コンクールメンバーになるには
「コンクールメンバー?」
陽菜が首を傾げた。
屋上の風で、彼女のスカートが揺れる。反射で、ピカピカのフルートが光る。隣には、台に置かれた艶やかな木でできたピッコロがある。
「って、どうやったらなれますか? ってゆーか、私がなれるんでしょうか」
陽菜の言葉を補うように聞く。
「で、なんで私?」
眉尻を下げ、自分に指差して笑う。
「え、と。桃子先輩も萌先輩も、すごい喜んでて。なんだか聞きにくいんです。それに、陽菜先輩は頼れる先輩ですし」
「んんんー!侑芽ちゃん好き♡」
と、親しげに抱きつく。
「え、えと」
侑芽は顔を赤らめる。
「で、どうしたらいいかって言われたらー……」
「練習、あるのみですかね」
「まず選ばれる方法知らないでしょ?」
ふふん、と笑う。
「基本、2、3年は出れるよ。コンクール。1年生はと言うとオーディションかな。まぁ人数が足りないところは人数合わせって感じで1年生が出るところもあると思うけどな。うちらの出るA編成は55人まで。2、3年生は全員で41人。だから、55-41で───」
「コンクールメンバーに選ばれる1年生は、14人……」
こくりと頷く。
「もちろん、それ以下の可能性もある。余った1年生たちでバンドを組んで、B編成に出場するパターンもありえないことはない。そして、そのB編成の中に2、3年生が入る可能性も考えないとね」
と、真剣な眼差しで聞く侑芽に助言すると、どんどん侑芽の肩が下がっていく。
「そうですよね……そんな簡単に行きませんよね」
陽菜は1つ、思うことがあった。
今年の自由曲、"マインドスケープ"。
人の心情風景を映し出したもの。毎年必ずどこかの高校が演奏する、難易度が高い曲。
2、3年で人数は十分である。だが、1つだけ足りないパートがあった。オーボエは2本必要なのだ。
マインドスケープをすると決まったのは5月に入った頃だ。森野が何故この曲を選択したのか。
オーボエのソリではなく、桃子1人なのか。もしかしたら、上達した侑芽がその枠に埋まるかもしれない。
だが、あくまで可能性だ。しかも、自分の目の前にはオーディションへの意気込みがある少女がいるのに、パートが足りていないから出られるかもしれない。そんなことを言ってしまっては妥協するのではないか。
だから、しばらく黙っておこう。
陽菜はふっと笑い、優しく侑芽の頭を撫でた。
「練習がんばりな! いつでも相談聞くから」
「ありがとうございます!」




