との調整役に3年間、ダアトを立てた。ダアトは首都の司政官とのやり取りの中で、18歳になった時は見違えるほどに成長した。

 ダアトと王は何度も顔を合わせ、その実力をお互い知っている。が王とホロの面識はほとんど無いに等しい。

 ホロは16歳で首都に呼び戻された。


 王城の謁見の間、それほど豪華ではない。控室は十二畳ほど、僕はダアトと女性の使用人に正装を着るのを手伝ってもらっている。部屋にはいくつもの衣装がかけられている他、玉石を飾る棚がいくつもある。といっても、棚を開いても大したものが置いてないことを知っている。


「今からでも継承を放棄して逃げようよ。パパのところに帰ろう。」


 真顔で言うのはダアトだ。


「今でも王都の資材部とは繋がりがあるし、パパのとこに帰っても食べるには困らないよきっと。」


 僕は唸る。


「なんでそういうこと言うんだよ。これから王位を継承して、国を盛り上げていこうっていう僕にだよ?王城が混乱している時にこそ、誰かがビシッと舵を切らないと、周辺の国に攻め入られちゃうよ。ねえ、そこの」


 使用人の名前を聞くと、マースと言った。マースはロングスカートの白と黒の従者の服を着ている。


「どう思う?こう言う時はもっと盛り上がることを言ってくれてもいいと思わない?」


 マースは困った顔をした。


「私は、意見などは。」


 彼女の顔には、「なんで私に振るの?」という迷惑そうな表情が見てとれた。


 ホロに与すればダアトが立たず、ダアトに与すれば、ホロが立たない。彼女は露骨に話を逸らす。


「でも、ダアト様はずっと着付けを手伝ってくれているじゃ無いですか。そばにいてお互い支えあっているのですから、どう振る舞っても上手くいきますわ。」


「そういうこと聞いてるんじゃ無いんだけどなぁ」


 僕は肩も袖も長すぎて合わない正装も気に入らない。ぶかぶかのウェストのベルトも、捲り上げた裾も。


「だいたいさぁ、服が大きすぎるよ。なんかもっと小さいサイズ無いの?別にこれって決まってるわけではないんでしょ?」


 ローブの裾が長くて鬱陶しい。僕のぼやきは止まらない。


「戴冠の儀がありますので、この正装でなくてはならないのです。どうしても日程が急で詰めが間に合わず、申し訳ありませんがご容赦願います。」


 出来上がって鏡を見てみると、僕はいよいよ不機嫌になった。


 もともとが父王のアランと違って小柄な僕が正装を着ると、何とも子供が無理しているようにしか見えない。


 笑いを堪えているダアト。マースがフォローしようとして、手を打って


「まあ、よくお似合いですよ、陛下」


 と言ったが、逆効果だ。


「似合ってないよ。」


 時間が来て、とにかくその姿で臣下の前に出ることになった。控室の袖から謁見の間を覗く。


 正面に三段の段、玉座と王妃の座があり、その後ろに旗が三つ、天秤の旗とこの国の国旗、鹿の角を模った国旗が飾られている。もう一つは宗主国ストラスの獅子の旗。中央に意匠を凝らした槍と鍬そして鏡。この国の象徴だ。


 段を三つ降ると十二の柱が並んでいる。左右にそれぞれ5つずつ。それぞれに意匠を凝らした蝋燭立てが4本ずつ灯してあり部屋を照らしてある。その前にそれぞれ、右に二十人、左に二十人、右手に武官と左手に文官だったはずだ。知っている顔は無いかと見てみるが、謁見の間は光量が調整され薄暗くなっていて見にくい。蝋燭が逆光になっている。それに、七歳の頃の記憶から時が経ちすぎてるように思う。


 が、右手の先頭の一人だけ思い出した。金髪長身に白い肌、彫りの深い顔、切長の目、子供の頃に散々厳しく手ほどきを受けたセバン大元帥だ。この国で二十年武官と文官の取りまとめてをしている。


 見つけなければ良かった、喉が鳴り、背筋が伸びた。流石に緊張する。


 が、腹を括って出ていくしかないと進み出た。臣下の囁き声が聞こえる。背中の汗が止まらない。顔が引き攣る。


 セバンに目がいったが、彼は目を伏せ黙礼していた。


 そして三歩目で、ホロは裾を踏んでこけた。


 慌てて顔を上げるが、それが良く無かった。ホロの赤くなった鼻から鼻血が垂れた。


 謁見の間は笑い声に包まれた。


 ダアトとセバンは片手を頭にやって頭を振った。


「(どうしてこうなるの。)」


 ぼやきは止まらない。

ホロ:主人公 16歳 ヒューマレース 天然パーマのモジャモジャ明るい髪、身長165程度 眠そうな二重の目

ダアト:18歳(?) ストーンレース ホロの婚約者 石質の褐色の肌を持つ 銀髪が肩まで 身長165程度

マース:38歳 ヒューマレース 王宮の使用人 肩までの黒髪をポニーテールにした女性 身長150後半

セバン:50歳 ヒューマレース ロノウェの大元帥 ホロが幼い頃の敎育係 肩までの髪を中分け 身長180後半 

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