17 美味
「おいしいねえ」
フィナさん、本当に美味しそうな笑顔。
小さく切り分けられたケーキをパクパクと。
もちろんお茶も美味しそうに。
見ているみんなも嬉しそう。
美味しいと楽しいが、この素敵な場にあふれ過ぎちゃってて、
俺みたいなおっさんでも、浄化されるような心持ち。
でもなあ、ひねたおっさんには、楽しいことが大きい程、後から来るもののキツさも分かっちゃうんだよな。
セシエリアさんも、多分、分かってる。
美味しいお茶とお茶菓子、
楽しいおしゃべりの時間は、
そろそろお開き。
お片付けしているセシエリアさんは、名残惜しそうにしているみんなから、目を逸らしているよう。
俺も、この後のことを考えると、気が重いです。
「ごちそうさま、だね」
「久しぶりに楽しい時間だったよ」
フィナさん、大満足のご様子。
「またここに来ていいかな?」
マクラちゃん、すでにちょっと涙目。
「えー、そんなの嫌だよ」
えっ、フィナさん、そんなこと言っちゃったら、
三人娘と姫さまたち、とても悲しそうなお顔に。
どうしよう、こんなことになるんだったら連れて来なければ良かった。
「だってそれだと、美味しいお茶とかお菓子が、たまにしか食べられなくなっちゃうよ」
?
「ちょっと待っててね」
フィナさん、滝の木の周辺をくるくる飛び回っておりますが、
「はい終わり」
「結界? だっけ、いつもより強めに掛けといたから、僕が離れてもここには誰もいたずらできないよ」
えーと、それって、
「外の世界には、マクラさんやセシエリアさんの他にも、お菓子作りが得意な人がいっぱいいるんだよね」
「早く行こうよ」
何だか急展開ではありますが、
当然、みんなはとても嬉しそう。
ま、おとぎ話はめでたしめでたしじゃなきゃ、ね。
そんな感じで、みんな一緒に、林を抜けることに。




