表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落書き  作者: はるまき
16/20

最後の航海

正直、もう湖に出るのは嫌だった。


行ってはいけない彼女を行かせてはならないと分かっていた。


だが、智ちゃんはやはり湖に出る事を求め

母親は僕に湖に出る事を命じた。


何日も漕いだだけあって、かなり慣れたはずだが

その日のオールは酷く重かったのだけは覚えている。


「そうそう、こーちゃん右だよ…あ、左か…」


智ちゃんが目指したのは昨日、死体が沈んでいると彼女が言った場所だった。


もちろん死体なんて彼女が思い付いただけの話だ。


そう、そんな話を思い付いて嬉々として語る彼女が怖かった。


既に彼女の眼は緑色の湖面のように表情を失っている。


何度も引き返したい衝動にかられたが

引き返えすなとばかりに売店のベンチに母親は座り

こちらを見ている。


「お母さん、見てる?」


智ちゃんは振り返えると母に向かって手を振った。


母親が売店のベンチから手を振り返したのが見える。


「あの影にボート行けそう?」


死体が沈んでいると言っていた場所を過ぎたが

彼女は忘れてしまったのか気にもせず

湖から取水する用水路の入り口にボートを泊めさせた。


ボートは樹木の影になり湖面の照り返しからも

母親の視線からも解放される。


少し休憩したら戻ろう…戻れば明日から湖に来る事はない。


ホッとする僕に彼女はこう言った。


「ここで泳ごうか?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ