まあ、書いていくうちに考える的なノリです
京都市。左京区。
出町柳の駅から電車に乗ろうと、切符を買おうとしたら、隣の券売機からドロンと妖精が出てきた。
へっ?としていると
「あなたは驚いているからものが言えないんじゃないのよ」
と語りかけてきた。
語りかける間、妖精の方から薄い黄色い光と空色の花びらがいくつか出た。
(これはやっぱり、ほんとに、妖精かも)
そう思ったとたん
「私は妖精ではないわよ」
また出た。光と花びら。
妖精はくくくと笑うと
「私は、コイコイ。まあ、おいおい分かるわ。ほらほら切符を買いなさいよ」
あ、切符切符。はた、と思い出して、切符を買おうとした。
しかし、どこへ行くのか忘れてしまったみたいで、行き先が分からない。
え?どこへ行くんだったっけ。
「終着駅までよ」
終着駅。あ、終点か。終点は、大阪の淀屋橋・・・あれ?淀屋橋がない。
上の路線図を見てびっくり。駅名が全て変わってしまってる。
出町柳駅の次は丸太町だったはず。<悪役令嬢>駅?なんじゃそりゃ。
「ケイイチ。あなたはこれから私と旅に出ないといけないのよ」
左側からまた光と花びらが降り注いできたが、それどころではない。
京阪電鉄の駅名が全部変わっている!小説家になろうのキーワードのような駅名に。
なんなんだ?・・・そもそも僕はなぜここにいるんだっけ?
「ケイイチ、あなたは自分の声を取り戻すために旅に出るのよ。そのために、ここにいるのよ」
なんのこっちゃ。
妖精、いや、コイコイさんの方を見た。
妖精じゃない、と。コイコイだと。で、コイコイって何だろ。
ぱっと見、高校生くらいに見えるが、そうではないだろう。
リクルートスーツみたいな濃紺のジャケットにチェックのスカート。
白いブラウスに、胸元の紅色のリボン。
白い靴下にピカピカの黒い女子革靴。
しかし高校生女子ではない。目つきが違う。
そう思った瞬間、コイコイさんは目つきを変えてきた。
これは内緒だよ、の視線だ。いわないよ、の口元だ。
(えっと、旅って、大阪まででしょ)
「ケイイチ、あなたはまだ自分がどうなっているかさえわかっていないでしょ」
そういえば、そうだ。僕は、どうしてここで切符を買おうとしてたんだっけ。
「そもそも、いまどき、切符を買ったりしないでしょ。あなたは今までICOCAでさっと行ってたじゃない」
ほんとうだ。どうして切符なんか買おうとしてたんだろう。
「ここであなたは私と結婚しなければならないのよ」
(結婚?)
「そう。結婚。結婚して、あなたの声を取り戻す旅に出るのよ」
もう、なんのことか全くわからない。
「いい?選択肢は二つだけ。私と結婚して、声を取り戻すか、このまま正座して何十年でも待つかよ」
(え?何を待つの?)
「制限時間を過ぎると強制的に第三の選択肢か第四の選択肢が選ばれてしまうわ」
(え?二択じゃなかったの?)
「さ、さ、どうするの?」
コイコイさんは、にこっとはかけ離れた微笑みを浮かべた。