―序章―
男が苦手な方は
「回れーっ!右っ!!」
ですね。
―――オレの中で彼女が消えて行くのが判った。
オレの魂に彼女の魂が喰われて行くのが・・・
オレが彼女を喰ったんだ。たった一人のオレの妻を・・・
でも何故?何故彼女の魂がオレの肉体に転生した・・・・?
目を覚ますと、その疑問は解消された。でもオレは信じたくなかった、理解するのに時間がかかった、目の前に広がる光景に我が目を疑った。
「あ・・・れは・・?オレ・・・?」
ぱちぱちと音を立てながら燃え滾る暖炉の前で長い金髪を一本の三つ編みにまとめた男がうつ伏せになっている、オレだ。
その横には、オレの忠実な家来にして無二の親友である“ミオ・リオル”は放心気味に息切れしていた。かなり力を使ったように見えた。
それより、オレの大切な人の姿が無い。リオルに呼び出され、オレとシェリルはこの部屋でリオルの話を聞くことになって・・・それから・・・・、・・・・・・・。記憶がない。
オレは身体を起き上がらせ、起こった事をリオルに聞きたかった、だけど・・・身体の異変に気付いた。
ずくん、と下っ腹に広がった鈍い痛み、自分のものとは違う細く白い腕、白い首ネックのシャツに赤のロングスカートまた、細く白い脚は裸足だ。
この服・・・
「シェリル・・・・・・?」
声も、脚も、腕も、手も、顔も、髪も、匂いも、全てシェリルの物。
オレノ妻ノモノ。
シェリルの魂は転生してなくて、オレノ魂がシェリルの肉体に転生した・・・?のか?
こんな事ができるのは・・・。
「アリス様・・・!」
「リオル・・・!!」
途轍もない怒りがこみ上げてきた。生きている人物の魂を他の人物の肉体に無理やり転生させることは決して簡単な事じゃない高度な転生術が必要だ。こんな技術を持つのはアイツしかいないっ
シェリルの肉体には新しい命が宿っている。
―オレトノ子デハナク―
コイツは気を失って眠っているシェリルを抱いたのかっ!!
―奴トノ子―
「・・・・ぜっ、何故こんな事をっ!!!怨むっ!怨むぞっリオル!!!」
親友の裏切りと愛しいものをなくした痛みでごちゃ混ぜになって目から涙が流れた。
止まらない。涙も、憎悪も、憎しみも、愛しさも、何もかもっっ!!!
「違うっ!私が・・・俺が愛したのはっっ」
「もういいっ!!お前がこんな男だったとわなっ失望した!!こんな事が続くくらいならオレは今すぐ記憶を消し、命を絶つっ!!」
「アリス様・・・・。っ俺が愛したのはアリス、貴方だっ!!!」
「っ!?」
家来の、親友の、衝撃的な告白。オレは動揺した。でも、その同様は怒りに掻き消された。
「今更そんな言い訳に絆されるオレだと思うなっ!!!」
オレは無理やりシェリルの肉体と自分の魂を引き剥がした。それと同時に、今までの記憶全てを“世界”に飛び散らせた。光り輝く力と共に・・・
その瞬間、オレの意識は・・・そのまま深く深く沈みこんでいった・・・・二度と目覚めることのないように・・・・・・。―――