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最終話 王都トレヴェローヌ決戦

「なんということだ!?」


 王都トレヴェローヌが見える小さい丘陵に差し掛かったとき、アミン伯爵シャルルが驚きの声とともに駒を止めた。王師の騎兵七百騎はシャルルの指揮の下、歩兵に先行する形で進軍していた。そのシャルルが止まったことで、騎兵隊のすべてのあしが止まった。突然の停止に、騎兵隊の士官がシャルルに駆け寄る。


「シャルル様、どうなさいましたか?」


 事前に放っていた斥候からは、ルキウスが王都を出陣したとは聞いていない。むしろ、王都で篭城戦を行う構えだという報告を受けている。それゆえに騎兵隊は歩兵をルートヴィヒと諸侯に任せて先行してきたのである。もし、臨戦態勢にない今、敵の伏兵に攻められれば、全滅こそしなくとも手痛い打撃を受けることになる。士官は胸中に焦りを隠したままシャルルの隣に立った。


「ここから王都が見える。貴様は、王城にひるがえっている旗が見えるか?」


 敵の伏兵がいたのではない、と分かって士官は安堵のため息をついた。シャルルに言われるまま王都を眺めると、確かに旗が城の尖塔に掲げられている。まだ、遠くてはっきり見えないが、三つの旗が掲げられている。よく見ようと目を細めた士官は「あっ!」と、叫んだ。


 三つの旗のうち一つは、言わずと知れたオルセオロ侯爵の紋章である右向きの雲雀である。もう一つは、アザミを咥える獅子。ルキウスと行動を共にしているとされるルフスリュス・ウェルセックの紋章である。ウェルセック王家を表す獅子の紋章がベルジカの王都に掲げられている。これだけでもベルジカ王国の近衛なら驚くべきことなのであるが、問題は最後の旗であった。


 王冠をかぶった鷲が他の二つよりも高い尖塔に翻っている。鷲はベルジカ王家の者なら使用することを許されている。しかし、王冠を付けるとなるとそうはいかない。王冠は国王の象徴であり、国王のみが許された特権である。つまり、王旗なのである。いまこの紋章を使えるのはベルジカ国王であるルートヴィヒしかいないのである。

 だが、王都には王旗が翻っている。


「馬鹿な! なぜ王旗が」

「オルセオロの小僧! 偽王をたてるか」


 憎々しげにシャルルが王城を睨みつける。ルートヴィヒを援けることが自らの使命だと思っているシャルルにとって彼以外の王はすべて偽王である。だが、一つの疑問がある。誰が偽王になったのか。ルートヴィヒに次ぐ王位継承権を持つ弟達は、すべてルートヴィヒの幕下にある。王都には目ぼしい王族はいないはずなのだ。


 ――いったい誰が、我が王の玉座を奪おうとするのか?


 彼の思い描く王族の中には、フランツはいない。血統を第一とするこの時代において、庶子。それも身分の低い者から産まれた者は正統な後継者とは認知されない。自身もアミン伯の称号を持つ彼にとって、庶子の存在は目にすら入っていなかった。


「どうなさいますか?」

「どうするもない。このまま、王都にせまる。王都の民も我らの姿を見れば、偽王と逆臣を追い出して我らを歓呼かんこで迎えるだろう」


 シャルルはあぶみを蹴ると騎馬を進める。騎兵隊は再び、進撃を開始する。

 シャルルが王旗を見つめている姿は、王都からも見ることができた。王都周辺は、平地であり所々に生える木々を除けば広大な麦畑が広がっている。いまは、麦の収穫も終わっているため、軍を隠すような場所はまったく見当たらない。


「やはり、騎兵だけが先に到着したか」


 ルキウスは騎兵が立てる土煙を見ながら微笑んだ。守将であるガイウスを討ち取ってもまだアウグスタは陥落しない。それどころか、亡きガイウスの弔い合戦だとして城を枕に討死することを覚悟した死兵だらけになっている。そんななかで王都が陥落したとなればルートヴィヒが取るべき道は一つしかない。


 アウグスタを放置して王都に戻ることである。もし、アウグスタに固執すれば、兵の損耗は増える。また、本拠地とも言える王都でルキウスがネウストリア大公の残党と合流し、地歩を固めかねない。そうなれば、ルートヴィヒは領地を持たぬ王になってしまう。


 ――だが、王として無様に逃げることはできまい。


 負け戦だからこそ堂々と撤退しなければ、同行している諸侯から失笑されることになる。ルートヴィヒは王であるために行動が制限されている、と言える。自身の動きが制限されるのなら、自由になる者を先に王都に送るに違いない。


 それがシャルルの率いる騎兵隊である。彼ら目的は二つ。一つは、王都に篭る新王フランツとルキウスに圧力をかけること。もう一つは、王都の住民を蜂起ほうきさせ、フランツとルキウスを王都から放逐ほうちくさせることである。もし、王都が王師に囲まれ長期戦になれば、食料を求めた住民は雪崩を打ってルートヴィヒの側に付くだろう。


 だが、反対にルキウスがシャルルの率いる騎兵を打ち破れば、フランツとルキウスの武力を恐れて蜂起が起こる可能性は一気に少なくなる。手持ちの兵力はベネトから連れてきた歩兵千名とルートヴィヒとシャルルに恨みを持つネウストリア大公の残党二百名である。騎兵は数える程しかいない。


「やはり、打って出るのですか?」


 いつもの気楽さをどこかに置いてきたのか、不安そうな顔でカステッロがルキウスに訊ねる。


「出たくはないけど、そうする以外に方法がない。シャルルに囲まれれば王都への物資の流れが停滞して、住民が飢える。そうなれば、僕らは間違いなく住民は僕らの敵になる」

「だからこそ、勝利によって住民を抑える、と」

「そうさ。まったく悪党のやるような方法だけど、僕らはもう逆臣だ。多少あざとい方法を使ってもそんなに非難されないだろうさ」


 肩をすくめてルキウスが苦笑いを浮かべる。カステッロにはガイウスの死後、ルキウスが悪い意味で開き直っているのでは、という不安がある。そのひとつが、住民に新王即位の祝い金として金をばら撒いたことが挙げられる。いくら金の出処が死んだキルデベルト子爵と国庫からであるにしても、露骨な人気取りである。


「勝つためですか?」

「そうだ。僕は結局、家族を誰ひとり救えなかった。もし、僕が王都ではなくアウグスタの王師に奇襲をかけていれば、兄上は助かったかもしれない。あるいはベネトの住民すべてを武力で脅して無理矢理にでも王師と戦わせれば、正面からでも王と張り合えたかもしれない」


 ルキウスは拳を握りしめて言う。


「若……」

「後悔しても遅いのは分かっている。だが、今度は後悔したくない。そのためなら手段は選ばない」


 今度は何を救うための戦いですか? という問をカステッロは飲み込んだ。勝利のために非情になりきろうとしているこの青年にとってその答えはまだ出ていないに違いない。いま、それを問えば青年が迷う。それが分かるだけにカステッロは辛かった。


「オズウェル卿の指示のもと馬防柵の設置は完了しています。シャルルはのってきますかな?」


 馬防柵とは、騎兵の突撃を避けるために、井の字に組んだ複数の柵に先端を尖らせた杭を斜めに取り付けた防柵の一種である。偵騎から騎兵接近の報を聞いて、ルキウスはカステッロとオズウェルにこれの設置を命じた。


「くるさ。篭城すると思っていた相手が城外に出てくる。それも歩兵ばかり。騎兵なら一撃で崩せると思うところだ」

「鴨が葱を背負ってくる、ようにですか?」

「そうだ。うちの王様は昔からいい鴨で有名だ。それに、自身を名将と称する彼にとって自分よりも多い兵を少数で破る。この誘惑に彼が耐えられるかな?」


 ルキウスが祭り上げたベルジカ王国のもう一人の国王フランツ。彼は先王の庶子である。母の生まれが低いため、王城の一室で飼い殺しになっていた彼は、真偽の定かではない珍品を蒐集しゅうしゅうする趣味があり、商人の間では「いい鴨」として有名であった。


「フランツ様も前線に出るのですか?」

「いや、フランツ様は城壁の上から観戦だ。中央は僕。右翼と左翼をカステッロとオズウェルに任せる」


 ルキウスの布陣は、ルキウスが率いる中央が四百名、馬防柵を盾にして左翼と右翼をオズウェルとカステッロが固める。兵力はそれぞれ三百名。左右の兵力は中央より少ない。


 城外に布陣したルキウスの軍勢を見たシャルルは勝利を確信した。敵は左右から包囲されることを恐れて馬防柵を築いているが、左右だけで中央にはない。これなら中央を堂々と切り裂いて、次に左右を片付けることができる。


 ――来て見て勝った、とはこのことだ。脇を固めても頭を固めていないのでは本末転倒だ。


 シャルルはこの戦いのあと自分に与えられる賛辞を思い、笑みをこぼした。


「前面横隊!」


 ランスと言われる馬上槍を構えた騎兵七百騎が、シャルルの号令のもと三列の横隊を組む。古典的な密集突撃隊形であるが、それだけにその威力はお墨付きである。馬上槍は、一般的な歩兵が使う手槍や斧と比べるとはるかに長い。そのため、騎兵は歩兵よりも離れた位置から攻撃ができる。それが馬に乗って突撃してくるのである。その迫力は対峙する者にとって恐怖以外の何者でもない。


「駆け足!」


 整列した横列がゆっくりと速度を上げる。隣り合った騎兵の鐙がふれあい。騒々しいい金属音を鳴らす。敵陣では、歩兵が槍衾やりぶすまを作って突撃に備えている。特に中央は、歩兵が四列に方陣を組んで、槍を水平に構えている。左右は馬防柵があるためか、兵の質が悪いのか、槍衾の密度が低い。


 ――浮き足立っているやがる。

 ――これは勝てる。

 ――手ごわいのは中央だけだ。


「突撃! 逆臣どもを食い破れ!」


 シャルルが突撃を叫ぶと、馬のいななきと騎兵の叫びが戦場に響き渡る。誰も自分たちの勝利を疑わなかった。一度の突撃で敵の大半を薙ぎ倒せる、そんな彼らの思惑は、ルキウスが指揮する中央にぶつかる直前に破られた。


「な、ながい!?」


 中央の歩兵が持つ槍が、馬上槍よりも長かったのである。本来、歩兵が持つ手槍は人の背丈ほどしかない。だが、彼らが持つ槍は、二から三倍の長さがあった。これでは馬上槍といえども先手を取ることはできない。


 先を取るはずが先を取られた形になった騎兵は、自らの速度によって次々に槍にぶつかっていく格好となった。なかには槍の長さに気づき必死に止まろうとする者もいたが遅かった。一度、乗ってしまった勢いは簡単に収めることはできず、負傷者が多数出た。長槍によって串刺しにされた者。落馬したところを後続の騎兵に踏み潰された者。その誰もがまさか、という言葉を発せずにはいられなかった。


「小細工を!」


 シャルルがルキウスの指揮する中央を睨みつける。ルキウスが指揮する中央は、シャルルの騎兵に被害を与えたが、無傷とは言えなかった。槍に貫かれ倒れる馬の下敷きになった者、馬失ってなお槍を振るう者、強引に槍衾を突破した騎兵に撃たれた者。数は少ないとしても、確実に兵を失っていた。


「堪えろ! ここで僕たちが崩れれば総崩れになる!」


 ルキウスは方陣の中央で兵に激を飛ばす。この突撃によって四列のうち一列目が崩れていた。敵よりも攻撃範囲が長いからといって、突撃してくる馬の勢いそのものをなくすことはできないのである。だが、敵の一列目を崩すことができた結果、騎兵は、その勢いを失った。


「再集結! もう一度だ!」


 シャルルは騎兵を再度集結させるともう再び、密集隊形を取る。先ほどの突撃で百騎ほどが失われていたが、まだ六百騎が残っている。騎兵は前面には馬にも鎧を着せているが、側面は無防備である。その間隙に向けて左右から矢が放たれる。左右の槍衾の密度が低かったのはこのためである。


 カステッロとオズウェルが率いる右翼と左翼にはほとんど槍兵はいない。馬防柵の五十名くらいが槍兵としているだけである。彼らが体を張って、敵の目から隠しているその後ろで、二百五十名の弓兵が矢をつがえて待っていた。


「いまだ、射て!」

「我らの手で勝利を決めるぞ!」


 カステッロとオズウェルがほぼ同時に号令をくだす。突然、左右から放たれた矢の雨によって再結集した騎兵に次々と穴があいた。左右の弓兵が一斉に攻撃を開始したのである。しかし、シャルルは味方の損害など気にせずに再度の突撃を命じる。


「突撃せよ!」


 もはや、執念というべき騎兵の攻撃によって中央の一部が崩れる。矢をすり抜けた者が、槍衾に殺到する。方陣を強引に駆け抜けた少数の騎兵のなかにシャルルはいた。彼はルキウスを視界に捉えると、歓喜の声を上げた。


「そこにいたか! 我が王に逆らう逆臣め。我が槍を受けろ!」


 シャルルの突き出した槍は寸前のところでルキウスには届かなかった。ルキウスが剣で槍の軌道を反らしたからである。だが、ルキウスの剣と鎧の一部は槍に持って行かれている。たった一合、打ち合っただけだというのにルキウスの息は乱れ、汗が全身から吹き出していた。


「とんだ、ボンクラが我が敵のようだな。そなたの兄であるガイウスはもう少し強かったが、弟はそこまでではないようだな」


 シャルルは、自身の有利をはっきりと確信した。

 この青年が相手なら十戦してその全てで勝てる。そう思えるだけの力量差があったのだ。剣を失ったルキウスは盾だけを構え、シャルルの次の突撃に備える。馬首を再びルキウスに向けるとシャルルが、人馬一体となって槍を突き出す。


 ――これで勝った……


 しかし、その突きはルキウスに届くことはなかった。

 彼が勝利を見たと感じた瞬間、シャルルの身体には三本の長槍が突き刺さっていた。そのうちの一本は馬の首元を貫通して彼の首を貫いていた。突き刺したのは、名も知れない兵士達だった。泥に塗れ鎧のあちこちから出血している。皆が肩で息をしている。騎士の最後の敵というには、あまりにもみすぼらしい相手であった。


 シャルルと騎馬は崩れるように地に伏した。


「アミン伯爵、あなたは勇者でした。でも、名将にはなれない。」


 ルキウスは地に横たわるシャルルを見下ろして言った。シャルルは恨めしそうに口を震わせたが、声になることはなかった。彼が動かなくなったことを見た兵から勝どきがあがる。それは波紋のように、戦場に拡がると騎兵隊の動きが鈍った。


「アミン伯が討たれた!」

「撤退だ!」


 かろうじて生き残っていた士官の一人が、撤退の鐘を鳴らす。この戦いで近衛の騎兵は六百騎が討たれた。生き残った百騎に関しても無傷の者はおらず、再戦は不可能だった。彼らにできることはといえば、アウグスタから王都に向かっている国王にアミン伯爵シャルルの死亡を伝えることだけだった。


「馬鹿な!? あのシャルルが逆臣の小僧に討たれたというのか?」


 シャルルの死を知ったルートヴィヒは、涙を流して、あの威勢のいい忠臣の死を悼んだ。一方で、シャルルの死を知った諸侯は、ルートヴィヒのように哀悼を示すことはなかった。彼らにはシャルル対する恨みがあった。アウグスタ攻略戦の際にシャルルから攻撃怠慢と見なされ射掛けられた者は多かったのである。また、そんな彼らの怒りを代弁したアクィタニカ子爵が無残にガイウスとともに殺されたことも彼らの怒りを助長していた。彼らの怒りは次第とシャルルを討ったルキウスへの興味に変わる。


「オルセオロの三男は、とんだ戦巧者ではないのか?」

「ネンシス卿に続いてアミン卿まで倒すとは、並の者ではない」

「それより、王都では新しい王がたったというではないか。そちらについた方がいいのではないか?」


 この諸侯たちの囁きは、すぐにルートヴィヒに知れるところとなったが、誰も処断されることはなかった。ルートヴィヒの命令を実行に移せるような有力者がいなくなっていたからである。かつて、彼のもとにはオルセオロ侯爵やネウストリア大公を筆頭にアミン伯爵、キルデベルト子爵、アクィタニカ子爵などの有力者が諸侯をまとめる役割を担っていた。


 しかし、彼らはすでにいない。ルートヴィヒが殺した者もいれば、彼のために死んだ者もいる。だがどちらにしても、始まりは彼が行ったことに端を発している。ルートヴィヒは自分の両腕を自ら切り落としたようなものであった。


「すべてはマルクスが悪い」


 ルートヴィヒは苦境の原因を死んだオルセオロ侯爵マルクスに求めた。彼の理屈では、マルクスがルートヴィヒに従順であれば、処断することもなく。ガイウスやルキウスが反乱を企てることもなかった。まして、反乱でシャルルやキルデベルト、ネンシスという股肱の臣を失うこともなかったのである。


 アウグスタの戦闘で、王師は歩兵四千名まで数を減らしている。また、諸侯の兵は、アクィタニカ子爵の死によって彼の兵が抜けたため歩兵二千五百名、騎兵五百騎になっている。それでもルキウスの七倍近い兵力差であるが、出陣の際と比べるとほぼ半数になった、といえる。これを敗北と思わない者はいない。ましてや、王都も奪われているのである。


 弱い王は侮蔑される。そうされまいと強い王になろうとしていた彼にとってこの結果は不本意であり、彼をここまでの窮地に追い込んだオルセオロ侯爵を憎まずにはいられなかった。


「死んでなお余に逆らうか……」


 ルートヴィヒは拳を強く握り締めると、湿っていた瞳を拭いた。


「歩を早めろ! 王都に篭るマルクスの息子の首を討ち取ってやる!」


 王からの命令を受けた近衛の士官たちは、前軍に歩みをはやめるように全軍に指示を出す。近衛は行軍の速度をあげたが、諸侯はそれを拒絶した。


 彼らの回答は、

「先の戦闘で負傷した兵も多く、行軍をはやめることはできない」

 と、言うものであった。


 それは明確な命令拒否であった。それゆえに、この戦闘における諸侯の素直な気持ちがここにあったと言える。オルセオロ侯爵家と王の争いに巻き込まれたくない。ましてや、王都にはもう一人の王が存立している。下手に手を出せば、火傷しかねない。ならば諦観に徹する方が良いのである。


 王と諸侯の不和もあり、王師が王都にたどり着いたのは、シャルルの死から三日後のことだった。


「ルートヴィヒが城下まできたというのに、トレヴェローヌの住民は静かなものだね。フランツ様も王と認められているってことかな?」

「アミン伯爵に勝ったこととフランツ王が即位された時にばら撒いたお金が効いているんでしょう」


 ルフスリュスは落ち着きを払ってルキウスに言った。すでに王都の外では王師が、陣を築き始めている。とはいえ、王師の中で動きが活発なのは近衛の部隊だけで諸侯の部隊からは緩慢さが見て取れる。それでも敵の数は七千に近い。それに対してこちらは千しかいない。


「今度は、正面から戦えば負ける。どうしたものか?」


 ルキウスは両手をあげて苦笑する。


「あら、そのために人質をとったのでしょ? 王都を攻めればウェルセックの王女を殺す。王女が殺されれば、ウェルセック王国が面子を守るためにも大挙して攻めてくるぞ、と」


 高貴な人質は白い手で手刀をつくると、自らの首に当てた。彼女の言うとおり、ルフスリュスが死ぬようなことがあれば、本心はどうであれウェルセック王アルフレッドは、妹を殺した者を差し出せとベルジカに迫るに違いない。もし、それが王都を奪還するためにルートヴィヒが強引な戦闘を開始したためだとなれば、両国の戦争に突入することになる。それを避けたければ、ルートヴィヒは攻撃をやめるしかない。


「ルフス……」


 そうだ。そのためだ、と言おうとしてルキウスは言葉を止めた。戦うと決めたときからそれはずっと彼の心にあったものである。それと同時に、使ってはいけないものだと考え続けてきたものでもある。だが、ここに来て彼の心は決まっていた。


「すまない。ここまで強引に連れてきたけど君を人質にするのはやめる。いまならまだ王都から出ることもできる。オズウェル卿と一緒に脱出してもらえないか」

「そう。随分と勝手なことを言うのね」


 伏し目がちに言ったルキウスに対して、ルフスリュスは苛立った声で言った。


「自分でも勝手なことを言っていると思う。だけど、僕には君を殺すことはできないそうにない」

「分かりました、ルキウス。では、私も勝手にさせてもらいます。王都からは出ていきます。でも、それはこの戦いの決着がついてからです。あなたが勝っても負けてもそれを見せていただきます」


 ルフスリュスは言い終えると足早に去っていった。


「若も詰めが甘いですな」


 ルフスリュスが出ていたあとひょっこりとルキウスの執務室に現れたのはカステッロだった。


「立ち聞きとは趣味が悪いな」

「あれだけ大きな声なら聞きたくなくても聞こえます」

「大きな声を出したのはルフスで僕じゃない。それに格好をつけていざとなれば僕は君を殺す、と言っても実際に殺せるわけがない。なら、正直に言うべきだろ?」


 カステッロは、久々にルキウスの狼狽える姿を見たような気がした。このところ、ボヤきながらも策を練っていたルキウスにはない年相応の顔にカステッロは思わず、顔をほころばせた。それを見たルキウスが彼を睨みつける。


「そうですな。正直に言うべきでしたな。僕は君が好きだから殺せない。今のうちにこの王都から脱出して欲しい、と言えばルフスリュス様もあんなに怒らなかったと思いますな」

「いや、そうじゃない。そうじゃない……。ああ、カステッロには叶わないな」


 ルキウスは頭を抱えると小さくため息をついた。


「若、簡単な解決策があります」

「期待しないで聞くけど、なんだい?」

「ルートヴィヒ王に勝つことです。そうすれば、すべての問題が片付きます。商人の心得。一度決めたなら揺らがぬこと。王に勝つと決めたなら、負けるなんて思い捨てなされ。負けるかもしれない、と思うからルフスリュス様を人質としなければいけない、とか殺さなければいけないと思うのです。勝つというならそれだけを考えることです」


 そう言う、とカステッロはルキウスの返答も聞かずに執務室をあとにした。ルキウスはその言葉を反芻する。


「勝つか……」





 翌日、城壁の上にルキウスの姿はあった。

 眼下には、王旗が乱立している。数を減らしているとは言え、王師の数は七千である。城門前に整列する近衛四千名の左翼に諸侯の部隊と思われる歩兵二千五百と騎兵五百が陣取っている。伝令のためか騎兵が歩兵の間を駆けている。


 敵の数に対して、ルキウスの兵は千である。いまから七倍の敵と対峙しなければ、と思うだけで足がすくむ。だが、勝たなければならない。その願いだけを胸に秘め、ルキウスは城壁に立った。王に反旗を掲げ、王都を占領し、偽王までたてた。まるで、物語に出てくる国を奪おうとする逆臣そのものである。


 ――これが反旗はんきひるがえした者が観る風景か。


 と、自分が本当に逆臣なのだと心据え直した。


「ルートヴィヒ王よ、私の些細ささいな願いを叶えてもらえますか?」


 ルキウスは王師の中心にいる人物に問いかけた。それは、ルキウスの父と兄を殺した王ルートヴィヒである。彼はルキウスの声に応じた。


「王都を占領し、人民を盾にして行う要求が些細なこととは恐れ入る。逆臣とは、どこまでも厚顔無恥こうがんむちになれるものだな」

「王が行ったことと比べれば、私の面の厚さなど薄いものです」


 冷ややかなルキウスに対してルートヴィヒは眼を怒らせて感情をあらわにした。


「余が恥知らずだと申すか! 余の忠実な家臣を殺し、王都を奪い。なにをいう」


「王は、その忠臣の讒言ざんげんを間に受けて罪もない父と兄を誅殺し、私たちの領地を攻められました。それに対して、父兄の仇として王の忠臣を討ち、領地の代わりに王都を奪ったに過ぎません」


 ルキウスに悪びれるふうはない。正当な行いをした、と言わんばかりの態度にルートヴィヒはさらに怒りを爆発させる。


「余と貴様は同じだというか。余と貴様では格が違うのだ。身分をわきまえろ!」

「そうですね。私と王では身分が違う。それは純然たる事実です。ただの侯爵家の三男が何をいっても王には届かないでしょう。ですので、私は反旗を掲げたのです。逆臣ならば大声で王の非違を叫ぶことが許されましょう」

「図々しいにも程がある。貴様の罪は両の手で足りぬが、余にいかなる罪があるという。この国の主宰者は余であり、余が法なのだ。法に非があるはず無かろう」


 国は王の私物である。臣下は国という器の一部を王から貸し与えられているのである。それを与えるのも奪うのも王の特権であるとルートヴィヒは考えている。そうでなければ、何のための王なのか。


「法には良法もあれば悪法もあります。私は悪法もまた法なり、と毒杯を許容するような賢者ではないのです。だから、悪法は除くと決めた」

「余が悪法と申すか!」

「ええ、悪法です。だから、フランツ王を新たな法とした」


 ルキウスの後ろから現れたフランツが城壁に立つ。ルートヴィヒはフランツを見ると叫んだ。


「庶子の分際で王になるというか? 貴様のような侍女の腹から産まれた者なぞ諸侯が王と認めるはずなかろう。逆臣に乗せられて王位に足をかけるとは、なんという浅ましさか!」

「確かに私の産まれは低い。だが、オルセオロ侯爵ルキウスは私を王と認めてくれた。そして、私に役目があるとすれば、悪法よりもマシな法であることだ。決して良法と呼ばれることではない」


 左翼の諸侯からざわめきが起こる。近衛にも反応があったが諸侯ほどではなかった。ルートヴィヒに不満を持っている諸侯にとってフランツが王になることは悪いことではない。むしろ、フランツに組みしたほうが戦後のことを思えば甘みがあると思索をめぐらせる者もいるに違いない。


「お前を認めているのは、そこにいるオルセオロの三男だけではないか? それで王を名乗るとは裸の王もいいところだ」


 ルートヴィヒはフランツを嘲笑う。確かに現状では、フランツを王と認める諸侯は皆無である。支持基盤のなさはルキウスとフランツにとってはどうしようもない弱点であった。


「フランツ王を認めるのは、オルセオロ侯爵だけではない。我が兄ウェルセック王アルフレッドになりかわり、ルフスリュス・ウェルセックが宣言します。ウェルセック王国はベルジカの王をフランツ王として承認する。また、それに伴いルートヴィヒを正統な王と認めない」


 フランツを嘲笑していたルートヴィヒの顔が曇る。最後に現れたルフスリュスは青の長衣を身にまとい、戦場に立つというような出で立ちではない。だが、尖塔に翻るウェルセックの紋章とともに宣言するルフスリュスの姿は多くの者に影響を与えた。


「……内政干渉ではないか。我が国の問題にウェルセックが口を挟むとは、王女といえども度が過ぎる」


 ルートヴィヒがルフスリュスを指差して言う。ルフスリュスは微笑を浮かべるとルートヴィヒに問うた。


「内政干渉ということは、私がこの国の者ではないからですね?」

「そうだ。我が国になんのゆかりのない貴女には口を挟む権利はない」

「分かりました。では……」


 ルフスリュスは、横に立っていたルキウスの手を取ると、城壁の縁まで進みでた。そして、ルキウスに小さく「勝手にさせていただきます」と告げると、大きな声で眼下に叫んだ。


「オルセオロ侯爵ルキウスを我が夫とする!」


 この場にいるすべての者の動きが止まった。戦場で婚姻を宣言した者など誰も聞いたことすらなかった。だが、このウェルセックの王女は宣言したのである。夫となったルキウスですら言葉を失った。この静寂の中、最初に声を上げたのはやはりルフスリュスであった。


「これで私はウェルセック王国王女であり、オルセオロ侯爵夫人となる。これでも、私がこの国の人間でないというか?」

「……そ、そんなことが。いやしかし、王族の婚姻となればアルフレッド王からの許可がいるのではないか?」

「許可ですか? オズウェル卿、読み上げなさい」


 鮮やかな笑みを浮かべたルフスリュスがオズウェルに命令する。複雑な表情をしたオズウェルは一枚の書状を手に読み上げる。


「ウェルセック王国マーチン男爵オズウェルが王になり代わり代読いたします。我が妹ルフスリュスとオルセオロ侯爵ルキウスとの婚姻を認める」


 おそらく、この書状は偽物だろうが、確認を取るためにはウェルセックまで行かねばならない。つまり、この場で真偽を確かめられない書状なのである。もし真偽を明らかにする、ということになれば使者をウェルセックに派遣し、その者が帰ってくるのを待たなければならない。そうなれば、この戦闘はそれまでの期間が休戦とならざるを得ない。


 時間的な余裕があれば、あるほど有利になるルキウス達に対してルートヴィヒは時間が経つほど、諸侯の離反を警戒しなければならない。


「何か問題がおありですか?」 

「……このようなこと」


 認めるわけにはいかない。ルートヴィヒはそう言いたかった。しかし、それを口にすればルキウス達に時間を与えてしまう。だが、認めてしまえば自分がウェルセック王国から正統と認められない僭王せんおうとなる。


 こんな時にシャルルやキルデベルト、ネンシスが居れば何らかの助言を行っただろうが、いまの彼には誰もいない。フランツは実質的にルキウスらを除けば裸の王様であるが、ルートヴィヒも裸の王様であったと言える。


「よろしいだろうか? 話を聞いていれば、いまベルジカの王都を押さえているフランツ王はウェルセック王から公認されている王だという。一方で、ルートヴィヒ王は認められていないという。ならば、我ら諸侯としては外交の問題を含めてどちらに与することもできない。そちらで決めてもらえないだろうか?」


 諸侯の一人が、気まずそうな声をあげる。この声に後押しされてか、ほかの諸侯も中立を宣言する。


「王家の争いに介入するのは控えたい」

「正統さが定かにならぬ限り、我が家はどちらに味方することもできませぬ」

「左様。王位の争いに諸侯が口を挟むことは宜しくない」


 これで完全に王師から諸侯が離脱した。ルートヴィヒは諸侯に、翻意するように求めたが誰ひとり応じる者はいなかった。近衛もこの事態にいささか動揺したが、離反はしなかった。反対に孤立する王を助ける構えを見せた。近衛の一人がルートヴィヒの袖を引いた。


「王よ。ご安心ください。諸侯が抜けても我らの数は四千。逆臣は千と聞いております。会戦になれば数で勝る我らに分があります。どうか、我らをご信用なさり敵との堂々の会戦をお望みください」


 今更ながらに数の有利を思い出した。ルートヴィヒは士官の言を入れた。


「よかろう。ならばどちらが正しいか会戦にて勝敗をつけようではないか? 逆臣と偽王をともに討ち取ってくれよう」


 再び自信を持ったルートヴィヒの提案をルキウスは承諾した。千と七千で始めようとしていた戦いである。それが千と四千になったのである。受けないはずがなかった。


「いいでしょう。会戦にて勝敗をつけましょう」

「ルキウス。勝てるのか?」


 フランツが怯えた顔で訊ねる。この部屋住みの王族は一度として戦場に出た経験はない。ルートヴィヒに数で劣る自軍に自信が持てないフランツの気持ちを汲んだルキウスは彼に言った。


「フランツ様。以前、勝利を司る聖獣の骨をお売りしたことがありましたね。あれを掲げれば勝利間違いなし。兵の士気も大いに上がりましょう」

「お、おう。そうだな。あれを掲げよう!」


 なにか信じる物があれば、肝が据わる。大将が浮き足立っていては勝てるものも勝てないのである。こうしてルキウスの軍は、三つの戦旗の他に勝利を司る聖獣のものとされる骨も掲げることになった。


 戦場に向かうルキウスにルフスリュスは声をかけた。


「ルキウス。絶対に勝ってください。私を未亡人にするなんてことがあれば許しません」

「自分でも知らぬ間に結婚することになるとは思わなかった。本当にルフスには負けてばかりだ。だからこそ、この戦いくらいは勝つよ」


 ルキウスが微笑むと、ルフスリュスも微笑んだ。

 諸侯に見守られるなか、奇妙な会戦が始まった。


 ルキウスの軍は城壁を背にした状態で密集隊形をとった。それに対してルートヴィヒが率いる近衛はルキウスらを包囲するように薄く広い横陣をとった。


「絞首刑の縄と同じだ。締め付けてやれ!」


 ルートヴィヒの号令を受けて近衛が前進を始める。両軍のあいだが縮まるがルキウスの軍は動かない。長槍を水平に構えたままピクリとも動かないのである。


「なんだ、威勢だけで怯えきっておるのか? それとも……」


 ネンシス、シャルルと彼の臣下をことごとく打ち破ってきたとは思えないほどの静けさにルートヴィヒも不審を感じるが、兵を止めるわけにはいかない。戦場の勢いは一度失えば、再び手にすることは難しい。

 さらに両軍の距離が詰まる。しかし、ルキウスらは不気味なほどに動かない。


「なんだ。どうなっているのだ……」

「王よ。あれはおそらく横陣の薄い場所を探っているのでしょう。敵からすれば横陣に包囲されないように一点突破を図るのが上策のはず。ここは敵に薄い位置を探られる前に突撃するべきです」


 近衛兵の一人がルートヴィヒに言う。


「なるほど、そうに違いない。よし、突撃だ!」


 突撃の鐘が打ち鳴らされ全軍が駆け出す。本来ならば、敵が駆け出した時点で、自軍も動き出さなければならないのだが、ルキウスはまだ突撃の号令を出さなかった。


「引きつけろ」


 近衛兵が直前まで近づき、お互いの顔が判別できるまで近づいた瞬間、ルキウスは突撃の命令を出した。


「いまだ! 突撃!」


 長槍を持った千名が駆け出す。近衛の先頭が音を立てて崩れた。中央部を破ったルキウスの軍は、密集隊形を解いて左右に展開する。卵から鳥が生まれたようなものであった。寸断された横陣が中央部から徐々に左右に引き裂かれ穴が広がっていく。


「そうか。奴らは動かないことで、我らの勢いを奪ったのか!?」


 ルートヴィヒは崩れゆく近衛を眺めながら叫んだ。


 ガレア船と同じで人間は走り続けたり、櫂を漕ぎ続ければ疲れてしまう。本来、会戦はある一定の距離から両軍が突撃しあうことで始まる。しかし、一方だけが突撃を開始して駆け出すと、自然と走る距離は伸びることになる。人が全力疾走を続けられる距離というのは長くない。


 ルキウスはあえて動かないことで、近衛に通常以上の距離を走らせ、疲れ勢いが落ちたところで突撃を命じたのである。城壁の上から戦場を眺めるルフスリュスからは両軍の動きが手に取るように見えた。勢いよく駆け出していた近衛がある距離を越えたあたりから一気に失速したのである。そこにルキウスたちが切り込んだ。あとは薄皮を中央から引き裂くようなものであった。


「馬鹿な。そんなことが……」


 ルートヴィヒは呆然と近衛兵が一人、また一人と消えていく姿を見た。


「王よ。お逃げください。お命さえあれば再戦することも可能です」


 近衛兵は強引にルートヴィヒの乗った騎馬を反転させると、槍の石突で馬の尻を叩いた。驚いた騎馬が駆け出し、ルートヴィヒを乗せたまま戦場から離れてゆく。前方には諸侯の陣が見える。


ルートヴィヒは這う這うの体で諸侯の陣に近づくと、

「貴様ら、何を観戦している。余を助けろ。あの逆臣に今度こそ裁きを下すのだ」

 と、叫んだ。


「王よ。いえ、ルートヴィヒ様。貴方は敗北されたのです。潔いご最後を選ばれ……」


 年老いた諸侯がルートヴィヒに声をかける。同情と嫌悪を含んだその声はルートヴィヒの振り下ろした剣によって中断された。年老いた諸侯は右肩から胸にかけて切り裂かれ、枯れ木を倒すような軽い音を立てて倒れた。


「馬鹿を言え! この余があのような逆臣、偽王に敗れるわけあるまい。貴様らが素直に命令に服せばこのようなことには!」


 血まみれの剣を手にしたルートヴィヒは、手当たり次第に剣を振り回す。諸侯たちは流石に昨日の主君を手にかけるわけにもいかず、凶刃から逃げ回るしかなかった。


「ルートヴィヒ! 父と兄の仇討たせていただく」


 近衛兵を片付けたルキウス達が近づくと、ルートヴィヒはルキウスに向かって叫んだ


「なんだかんだ言っても貴様の本音はそうだ。マルクスとガイウスの仇が討ちたいだけだ。余から王位を奪い、偽王をたてて王殺しを正当化させようとしているに過ぎない」

「そうだ。僕はルートヴィヒ、あなたを討ちたいだけだ」


 ルキウスは静かに彼の罪を認めた。


「ならば、なぜ国を巻き込んだ! 貴様のしたことはいずれこの国に禍をもたらす。この内乱で近衛は壊滅し、諸侯は疲弊した。すべて、貴様が悪いのだ。余に討たれないから。この逆臣め!」


「そうだ。僕は逆臣ルキウスだ」


 ルキウスは王殺しを行った。


 古い王を殺し、新しい王を祭り上げ、また臣下になる。簒奪する勇気はなく。逆らってなお臣下たろうとする。ルキウスはそれに伴う罪の全て認めた。これ以後、逆臣ルキウスと呼ばれるようになる。


ようやく最終話を投稿することができました。

11/24(月)にエピローグを投稿して、本当の終わりになります。


投稿が遅くなり、申し訳ありませんでした。

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