楽器決め
「ところで、楽器の希望とかある?」
「え、希望、ですか」
そう、と瑞樹が頷いた。
「1年生が足りないパートはオーボエとファゴットなんだけど……」
と、パンパンと瑞樹が手を叩き、静まり返った。
「オーボエ桃子とファゴット萌!予備楽器もって楽器庫に来てください!」
「「はい!」」
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「この子、佐伯侑芽ちゃん。初心者よ」
「えぇ〜!? 初心者!? 珍しいですね!」
と、強気な女子がジロジロと侑芽をみた。
「こらこら、緊張しちゃうからそんなに見ないの」
「はぁ〜い」
と、彼女はシュンと縮こまった。
「えっとね、こっちがオーボエ3年の羽山 桃子で、こっちがファゴット2年の内村 萌。今からファゴットかオーボエか決めるから」
「よろしくお願いします」
「じゃあ、後はよろしくね! 萌、優しくね!や、さ、し、く!」
「わかってますよー!」
と、萌は眉に皺を寄せた。
「じゃあね、侑芽ちゃん!」
「あ、」
と、瑞樹は楽器庫を去って行ってしまった。
『どうしよう……』
「侑芽ちゃん、あたし桃子。まずはオーボエ拭いてみようか」
「は、はい」
瑞樹がいなくなってしまい、緊張してしまう。
と、竹のような小さいものを渡された。
「これね、リードって言って、基本的には消耗品。オーボエ、ファゴットはこれを楽器につけて演奏するの。吹いてみて」
と、侑芽はリードを口にくわえ、息をいれた。
ピ──────
「え!? すごい!」
意外とすぐなったが、そんなことはとても珍しいことのようだ。
「これならすぐに経験者に追いつくよ!次は楽器で吹いてみよう!」
と、楽器の持ち方などを丁寧に教わり、
音をならしてみた。
〈♪…♪〜〜〉
音はふらついているが、たしかになっている。
「はいはーい! 次はファゴット!」
と、萌が、赤色の楽器を持ってきた。
「はい、リード!」
オーボエよりも少し大きいリードを渡された。
ぶ────
少し低い音がなった。
「うん。そんなかんじかな。じゃ、楽器つけよっか!」
と、黒い紐を首にかけられ、ファゴットと呼ばれる楽器を引っ掛けた。
『お、重い』
「吹いてみて」
と、音を出してみた。
〈ぶふーっ、ぶぉー〉
なんだか変な音だ。
「うーん、ねぇ侑芽ちゃん、オーボエとファゴット、どっちが吹きやすい?」
「え、っと、オーボエ?です」
「よし、じゃあ侑芽ちゃんの担当はオーボエで!よろしくね!侑芽ちゃん!」
ちぇーっと、萌が頬を膨らました。
「は、はい! よろしくお願いします!」