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掌編

文学青年の独白

作者: 高石すず音

大正〜昭和期の文豪のエッセイを読むうちに着想した、レトロな掌編です。

今の僕には友達など居りません。

東京に見切りを付けて、これから田舎へ帰るのです。


読んで貰える宛てのない小説を、夜な夜な書いて居りました。

朝の醒めた頭で読み返し、原稿用紙を破り棄てる毎日でした。


僕はずっと、独り身で居りました。

かつての級友は皆、所帯持ちになりました。


暇乞いとまごいをする相手など居りません。

僕が居ないからと言って、淋しがってくれる人も、想い人も居りません。


ただ、僕には好きな場所がありました。

日比谷公園に植わっている辛夷こぶしが好きでした。


白い花も、赤い実も、冬木ふゆきの芽も、すらりと伸びた幹も。

僕は見つめていると、ひとときの憩いを感じられたのです。


舞い落ちてきた一葉ひとはを思い出に、停車場ていしゃばへ向かうとします。

さようなら、僕の愛した場所。さようなら、僕の青春の日々。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  学生の頃。  もうずっと前のことになりますが、「大正ロマン」というものに憧れていまして、「あがた森魚」の歌詞(ご存じないかもしれませんが……)が好きで、よくレコードを聞いたものです。  …
[良い点] おおん、なんだか親近感が沸くお話でした。 僕も最近、引っ越した身ですから。 普段は必死に生きているせいか、日常の片隅にある好きなものって特別視しないのですけど、何かしらの去り際や別れ際に…
2020/12/08 06:42 退会済み
管理
[良い点] 拝読しました。 独白ということでしたので、声に出して朗読してみました。すると、訥々と語ることで、青年のやるせなさやうら寂しさが浮かび上がってくるのですね。 東京ではなにもなし得なかったの…
感想一覧
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