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サイン
「アンタ自身の生き霊じゃからな…祓う事は出来ん」
寺を出ると僕は住職の言葉を軽トラックの中で繰り返していた。
あの落書きは子供の頃の僕が何かを伝えようとしているサインだと言う。
霊障に遭いたくなければ二度とこの町に来ず、可能な限り
この町の出身者とも会うなとも言われた。
警告に従わなければ更なるサインが現れるだろう
落書き程度で済む内なら良いが
警告に従わせる為に僕を破滅させかねないサインを出す可能性もある。
「じゃ、曰佐津駅まで送るよ」
中島さんは、山を越えて隣の町の駅へ僕を降ろそうと考えていた。
「やってないって言ってましたよね?」
「うん?」
「長湫病院ですよ…探索しませんか?」
中島さんはコイツ正気か?と言った顔で僕を見た。
「ムカつくんですよ、意味も分からん警告に従わされるとか!」
「言っとくが、精神病院だぞ…」
中島さんは、そう言うとハンドルを一杯に切り
軽トラの鼻先を田んぼに落としかけながらUターンしたのだった。