序章 終話 「出発前夜」
午前0時、聖堂にて。
「それで、何故だ?」
「ん?」
アラスターと明日の準備をしている途中、シオンは彼に問いかけた。
「何故リリーを入れた?」
シオンにはそれが分からない。
コイツのすることが意味不明なのは、いつものことだが。
「さっき言っただろう。あの子が」
「それだけじゃないだろ」
「…………」
やはり、何かあるのか。
「言えないならまあいい。いつか教えろ」
「……うん。ありがとうね」
そう言って、彼は作業に戻る。
「それと明日の要塞の件だが。連れて行く必要があるのか?」
「ああ。今後手伝ってもらうんだし、連れて行くよ。」
本気か。
「アイツ等に預けたほうが良いんじゃないか?」
「まあ、二人共忙しいんじゃないかな」
「お前、自分が連れて行きたいだけだろ」
「ハハ、ばれたか」
またか。
それより、
「プランCからFの場合、俺が連れて行くのか?」
「ん、お願い」
「…………」
まあ、身が危険なことはないだろう。
だが、精神は。
「お前は、何人生きていると思う?」
「どうだろうね。一人でも生きてればいい方な気がするけど」
やはりか。
「それを見て、リリーは大丈夫なのか」
「へえ、珍しい。心配してるのかい?」
「おまえは俺をなんだと思っている」
「クズ」
「…………」
お互い様だろ。
「これでよし、お疲れ様。シオンももう寝たほうがいいんじゃない?」
「……ああ」
部屋に戻ると、俺のベッドでリリーが寝ていた。
昨日から部屋が乗っ取られている。
「……r……a……k…………t…………n……n」
寝言。
いや、うなされている。
違う。
あいつじゃない。
あいつの髪は、金髪ではなかった。
あいつじゃない。
「…………」
また、舌を打つ。
これにて序章終了です。
次章からは、もっと話数が増えると思います。
読んでいただいた方、本当にありがとうございました。