20 新発明
フィナさんが暮らしている我が家があるのは、リグラルト王国の隅っこ。
モノカさんたちが住んでいるのは、エルサニア王国の王都。
徒歩だと三ヶ月ほどかかる距離で離れておりまして、
行き来の手段は、基本的には幌馬車、又は『転送』魔法。
もう少し手軽に移動出来たら、などとみんなが考えておりましたが、
アリシエラが、またもやってくれました。
新発明、見た目は普通の小屋です。
「『ゲートルーム』って呼んでくださいっ」
簡単に言うと、行き先を限定した『転送』装置、だそうです。
『ゲートルーム』間でのみ行き来可能な、特別な『転送』技術を使用しており、
従来の『転送』魔法だと起こる可能性のあった『転送』事故を防止しましたよっ、とのこと。
現在『ゲートルーム』が設置されているのは、我が家ロイ家とモノカ邸の二ヶ所のみですが、
試験運用で問題なければ、仲間たちの邸宅へ随時配備予定です。
いや、問題発生すなわち『転送』事故なので、100%安全じゃないといけないのですがね。
「お任せくださいご主人さま、不肖アリシエラ、皆さんの安全・安心のためなら、この命に代えてもっ」
いやアリシエラ、命は大事に、だぞ。
以前から何度も言っている通り、魔導具技術行使には慎重に慎重を重ねて、
それとひとりで突っ走らずに必ずみんなと相談しながらだからな。
「ロイさんって、本当に心配性だよねえ」
いえいえフィナさん、アリシエラのやらかしの被害って、多分フィナさんの想像をはるかに超えちゃってますよ。
「もう、あんまりアリシエラさんを困らせちゃうと、僕も困っちゃうんだけどな」
アリシエラの頭に乗ったフィナさんが、いつものように両手でネコミミをモフモフしております。
えーと、最近のフィナさんのお気に入りは、アリシエラの頭の上、って言うかネコミミなのです。
ああやってネコミミをモフるのが大好きなので、アリシエラがお説教されてネコミミがぺたんと張り付くと、フィナさんが困っちゃうのです。
何となく、最近アリシエラの発明の勢いが増しているのは、フィナさんのサポートっていうか甘やかしがあるからかも、なんて。
「フィナさんにも皆さんにも、快適・安全・安心な魔導具をお届け出来るよう、このアリシエラ、今まで以上に頑張っちゃう所存ですっ」
フィナさんが、アリシエラの頭の上で、ぱちぱちと拍手。
ま、俺に出来ることといったら、今まで通りみんなの平穏で楽しい暮らしを守るために、右往左往するくらいなんですがね。




