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肆の巻 山菜

政宗と愛姫の意外と粗忽な日常の一コマです。

些細なことでも笑い合える夫婦でありたいものです。

朝から外に出かけていた(めご)姫がパタパタと館の廊下を駆けている。




「政宗様ー?どちらにどちらにおわします?」




両手に掲げた籠には喜多と野原で摘んできた山菜が盛られていた。


今日は政宗に美味しい山菜の天ぷらを食べてもらおうと、喜多と一緒に初めての山菜取りに出かけたのだ。


雪深い米沢の地では山菜が取れる時期も遅い。




(めご)か?俺はここにおる」




中庭に面した部屋から政宗の声が聞こえた。




「あ、政宗様そちらでしたか!」




いつもであれば籠を廊下に置いて障子をあけるところである。


しかし、ついつい気が急いてしまっていた(めご)姫は立ったまま障子をなんとかあけようとしたのだが。



ゴツッドサッゴロゴロゴロ…




「ーーーーーーっつ!!」




慣れない不調法をしようとした(めご)姫は勢い余ってしたたかに肘を障子の角に打ち付けた。


同時に肘に激しい痺れを感じて籠を取り落とし、山菜を廊下一面にばら撒いてしまった。


声にならない悲鳴をあげてその場に蹲った姫。


せっかく政宗にと思ってつんできた山菜が転がったのをみて、思わず涙をぽろりと零した。


その直後。



バタバタ!ガツッ!!!バタンッ!!!




部屋の中から立て続けに激しい音がした。


肘の痛みと痺れに耐えながらも、驚いた姫が顔をあげると同時に、ガン!!と音がして障子が開いた。




(めご)!いかが致した!!」




何故か畳の上に這いつくばるようにして焦った表情の政宗が顔を出した。


見れば、右手は開け放った障子をしっかりと掴んだまま。


左手は左足の先を押さえて何かに耐えているように見える。




「…政宗様?」




つい、自分の状況も忘れて普段見ない政宗の様子に驚くあまり涙も止まってしまった。


肘を押さえながら政宗の傍に寄り、顔を伺いみる。


政宗の向こうに倒れた脇息が目に入った。




「…(めご)?一体何があったというのだ?これは…一体どういうことだ?」




廊下に散乱した山菜と籠と蹲った(めご)姫を見て政宗が尋ねる。




「は、はい。政宗様に美味しい山菜を食べて頂きたいと思いまして、喜多と一緒に山菜を摘んできたのです。私、自分で山菜を摘んだのは生まれて初めてだったものですから…。それで沢山摘めたのが嬉しくて政宗様に見ていただきたくて…急ぐあまり……肘を障子の角に打ち付けてしまって…」




それまで緊張した面持ちだった政宗は、それを聞いて安堵したように破顔した。




「ハハハハ!では、肘を打ち付けて痺れさせたのだな?なるほど、それで籠を取り落として散乱させたか!!」




胡坐をかいて面白そうに膝を掌で打った。




「左様でございます…お恥ずかしい限りで…」




思わず頬を染めて俯いてしまう。




「政宗様こそ、先ほどお部屋の中から大きな音が致しましたが…?」




気になっていたことを尋ねると、政宗は気まり悪げにわざと気難しげな表情を作った。




「うむ。(めご)の悲鳴と大きな音が聞こえたのでな…。何か大事でもあったかと思い、急いで部屋を出ようとしたのだが……その…慌てるあまり、脇息に足の小指を強かに打ち付けてしまったのだ……」




難しい顔をしている政宗の耳がほのかに赤く染まっているのをみつけてしまった。


2人で顔を見合わせてると、思わず互いにぷっと吹き出してしまう。




「ふふ、ご心配おかけして申し訳ございません、政宗様」




ふわりと笑って言えば。




「今宵は(めご)の摘んできた山菜を共に楽しむとするか!」




政宗も豪快に笑ってみせた。


遅い春の訪れと共に、2人の初めての春は笑い声にあふれていた。

喜多様は政宗の乳母(独身だったので養育係)で、後に愛姫付になった女性。

側近である小十郎の異父姉です。

聡明な喜多様も大好きです。


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