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本当の最有力婚約者候補

前世を思い出した日からはや8年。私は13歳になりドリミア学園に入学した。


お兄さまは約束どおり家出をする事なく、今年から王都学園の男子寮に入っている。

お母さまもとってもお元気だ。


ドリミア王国の王都に屋敷を構える貴族の子女の殆どが、13歳から15歳まで自分の屋敷からこの学園に通い、卒業後その殆どの生徒が王都学園に入学して、学生寮に入る。


ドリミア学園は貴族の子女の学園だけれど、王都学園は、学力と魔力がある者なら、平民でも入学する事が出来る。


そもそも魔力を持っているのは昔から貴族だけだ。だから魔力を持つ平民の殆どは、いつの時代かの貴族の落としだねの流れを組んでいるか、没落していった貴族の血筋だと考えられる。


王都学園では入学式の後、全生徒の魔力属性と魔力の強さを測定して、学力とのバランスを考慮したクラス分けが行われる。

今年入学したお兄さまは、特別クラスのA組だと聞いている。さすがです。


乙女ゲーム『王国の聖女ロリエッタ』は、ヒロインが王都学園に入学した日から始まる。


ヒロインのロリエッタは、孤児で教会が経営する施設で暮らしていた。子どもに恵まれなかった男爵夫婦が、チャリティーで教会を訪れた時に出会い養女にする。


ゲームのスタートの日まで、あと3年。

まだもうしばらく時間がある。


この8年の間にウィリアム殿下はブロンドの髪がサラリと流れ、ブルーの瞳が魅力的な青年に成長した。そんなウィリ様と常に一緒にいるのは、側近のブラウン伯爵家のエドモンドさまだ。

彼は国王陛下の親衛副隊長の息子。

ちなみに隊長は私のお父さまだ。


ゲームの中のエドモンド・ブラウンは、ヒロインに心酔して自分の婚約を破棄する。そして彼は卒業パーティーの婚約破棄事件の時には、王太子のウィリアム殿下と一緒に、意気揚々とエリザベートを糾弾していた。

そして彼もゲームの中の攻略対象者だ。 


けれど、今の彼とは、私がウィリアム殿下のカモフラージュ最有力婚約者候補になってからの知り合いで、ウィリ様と同じく幼馴染みたいなものだ。


「この学園には別に不満はないけれど。食事はあれだよなあ。前評判が良かったから期待していたんだけど、ガッカリだったなあ。」


「あら、エドもですの?私もですわ。食堂のランチが美味しい事がこの学園の自慢の一つだと、入学式で学園長が言っておられましたでしょ?私、それを伺って、楽しみにして毎日かよいましたの。けれどダメでしたわ。数日しか続きませんでしたの。ここの食事が私の口には合わない事が判明しただけでしたわ。


私は入学したばかりの1年生ですし、文句は言えませんので、最近は、我が家のシェフに食事を届けてもらっていますの。明日からエドも一緒にどうですか?もちろん、ウィリ様も一緒に。」


今日もこんな会話をするくらいには、打ち解けた間柄だ。エドはゲームのイメージよりも明るくて楽しい。


幼い頃、とっても疲れた様子のエドに『美味しい物を食べてゆっくり眠ったら、元気の補充が出来きますよ。』と伝えた事があった。心配していたけれど最近は大丈夫のようね。良かった。


ゲームの中のブラウン伯爵は、幼い頃からよく出来た一人息子のエドモンドに、多大な期待を寄せていた。

将来は王家の重鎮になれるようにと、勉学、魔術、剣術、など多種多様な家庭教師を雇っていた。


そんな父の期待は重く、エドモンドは疲れていった。


そんな時、彼の前に現れたのがヒロインだった。彼はロリエッタの光魔法に癒されて、婚約者を顧みなくなるほど、彼女に心酔していく。


「好きなことは夢中になってやるから上手になるのです。無理をして疲れを引きずって頑張るのはダメです。楽しみながら行うから良いのです。」


前にお母様がそう言っておられたわ。

勉強ならウィリ様と一緒に家庭教師の先生としているのだから、それで充分だと思うわ。


確かに好きな魔法学なら、ずっとしていても飽きないわ。詰め込み過ぎてはいけないわ。


エド。

疲れ切る前に休んで下さいね。

頑張り過ぎはダメですよ。


・・・・・


トップシークレットなんですけれど、実はウィリ様の本物の婚約予定者は実はもう決まっているんです。


隣国の第一王女アントワーズ。クルクル巻き毛で髪の色は落ち着いたダークブラウンの私の従姉妹。

もし、ウィリアム殿下が私の夢に見た神託の通り(実際には前世でハマっていたゲームの内容なのだけれど)、『真実の愛』の相手を卒業パーティーに連れて来れば、アントワーズとの婚約の話は無かった事になる。


私がカモフラージュ最有力婚約者候補になった過程を、アミルダ王国側も知っている。私がアントワーズに直接話したからだ。それでもこの婚約を承諾したのは、この従姉妹が好奇心を押さえられなかったからに他ならない。


「エリザお姉さま。ウィリアム殿下は本当に真実の愛を見つけるのかしら?どうしましょ。ドキドキ、ワクワクしてしまいます。本当は婚約破棄される方がドラマティックなのに。ちょっと残念です。」


そう言っていたアントワーズだったが、その後ウィリ様に会って一目惚れ。


「ウィリさま。可愛いです。」


どちらが年上かわからないような過保護ぶり。変装して2人で買い物に行ったり、お昼を食べに行ったり。楽しい時を過ごしている。アントワーズの行動力には恐れ入る。護衛している者達も、少し距離を置きながら見守ってくれている。


そして好青年に成長したと言っても、ウィリ様はやっぱりウィリ様。相変わらずの呑気さで、髪型や普段着はアントワーズに勧められるまま。


「アントワーズは僕にはこの髪型が似合うと言うんだ。次に美容師が来たらこの絵を見せるよ。彼女はなかなか絵が上手い。」


ウィリ様が、普段とは雰囲気が違う装いで学園に来られて、女生徒達が騒いでいた日


「ウィリ様、今日はなんだか感じが違いますわ。そのお洋服も素敵ですね。」


と口に出して褒めると 


「この服はアントワーズのお勧めなんだ。エリザに褒めてもらえるなんて、嬉しいな。これもアントワーズのおかげだ。」


あまりにも嬉しそうに仰るので


「ウィリ様、アントワーズを紹介した私に感謝してます?」


からかい半分にそう言ってみたら、ウィリ様は青い瞳を優しく細め頷く。


「感謝しているよ。だからエリザにも早くいい人を見つけて欲しいよ。僕らだけがこんなに幸せなのが申し訳ないから。」


2人の仲は順調だ。 

私の事はいいのです。


このウィリアム殿下がヒロインに恋をする?


なんだか無理がある気がします。

でもゲームの強制力が発動するのかも?

心配ですが、まだ、始まっていません。

今は見守るしかありません。


2人の正式な婚約発表は、ウィリ様や私達の王都学園の卒業パーティーの時に行う予定になっている。


それまではアントワーズを守るために、カモフラージュ最有力婚約者候補のままでいて欲しいと、両王家から頼まれている。お父様とお母様も承知している。


せっかくなので私はこの立場を楽しませて頂いている。


ワクワクドキドキ

ゲームはまだ始まってもおりません。

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