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楽しい夢

その人は教室の窓際の席から外を見ていた。

何気なく髪をかき上げる姿を見るだけで、目が離せなくなってしまう。


「こちらにおいで」


私に気がついて手招きをする彼の元に、ゆっくりと歩みよる。


「もっと側に来て顔を見せて」


彼の黒い瞳に自分の顔が映っているのが嬉しくて、その瞳にジッと見入ってしまう。


「今日は楽しかったかい?」


そう。

彼はいつも今日の楽しかった事を聞いてくれる。

楽しくなくて、嫌だった事も。

何でも聞いてくれる。

私の見た事、聞いた事。

何でも、何でも聞いてくれる。


彼に秘密にする事なんて何もない。

彼になら何だって話す事が出来る。

たとえそれが、我が家の秘密であろうとも。

学園の秘密であろうとも。

国の重要人物と交わした重要な秘密であろうとも。


彼に秘密を話すのは楽しい。

今まで誰にも言えなくて、重く苦しかった心がとても軽くなって、幸せな気持ちになれるから。

彼の瞳に映る事ができるから。


「今日は学園の食堂で、ちょっとした事件があったの」


私は先ほど見た、エリザベート様と数人の女生徒の話をする。


「そうなんだ。そんな事があったんだね」


それと、今日、食堂の責任者のオーバン・フランチェスを訪ねて、お城からの使いが来た事も話した。


「そうなんだ。お城からだなんて、凄いね。女の人?」


「いえ、男の人」


「そうなんだ。お城からだなんて。なんだかワクワクするよね。王様からの使いかなあ」


「いえ、宰相さまからの使いだったわ」


「へえ、そうなんだ。

オーバンさんって顔が広いんだね」


そう、オーバンさんは確かに顔が広い。

私は自分が話した事に彼が関心を示してくれたのが嬉しくて、オーバンさんの事をどんどん話していった。


1年くらい前からの責任者で、彼が今のシェフのポール・ウェイバーを連れてきたこと。

その他、知っている事を全部はなした。

沢山、沢山、話して、私はとっても気持ちが良くなっていった。


「今日も楽しかったね。もう、自分の職場に戻らなくちゃあいけないね。

僕のことは忘れるんだよ。楽しい夢を見たんだよ」


そうだった。

休憩時間が終わってしまう。

彼のことは忘れなきゃ。


「また、話をしに会いにおいで。

合図をするからね」


また合図があったら来ようと思う。


「さあ、休憩が終わってしまうよ。急がなきゃ」


本当だ。休憩が終わってしまう。

私は厨房に急いで戻ってきた。

ああ、間に合った。


お昼を食べた後、いつの間にか寝てしまったようだ。

内容は覚えていないけど楽しい夢を見たわ。

夢だから忘れてしまったけれど。


彼女はスッキリとした顔をして、職場に向かったのだった。

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