リアムへの応援要請
もうすぐドリミア城で聖女ロリエッタのお披露目パーティーが催される。
ゲームの内容より2年も早く、アミルダ王国に『瘴気』が発生してしまった。だからロリエッタは焦って、ゲームにはなかった『聖女のお披露目パーティー』というイベントを作ったのだ。
『王国の聖女ロリエッタ』の中では、卒業パーティーでエリザベートに婚約破棄を言い渡すイベントが終わった直後に、国内に瘴気が発生したという知らせが入る。
その時、パーティー会場にいた魔法騎士団の隊員に願い出て、瞬間移動でその場所に飛んだロリエッタが、全ての瘴気を浄化して魔物が現れるのを食い止める。
「聖女ロリエッタ、其方は我が国の救世主だ。息子、ウィリアムとの仲を認めよう」
瘴気を全て浄化した後で、再び、魔法騎士団の瞬間移動でパーティー会場に戻ってきたロリエッタに、国王陛下はそう言うのだ。
その後、アフレイドが国王に進言して、エリザベートに国外追放が言い渡される。
(こんなに早く瘴気が発生してしまったら、計画が狂ってしまうわ。ドリミア王国に瘴気が発生している間に、婚約破棄をする為のパーティーを行わなければ!)
それなのに、1番大きな問題が解決していなかった。
「エリザベートに婚約破棄を言い渡すにも、ウィリアム殿下がいないわ」
そう。肝心のウィリ様がアミルダ王国に留学してしまっているのだ。
「任せておけ」
ドルマンは怪しげに笑った。
この男のせいでドリミア城は変わった。宰相のデイビス・ブルーノはロリエッタの崇拝者。
教会の神父ルタールも同じだ。彼は女神を崇拝するようにロリエッタを崇拝している。
ドルマンは、この2人の心に忍び込んで、国王への不満を煽り、不信感を植え付けた。そして自分やロリエッタの言いなりに動くように仕向けていったのだ。
国王夫妻は一見大切にされているように見えるけれど、実はいつも監視されている。
国の祭りごとは全て、宰相のデイビスが中心になって執り行うように変えられていた。
ドルマンは闇魔法の使い手だ。城で働く人々に軽く闇魔法をかけて不安を煽っていく。
「お嬢、出番だ」
「わかったわ」
ロリエッタは城で働く人々の前で祈った。
大広間で彼女が仰々しく祈りをささげる。
そして人々の手を取り、光魔法を使う。
すると光が人々を包み、城で働く人々の周りに取り憑いていた黒い靄がサッと消え、人々の不安は取り除かれる。
「聖女さま!」
「聖女さま!」
まるで詐欺のようなこのパフォーマンスを、何度も繰り返して、ロリエッタは聖女としての信用を、勝ち取っていったのだ。
このパフォーマンスを続ける中で、ドルマンはロリエッタに気付かれないように、闇の使い手をどんどん城に招き入れていた。
彼はこのドリミア城を、闇魔法の使い手のアジト(隠れ家)にしようと考えていた。
そしてこの王都を、昔のフェナンシル伯爵領のようにしようと目論んでいた。
ドルマンにも1度めの記憶はあったが、彼はそれを1度めの記憶だとは知らなかった。
1度めはマーガレットを事故に見せかけて殺めた後、アフレイドによって処刑される。その事を彼は覚えていなかった。
覚えているのは、エリザベートとウィリアム王太子殿下の婚約式を覗き見たこと。
だからドルマンは、ウィリアム殿下とエリザベートは婚約していると思っている。
ロリエッタに言われて、ドルマンは自分の顔を少し触った。すると彼の顔がウィリアム殿下に変わった。
「お嬢、これでどうだ」
ウィリアム殿下の顔をしたドルマンを見て、ロリエッタはニッコリと笑った。
「さすがドルマンだわ!」
こうして、城では着々とお披露目パーティーの準備が整っていった。
その頃、エリザベートはノイズ家の屋敷で兄リアムの話を聞いていた。
「エリザ、僕はパーティーに行けなくなった」
「お兄様?」
「レティシア様から連絡があったんだ。異世界から現れた魔物の数が思っていたよりも多く、父上が苦戦しておられるようだ。助けに行かなければ!」
それを聞いてエリザの顔色が変わる。
「エリザ、大丈夫だ。父上が苦戦を強いられているから、僕に応援に来て欲しいと連絡が入っただけだ。父上はご無事だ」
良かった。
「レティシア様は着々と瘴気を浄化しておられるようだ。ただ、魔物の数が1度目とは比べものにならないくらい多いらしい。
エリザ、お前を1人にしてしまう。パーティーには、体調不良で不参加にする事も出来るよ?」
心配そうなお兄様の声。でも私は大丈夫だった。ポケットにミールもいる。どこかで精霊王カイも見ていてくれるだろう。
それに、ロリエッタの近くではアルベールも頑張っている。
「私は大丈夫です。お兄様、お父様を助けてあげて。そして必ず無事に戻って来ると約束して下さい」
「ああ、必ず無事に帰って来るよ。約束する。お前も無理をするんじゃないよ。エリザベート。じゃあ行ってくる」
そう言った後、リアムはアフレイド達のところに向かって消え行った。
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