別れと出会い。
「起きてください。起きてくださいよ。」
目を開くと、ショートの赤髪で小学四年生ぐらいの少女が俺の体を必死にゆすっている。
瞳は蒼く少し潤っていて、ゆすっている手も力も愛くるしいほど小さい。
脳が覚醒化してきて、周りを見渡すと岩に囲まれた洞窟のようで、少女の後ろに石碑が一つだけある。
その奥には外につながっている穴から光がさしていた。
こんな店入ったかな。
会社帰りに上司に飲みに連れられてそこでイッキさせられて。
それからはしご酒しようとして、、、それ以降の記憶がない。
「あっ、気がつきましたか?」
もしや俺、酔った勢いで入っちゃったのか?29歳にもなって何してるんだか。
自分のことながら恥ずかしい。
いろんなジャンルが増えてきているとはいえ、ヤる場所がが鍾乳洞って時代の最先端すぎね?
変わった店も増えてきたんだな。
お姉さんにも悪いことしちゃったな。
これからだって時に寝られたら困るだろうに。
まぁなっちゃったことは仕方がない。あと二回延長して帰ろう。
「起き上がれますか。」
「あっ、僕も息子も大丈夫ですよ。すいません、寝ちゃって。
お姉さんもスッキリできてないですよね。あと二回だk、、、」
あれ、お姉さん?目の前にはいるのはどう見ても小学生くらいの女の子。
それも少し涙ぐんでいる。
これって、事後は事後でも事故の事後?
「、、、あと二回って何のことですか。」
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやらかしたやらかしたやらかした。
おいおい、29歳。
ラリってロリっちゃいましたなんてシャレになんねぇよ。
てか普通に犯罪だよ。
「あの、汗すごいですけど本当に大丈夫ですか。」
考えろ。考えるんだ。
この場面の突破口を見つけなくては。
しらばっくれるか。土下座してあやまるか。
いやどちらも社会的死からは逃れられない。
「あの!!」
彼女は何も発しない俺に涙を浮かべ、心配そうな顔をして呼びかけた。
俺はなんと恥ずかしい人間なのだろう。
彼女は何か大事なものを失ったかもしれないのに、こちらの心配をしてくれている。
それが自分をおそったかもしれないやつのことを。
それに対し、俺は自分保身のことしか考えていなかった。
何歳も年上のくせに何をしているのだろう。
いや29年間もの集大成がこの醜い自分なのだ。
問題には目を背け、責任から逃げ、自分には矛先が向かないよう誰かの陰に隠れ、そんな生き方をずっとしていまい慣れてしまったのだろう。
年の功とはよく言ったものだ。
僕はこんなにも愚かで醜くくなってしまった。
こんな屑なやつでも彼女の傷をいやせるだろうか。
いや俺に選択権はない。
向き合おう。彼女に。29年間の馬鹿な生き方をした自分に。
まず謝ろう。
俺はゆっくりと体を彼女のほうに向け、ひざを折った。
どんな罵詈雑言でも受け止め、一生彼女の願いを聞こうと覚悟して両手を地につけ、頭を下げる。
完璧なフォームの土下座が完成する間際、どこにいたのかコウモリのような鳥が羽音を立て飛んできた。
その瞬間、俺はクラウチングスタートで出口に走った。