07 逸品
ぶらり旅最初の夕食は、とても豪華。
みんなが今回の旅のために持ち寄ってくれた趣向を凝らした料理の数々。
美味しいものをみんなで楽しく食べたいという気持ち、
みんなから伝わってきたよ。
「もう全部食べちゃったのっ、ロイさん」
いきなり怒られちゃった、俺。
ごめんマクラちゃん、我慢出来なかったよ。
マクラちゃんの新作ケーキは、涼感もっちりケーキお茶風味。
冷蔵魔法付与の容器をぱかりと開けると、中にはころりとした可愛らしいケーキが。
ひんやりもちもち食感にお茶の風味を活かした、甘さ控えめの大人なお味。
食後まで待ち切れるはずもなく、ぱかりころりぺろりと。
「もー、おかわりはないんだから味わってっ」
本当ごめんね、マクラちゃん。
でも周りのみんなも見ての通りだし、我慢は無理、だよね。
「カミスパパとのコラボラ……コラボレーション!」
上手に言えました、ハルシャちゃん。
ハルシャちゃんは、新作の惣菜パン。
丸くて平べったいパンの中には、
冷めているのに美味しい肉汁があふれる不思議な具がたっぷり。
甘辛だけどしつこくなくて、食べるのをやめられなくなるのも不思議。
「味付けに使ったソースはカミスパパ特製で、お汁がいっぱいなのはシェルカママの内緒の魔法ですっ」
正にチームカミスのコラボレーションですね。
「私のは、普通、かな」
ちょっともじもじしているニケルちゃんは、スティック状の揚げ物ですね。
パリパリの生地をがぶりとかじると、中に詰まっているシャキシャキの具は、たけのこ、かな。
優しい味の出汁がたけのこにとても良く染み込んでいて、噛めば噛むほど美味しさシャキシャキ。
「街の近くのお山で採れるたけのこを使ってて、ママの得意料理だって、パパが……」
ごめんニケルちゃん、それ以上はおじさん泣いちゃうから勘弁して。
「たけのこを採りに行くときにマリオネさんたちが、いっぱい手伝ってくれたの」
本当ごめんニケルちゃん、もう許してください。
「私も故郷のお料理なんですよ」
ユイさんの故郷ということは、アルセリアの名物料理かな。
きれいな黄金色のスープに、細かく刻んだ色とりどりのたくさんの野菜が。
上品で薄味だけど旨みはしっかり味わえる、優しいお味が後を引く美味しさ。
お城の宮廷料理を再現したのかな。
「幼なじみのプリナの得意料理、ようやく自分で作れるようになりました」
これもまた特別な逸品、だね。
「皆さんのお料理が、美味しすぎて、その……」
エルミナさん、ちょっと尻込み。
えーと、おにぎり、かな。
「白ご飯の方は酸っぱい果物で、混ぜご飯の方はお肉、です……」
どれ、まずは混ぜご飯おにぎりから。
おっ、中のお肉は結構がっつりめの味付け、
それも美味いが、この細かい揚げ物を混ぜ込んだ混ぜご飯が、
なんだかやめられない美味さ。
いかん、箸休め的に白ご飯の方も、
酸っぱ!
小さいのに強烈に酸っぱい果物には、周りの白ご飯が必須、
こっちはこっちでやめられない美味さ。
いや、両方食べざるを得ないぞ。
正に甲乙付け難い美味さ。
「カミスの大好物なのです……」
えーと、ごちそうさま、ですね……
みんなの料理を無我夢中で食べていたら、
『んぐっ』
喉につっかえ……
「どうぞ」
お茶をごくり。
いや、ありがとうセシエリアさん。
ちょっと大人げなく夢中になりすぎました。
「みんなが笑っていますよ」
えーと、今日もいい天気、いや夜空ですね……
正に、大人げ無し。




