16 茶器
フィナさんから、いろいろお話しが聞けました。
とてもフレンドリーな妖精さんですね。
フィナさんは、この滝の木から生まれた妖精さん。
生まれたのはずいぶん昔で、ずっとここにいるそうです。
たまに訪れる、お話し出来る生き物との会話が楽しみだとか。
お仲間の妖精さんたちとは、まだ会ったことは無いそうです。
「さみしくないの?」
優しいマクラちゃん、自分のことのように心配しています。
「どうだろうねえ、僕にとって大事なのは、体の大小じゃなくて、気が合うかどうか、だからねえ」
マクラちゃんは、フィナさんの言葉の意味を、一生懸命考えているようです。
それを見て、慌てたように言葉を続けたフィナさん。
「えーと、もちろん仲間と会えたらうれしいけど、今はとくにさみしくはないかな」
「こうしてお友達も増えたしね」
「やった、妖精さんとおともだちっ」
「ハルシャもおともだちだよっ」
「私もっ」
大喜びの三人娘の上を、フィナさんがふよふよ浮いておりますが、
「フィナさんってやはり、凄く早く飛べたりするんですか」
「僕、早く飛ぶのって好きじゃないんだよね」
「ぷかぷか浮いてる方が楽しいよ」
ふむ、せっかちさんじゃなくて、のんびりさんです。
「よろしかったら、フィナさんもご一緒に、お茶などいかがでしょう」
セシエリアさんの言葉に、フィナさん、誘われるようにふらりふわりと。
まあ、あの良い香りには、妖精さんだけじゃなく、どんな英雄豪傑も勝てませんって。
滝の木から少し離れたところ、ちょっと厚手の大きな敷物が敷かれてます。
お茶会の準備は万端。
「あそこの滝のお水を使わせていただきますね」
セシエリアさん、少し恐縮。
「お茶なんて、久しぶりだねえ」
フィナさん、にこにこ。
あれ、あのフィナさんが使える大きさの茶器って、
驚いている俺を見て、セシエリアさん、にっこり。
アイネがまだ小さい頃、セシエリアさんが用意してくれたお人形遊び用の各種小物。
正にあの茶器セットだよな。
とても小さいのに、ものすごく高価そうな品だったんで恐縮していたら、
『おままごとやお人形遊びというのは、子供たちが楽しくお行儀やマナーを学べるとても良い機会となるのですよ』
今頃になって、あの時のセシエリアさんの言葉を理解した俺。
あつらえたようにぴったりサイズの茶器に、とても嬉しそうなフィナさん。
お人形遊び用の品にまでこれほどの逸品を用意してくれたセシエリアさんに、俺、深く感謝。
三人娘もお姫さまたちも、ちっちゃな茶器セットを見てわくわく顔。
それでもみんなお行儀良く、セシエリアさんのお手前を拝見しております。
セシエリアさんの優雅な礼が、お茶会始まりの合図。




