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きらきら星
「はい、これ」
「ありがとうございます」
受け取った楽譜は、きらきら星だった。
「きらきら星、ですか?」
「そう。侑芽ちゃんには、今日から1ヶ月これをやってもらうからね。1ヶ月後に先生のテストがあるみたい」
「1ヶ月、ですか」
「確認、みたいな感じ。とにかく、他の子はこれやってないし、勝手に合奏とかするかもだけど侑芽ちゃんはこれだけに集中して!」
「は、はい!」
1ヶ月ずっとこの曲と向き合っていくのか。
誰でも分かるような至って簡単な楽譜。誰にも手を付けられたことがないくらいまっさらだった。
「指は分からないだろうからこれ見てね」
「はい」
渡された表は、きらきら星の楽譜と違って、何度も何度もコピーが重ねられ、点々と黒い玉が泳いでいた。
リードをくわえ、息を入れる。
震えるリードに、ただただ喜ぶ初々しい侑芽を見て、桃子は口元を綻ばせた。




