0 プロローグ 0−0導入 0−1この大陸について
亀の形をした大陸の中、小国ロノウェの王に呼ばれて、三男ホロは首都に戻る。
いきなり国を継ぐことになるホロだが、周りはストレンジャーと呼ばれる奇跡の力を要する国に囲まれていた。
小国ロノウェとホロの運命はいかに。
ホロ:主人公 16歳 ヒューマレース 天然パーマのモジャモジャ明るい髪、身長165程度 眠そうな二重の目
アラン:46歳 ヒューマレース ロノウェ国王 明るい髪オールバック 身長2メートル強 鋭い目
リーチ:65歳 ヒューマレース 医師 白髪 曲った腰 猜疑心の強い眉 目
ダアト:18歳(?) ストーンレース ホロの婚約者 石質の褐色の肌を持つ 銀髪が肩まで 身長165程度
1人の王が、今死の際にあった。
国の名前はロノウェ。王の名前はアラン。
六十代で髪は金金としていて、身長二メートルはある、肩幅も広い。医療室と呼ぶには簡易すぎるその部屋は、王の体に対して小さすぎる感じもする。レンガ作りに小さい暖炉、小さい窓に二重ガラスの窓がついている。採光の窓意外に光源は無い。中央にベッド、頭の左右の側に暖色の引き出し台が二つ、それぞれの上に天秤が飾られている。実用ではなく、宗教的な意味合いだ。王の肌着は麻だろうか、着色されていない薄茶色の簡素な肌着で横たわっている。その上に質素な羊毛の布団がかけられている。
王のすぐ横に三人の姿があった。
一人は白髪の医者だった。身長は百五十センチ程しかない、65歳は超えた、老人だった。王の左側で唇を噛み締め、険しい顔で王の顔を見つめている。
一人は銀髪で浅黒い肌の少女だった。身長は百六十センチ程で肌のところどころに石質の輝きがある。王の右手を両手で握りしめ、祈りの言葉を捧げている。
一人は王と同じ金髪の少年だった。が、王と比べるとその体はとても小さい。身長は百七十センチ程で毛が癖で巻いている。両手を握りしめて涙を流している。
王が声をかける。
「名医リーチよ、感謝するぞ。お前の技術と薬は素晴らしい。」
リーチと呼ばれた医師は、首を横に振る。
「私の力及ばず、患者を死なせては、何が名医か。」
「皆まで言うな。リーチよ、私の最後の願いだ。お前の技術と薬を伝えるために、もっと弟子を取れ、弟子を育てよ。人嫌いなことはよく知っているが、このまま一代で絶えさせては、国益を大きく損なう。」
その賛辞にリーチは奥歯を噛み締め頷くと、王の左手を力強く握った。
王は満足そうに頷いた。
王は右側の少女に振り向いた。彼女は明らかにこの中で別種族だ。ストーンレースと呼ばれる、この国には珍しい種族だが、王は殊更にこの少女に不自由が無いように気をかけていた。
「私の義娘になるダアトよ、お前と息子との婚約が、私にとってどれほど嬉しかったことか、お前は知るまい。」
ダアトと呼ばれた少女は涙をこぼしながら顔を上げ、気丈に笑った。
「いいえ、お義父様こそ知りません、ストーンレースの私を蔑むどころか快く受け入れていただいたときの、私の心の安寧を。」
王は顔を歪めなんとか笑おうとした。
「ダアトよ、お前の心遣いはいつも身に沁みる。それだけではない、商才があり、貴金属やレンズを使った工芸品のストラス国への輸出など、私は考えもしなかった。手先が器用で、お前の持ってくるものはいつも私を驚かせた。お前は美しく、聡明で、まさに自慢の義娘だ。お前にこそ、王位を譲りたい。それほどの気持ちであった。」
最大の賛辞に等しい。
ダアトは、泣き崩れるのを我慢して、涙を流しながら笑っている。
王は最後に少年を見上げた。
「私の最後の息子ホロよ、顔を上げよ。」
ホロ、自分の名前だ。顔を上げる。
「あー、ホロよ、お前は治水に長けた長兄とも違い、天才と言われた次兄とも違い、あーうん」
「(あれ、もしかしてディスられている?)」
涙が引くのを感じた。
「お前には突出しものは無いが、うん、突出してはいないが」
「(そこ、言い切るんだ)」
王も思案したが、言葉が浮かばない。
「ホロよ・・・」
王はそこで諦め、目を閉じた。
手の力が抜け、リーチとダアトの手から滑り落ちた。
今まで涙声を堪えていたダアトが叫んだ。
「お義父様ーーー!」
ダアトが泣き崩れる。
俺は若干もやもやしながら、空気を読んで
「親父ーーーー!」
と叫んで突っ伏した。涙は出なかった。
余談 この大陸について
一ヶ月が二十一日から二十二日で、一年は十六ヶ月から十七ヶ月。毎月十一日はこの大陸で祝日に定められている。一月から八月までは夏季、九月から十七月までは冬季。十六月から始まる雨季は、地域によっては三月から四月まで続くこともある。
大陸は中央に、大陸を南北に分ける巨大な大河が流れている。
二つの太陽が東と南から登り、東と南に沈む。沈むと四つの月が北の空に浮かび上がる。