低音パート
「低音はね。ユーフォニアム、チューバ、コントラバス。この3つの楽器がまとまったパートなんだ。別名ベースパートとも言うね」
「そうなんですか……」
また音楽室の近くに戻ってきた。
音楽室から1番近い教室の扉を開ける。
「失礼しまーす」
「りなてぃー。どうしたの?」
おっとりとした顔の少女が真っ先に声をかけた。
「紹介します! 新しくオーボエパートに入った、佐伯侑芽ちゃんです」
「よろしくお願いします」
先ほどの少女がいままで見た楽器の中で1番大きい金色の楽器を床に置いた。
「私、パートリーダーの高尾由良理です。このおっきい楽器、チューバしてます」
「チューバ2年の川越志奈子です。こっちは、橋田由美。ユーフォニアムしてる」
なぜか本人ではなく志奈子が紹介する。ぺこりと頭を下げた由美はむすりとしている。
「1年の嘉門るるかです。ユーフォやってます」
「チューバの、小泉美雪です」
美雪は、侑芽よりも小さな体であの巨大な楽器を吹いているのか。見た目によらず力持ちだ。
「……弦バス担当3年の、加山あやめ」
後ろから突如背の高い少女が話した。
ひゃっと情けない声を上げると、あやめはむっとした。
「よ、よろしくお願いします……」
背の高さに圧倒され、どんどん声が小さくなる。
「2年の、谷城瑠璃香です」
「1年、須和田奈緒」
無愛想なコントラバス3人は、似ていないようで似ていた。
「まぁ、こんなかんじかな。じゃあ、もう戻ろうか」
「お邪魔しました」
教室を出た途端、莉奈が話した。
「ユーフォの由美……声が出ないんだ。だからさっき、志奈子が紹介したの。ほんとはいい子だから、仲良くしてね」
「はい……」
「どう? 名前、覚えられそう?」
「ちょっとは……」
からからと莉奈が笑う。
「そりゃそーだ。まぁ、ゆっくりでいいから覚えていってね」
「はい!」
莉奈につられて、侑芽も笑顔になる。
「そろそろ練習しないとね。パート部屋覚えてるよね」
「はい! ありがとうございました」
「あ、いたいた、侑芽ちゃーん」
莉奈と別れてすぐ、桃子が手を振りながら走ってきた。
「これ、森野先生から。この楽譜練習してって」
「わかりました」
楽器のことを知れて、少しだけ部員らしくなれた。侑芽は練習することに燃えていた。




