また、会おうね
「こんな時間に?」
あれから数日が過ぎた。
残業を終わらせ終電に飛び乗った僕は携帯の呼び出し音に背広の内ポケットをまさぐった。。
呼び出しの主は中島さんだ。
車内を見回したが人影はない、マナー違反ではあるが
僕は嫌な予感を背中に感じながら電話に出た。
中島さんの祖父、あのお寺のご住職が亡くなられたらしい…
「いや、お悔やみは良いよ!近藤さん何か変わった事無い?」
「いえ、特に何も変わった事は…」
中島さんは翌日に僕が廃病院で思い出した話をご住職にしたのだが
それを聞くや、ご住職は真っ青になり黙ってしまったと言う。
ご住職は中島さんが帰った後、1人で廃病院へ赴き倒壊事故に遭ったのだった。
警察の検分は、大雨で地盤が緩んでいた事が原因の崖崩れであり
斜面にしがみつくように建っていた懸け作りの廃病院は、斜面ごと滑り落ちるや
何十メートルも破片を撒き散らしながら崩落したのだ。
ご住職は即死だった為、廃病院へ行った理由は分からないままだった。
中島さんは葬儀が一段落した所で僕が無事かを気づかい電話をしてくれたのだった。
だが、此方には変わった事は無かった。
あれ以来、記憶に無い落書きに悩まされる事も無く平穏に過ごしている。
僕は丁重にお礼を言ってから、もう一度お悔やみをのべた。
電車は減速し目的駅で停車する。
空気が抜ける音が響き自動扉が口を開けると僕はホームに降りた。
「何か変わった事が起きたら電話してくれよな?」
「うん、また会おうね…」
心配する中島さんにそう言って電話を切る。
私は改札へ向かう長い階段をゆっくりと降りて行った。
セフセフヽ(^o^;)ノセーフ