前世で善行を積んだ俺は異世界でSSSランクの強さを手に入れさらに善行を積む
俺は前世で凶弾に倒れた。
だが、目を覚ますと真っ白な空間にいた。
そこで女神だという女に力をもらった。
女神の話によると、俺は前世で善行を積んでおり、次の生でも同じように善行を積んで欲しいのだそうだ。
転生先は前世とは違う異世界。剣と魔法の中世ヨーロッパ風ファンタジー世界なのだそうだ。
もらった力は「領域」というもの。自身を中心に半径1キロに「領域」が常に展開しており、必要に応じて距離を伸ばすことが出来るという。実質俺はずっと領域内にいることになる。領域内では、全ての生物や物の動向の把握に加え、全ての生物に筋力や魔力、抵抗力にマイナス補正が掛かる。逆に自身にはプラス補正が掛かる。異世界の強さ基準に表すとSSSランクほどになるらしい。
女神は説明を終えると俺を異世界へ転送した。まばゆい光が俺の身体を包む。
光が収まると白い空間から一変し、森の中にいた。転生といっても姿かたちは前世のままのようだ。
服装はいかにも中世風な簡素な衣装に変わっていた。とりあえず赤ん坊からのスタートではなく安堵する。
さっそく領域が生物の反応を探知する。
獣の反応がちらほらあるが、まずは人らしき反応がある場所へと向かう。
身体の軽さに感動しつつ反応のあった場所に着くと、馬車が盗賊らしき男たちに襲われていた。
盗賊は12人、襲われているのは7人だ。
善行の時間だ。
まずは盗賊を始末することにする。何か言っているが言葉がまったく分からない。こちらに剣を構えて向かってきたので手近な石を拾って投げる。胸に当たった石は胸当てごと身体にめり込み、盗賊は呻き声を上げながら前のめりに倒れ、そのまま動かなくなった。剣を奪い、弓矢と剣を避けながら次々に斬り捨てていく。逃げようとした奴は襲われていた方、たぶん護衛に斬られていた。
盗賊は全員始末できたので、馬車に目を向けると、護衛がにこやかに話し掛けてくる。その後ろで馬車から見目麗しい少女と、従者らしき男がほっとした表情で降りてきていた。御者は馬を落ち着かせているようだ。傷を治す魔法を使っている女がいたので、首を切り落とす。次に炎の魔法を使っていた女の喉元に剣を突き刺す。傷を治されていた細身の男が慌てて剣を抜こうとしたので、膝を蹴り砕く。横から斬りかかってくるのを探知した為、女魔法使いが付いたままの剣で防御する。斬るのを躊躇したところを女魔法使いごと蹴り飛ばす。木に背中を打ちつけ気絶したようなので、鎧の隙間から剣を突き入れ止めを刺す。最後に細身の男の首を飛ばして護衛は全滅した。
馬車に目を向けると腰を抜かした少女を荷台に乗せているところだった。さっき見た炎の魔法を試してみる。馬車は轟々と燃え、絶叫をあげながら人が2人転がり出てくるが、しばらくすると動かなくなった。
御者は命乞いをしているようなので、立ち去るふりをしながら近くに身を隠し様子をみる。馬に乗って走り出したので気付かれないように後を追う。どうやら俺は馬よりも速く走れるようだ。
やがて、城下町が見えてきたので御者に止めを刺し、町に乗り込む。
この世界には人の他にエルフ・ドワーフ・獣人などの人型がいるが、女神がいうには、減らすのは人だけでいいそうだ。なんとなく判別できるので、人だけを選別して始末していく。しかし、異種間であっても友好な関係を築いている者も多く、攻撃してくる他の人型はどんどん増えていく。面倒だが善行を行うのは人だけなので避けたり防いだりしてやり過ごす。数日かけ宮廷まで乗り込み粗方始末し終えたところで、気配を消し国から立ち去る。国や集落を見つけたら、これと同じことを繰り返せばいいのだろう。そう思った。
転生してから、数十年は経ったと思う。今では半径10キロまでの探知が可能になったが、人がなかなか見つからなくなっていた。絶滅させる必要はないようなので、ここらが引き際だろう。人型とのおにごっこもこれでおわりにしたい。
繋がるか分からないが、女神に念じてみる。
パスが繋がったようだ。
女神からそのまま人型に殺されろと言われた。殺されればまた白い空間に飛ばされるそうだ。
人型を待ち構え、対峙する。
領域の能力も大分使い勝手がよくなり、今では向けられる感情が視覚化されるにまで至っている。
ものすごい怨嗟の念がまるで龍のようにうねり、俺を飲み込まんとしていた。
さすがに恐怖を感じた。そういえば前世にも似た感情をぶつけられた気がする。
俺はただ人間は増えすぎたと思ったから、減らしただけなのに。毒・放火・爆破・銃撃、あらゆる方法を使って首都の人口を減らしていった。そうしたら、拳銃で撃たれた。周りを囲まれて蜂の巣だ。そう、あの時の人間の目に似ている。まあ、女神に善行であったとお墨付きをもらったのでよかったことにする。
捕まった俺は何日もかけて、拷問のような処刑をされ死んだ。
目を覚ますと、真っ白な空間にいた。あのまま目覚めないことも覚悟していたが本当に戻ってきたようだ。女神は俺にねぎらいの言葉を掛けると、次の転生先に行くか、女神に魂を捧げて眠りにつくか選ぶように言われた。女神と自称しているが本当は邪神とか悪魔とかそういう存在なのだろうな。どうでもいいかと思いつつ、女神に魂を捧げることを選択する。女神は微笑み俺を抱きしめる。すると吸い取られるように意識が遠のき途切れた。
もう目覚めることはない。
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