表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東野中学校吹奏楽部  作者: 星野 美織
きらきらひかる私の音色
20/24

きらきらひかる

楽譜を手にとって、あっという間に2週間だ。

指の動きも覚えて、音も伸ばせるようになってきた。それなりにきらきら星に聴こえる。

「よし!」

「侑芽ちゃん、だいぶ吹けるようになったよね」

「はい! だいぶ慣れました」

と、またリードをくわえ、できるようになったきらきら星を吹く。

「きーらーきーらーひーかーるー」

それに合わせて萌が口ずさむ。

すると、急に教室の扉が豪快に開いた。

バシッ!っと音を立てて反作用でドアが閉まりかける。それを手で静止させたのは、顧問の森野だった。

あまりにも急すぎる登場で、侑芽はもちろん、萌も桃子も固まっていた。

「こんにちは!」

「こんにちは」

「こ、こんにちは!」

やっと桃子が立ち上がり、萌と侑芽も立ち上がる。東野吹部の挨拶の基本、立ち上がって礼をしながらハキハキと。

「楽譜もらってどれくらいだっけ」

「え、と」

あまりにもおたおたする侑芽をギロリと睨む。

焦った侑芽は、早口で答える。

「に、2週間です!」

「ふぅん……」

ジロジロこちらを見て、視線を桃子へと移した。

「羽山、楽器持ってきな。1個余ってるでしょ」

「はい!」

と、すぐに部屋を退室して走り出した。

「オーボエってさ。どれくらいするか知ってる?」

「あ、安くて40万、普通で7、80万って聞きました」

返事をせずに頷いている。

そんな話をしていると、桃子が息を切らして戻ってきた。

「ど、どうぞ」

「は?」

森野は眉間に皺を寄せた。

「あんたさ。もし自分が楽器屋で、試奏に来た人にさ、楽器ケースごとはいどーぞって渡して自分で組み立ててくださいねなんて言う?」

鬼の形相をした森野に桃子は身を震わせた。

「申し訳ありません」

慌てて楽器を組み立てる。

「すみませんでした、どうぞ」

再び差し出されたオーボエは、侑芽の持っている楽器よりもくすんだ色をしていた。

「リード」

「これでいいでしょうか」

「なんでもいい」

たまたま水に付けていたリードを渡す。

森野は唇を強引に擦り、口紅を落とす。

そしてリードをくわえ、ブレスをする。

始まった森野によるきらきら星の音色は、桃子、いや、それ以上だった。

森野の世界に心が吸い込まれる。

夜空に浮かぶ満天の星が、侑芽へと降り注がれる。

「綺麗……」

吹き終わると、ふっ、と息を吐いて、感情的だった彼女の顔面から、また無表情の森野が現れた。

「音楽はね、こういうもんよ。あなたのはただ1個1個音を出してるだけ。それを繋げて感性豊かに色鮮やかにするのがほんとの音楽」

と、森野は侑芽に向かって話しながら、桃子に楽器を返す。

「わかった?」

「はい!」

「よろしい」

と、そのまま教室を出た。

「びっ、くりしたぁー……」

と、萌がため息をつく。

「かっこ悪いとこ見られちゃったなぁ」

桃子が笑いながらポリポリと頬をかく。

「先生の演奏、感想は?」

と桃子が聞くと、侑芽の目には光の粒が沢山あった。

「星が、見えました……」

その表現に、萌も桃子も驚く。

「あっ、いえ。何言ってんだろ私……。えっと、すごく綺麗で……」

先輩2人は顔を見合わせた。

「ねぇ、侑芽ちゃん。頑張ろうよ。先生みたいな音。そんで、一緒にコンクール出よう!」

「え!」

突然で予想だにしなかった言葉に声が裏返ってしまう。

「いえ、そんな……。未熟な私がコンクールだなんて、厚かましいですよ」

「先生は立場で出る人を決めたりしないよ」

「そうだよ!がんばろ!3人でコンクールでよ!」

と、2人が侑芽の手をとる。

「は、い……」

よく分からないまま、曖昧にコンクールメンバーになりたい、そう間接的にいうと、萌と桃子は喜んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ