エリザベート・ノイズ有罪になる
行方不明だった3人が、無事に発見された翌日、国の重鎮たちが城の会議室に集まっていた。
そこには、ウィリアム、リアム、アルベール、そして、聖女ロリエッタの姿もあった。
「聖女ロリエッタ、息子ウィリアムを助けてくれたこと心から感謝する」
国王陛下はロリエッタに感謝の気持ちを伝えた。
「ウィリアム殿下や皆さまを見つけた時は、私も心が震えました。発見した皆様を、私の聖女の『力』で治癒できましたことを、嬉しく思います」
ロリエッタは答えた。
白いドレスに身を包んで話すロリエッタの美しさに、会議に参加している者達は息をのんだ。
ウィリアムは熱い眼差しでロリエッタを見つめている。
「聖女様とウィリアム殿下は、王都学園のクラスメイトだそうですよ」
「なるほど・・それで・・聖女様を見る殿下の熱い眼差し。若い者は良いですな」
「お似合いのお二人ではありませんか」
出席している重鎮達が囁き合う。
国王陛下は、聖女ロリエッタと、彼女を見つめる息子の様子を黙って見てる。
今日、重鎮たちが集まったのは、王太子ウィリアム達を誘拐した犯人を捕まえるためだった。
魔法騎士団や捜索隊が人々に聞き込みをした結果はすべて、エリザベート・ノイズ公爵令嬢を指していた。
以前、このメンバーの中で娘の無罪を主張していたアフレイド・ノイズ公爵が、今日この場で娘の罪を認めたのだ。
「残念ながら、娘エリザベートの無罪を証明することが出来なかった」
アフレイドはそう言った。
「私が調べた結果、ウィリアム殿下、息子リアム、そして、アルベール・ロレーヌ辺境伯子息を誘拐監禁していたのは、『黒魔術の書』に書かれている黒の魔女だとわかった。
しかし、残念ながら、彼女の居場所は分からない。
数々の状況証拠から、3名は行方不明になる直前まで、エリザベートと一緒であったことは分かっている。
娘エリザベートが黒の魔女と繋がっていて、彼らを黒の魔女バディーの元に連れて行ったのは明白である」
集まっている人々の前でアフレイドが言った。
重鎮たちは驚きで騒ついている。アルベールやウィリアムも大きく目を見開いてアフレイドを見ている。
その中で、聖女ロリエッタはクスリと小さく笑って彼を見ていた。
「黒の魔女と繋がっている者は処刑しなければならない。それが、たとえ、我が娘であろうとも」
このアフレイドの発言を聞いて、その場は静まり返った。さらに彼の話は続く。
「ここで忘れてはいけないのが、娘エリザベートがヴァイオレットの聖女であると言うことです。
娘が本気になれば、我々が束になってかかっても捕らえる事はできない。ヴァイオレットの聖女の魔力はそれほど膨大なのです」
「エリザベート様は本当にヴァイオレットの聖女なのですか?」
ロリエッタが尋ねた。
「はい。あの子が生まれた時にレティシア様から伺いました」
アフレイドの言葉を聞いて、ロリエッタは一瞬、悔しげな表情を浮かべた。
アフレイドの話はさらに続く。
「ヴァイオレットの聖女を捕らえる方法を調べました。悪に染まったヴァイオレットの聖女は、黒の魔女と同じくらい、やっかいな存在だと書いてありました」
アフレイドの話を受けて、リアムが続ける。
「大聖者様が持っている『白魔術の書』に、悪に染まったヴァイオレットの聖女を『灰』に帰す方法が書いてあったのです。
悪に染まったヴァイオレットの聖女と黒の魔女を『灰』に帰さなければ、このような事件は無くならないです」
それを聞いて聖女ロリエッタが呟いた。
「『悪に染まったヴァイオレットの聖女』エリザベート様がそんなに恐ろしい存在だったなんて・・」
ロリエッタの言葉が、静まり返った会議室に静かに響く。
「黒の魔女は『黒魔術の書』に書かれているだけの存在かもしれません。実際に見た人はいないのですから。
もしかしたら首謀者は闇の精霊かも知れませんわ。彼はエリザベート様と繋がっていますもの」
このロリエッタの発言にアフレイドが答えた。
「それもエリザベートを捕らえれば分かること」
それを聞いてロリエッタは頷いた。
そして、その後の話し合いの結果、エリザベートを刺激しない為に、今は彼女の有罪を発表しない事が決まった。
国から渡された魔法封じのブレスレットをしている彼女が、この会議の情報を得ることはない。
最終的に今日の会議で決まったことは
卒業パーティーの日に、エリザベート公爵令嬢を誘拐監禁した犯人の共犯者であると確定する。
そして、『白魔術の書』に書いてある『悪に染まったヴァイオレットの聖女を灰に帰す砲弾』を彼女に使用する。
これは、ヴァイオレットの聖女エリザベート・ノイズの処刑の決定を意味していた。
「エリザベート様は明後日の卒業パーティーで、処刑されてしまうのですね」
(やっと、あの邪魔な女がいなくなる)
ハンカチを口にあてて、聖女ロリエッタは笑いを押し殺した。
王都学園卒業パーティーは後数日に迫っていた。
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